水の循環系モデリングと利用システム

 

第3回領域シンポジウム
ポスターセッション

  

船水尚行研究チーム


P051 研究プロジェクトの全体像
P052 大幅にコストを削減したバイオトイレの開発
P053 サニテーションシステムの導入効果の総合的評価
P054 秩父実証実験
P055 カンポン地区(バンドン,インドネシア)へのバイオトイレ導入効果予測と
トイレの運転管理方策の提案


 
P051 研究プロジェクトの全体像
船水尚行(北海道大学)

 本研究プロジェクトの背景となる,「なぜ,今,新しいサニテーションシステムが必要か」を,Millennium Development Golasの関係から概説し,新システムの構築にあたり,二つのキーワード「集めない」,「混ぜない」の重要性を示した.そして,本研究プロジェクトで開発しようとしている「排水分離・分散型処理システム」の概要とその利点を整理した.
 加えて,本研究プロジェクトを構成する4つの要素研究と二つの実証研究グループの概要を記した.

 
P052 大幅にコストを削減したバイオトイレの開発
北村彦蔵(NPO小貝川プロジェクト21),高橋正宏(北海道大学),
入江光輝,牛島健,石川忠晴(東京工業大学)

 現在開発されているバイオトイレをアジア諸国へ導入する際に問題となるのは,その価格と運転費用が高額である点である.トイレの機能の整理と低価格化への対応方策の検討を行い,ここでは次の提案を行った:
1)尿とふん便を分離する
2)分離回収した尿について,加熱を行わないで蒸発・濃縮する装置を考案し,その特性について実証,運転コストの試算結果を得た
3)分離したふん便は,従前小さな容積の反応槽で処理することが可能となり,低価格化につながる.
4)トイレ反応装置への落下防止装置を提案し,試作した.
5)トイレ使用者の理解が不可欠であるとの認識から,その方策について提案した.

 
P053 サニテーションシステムの導入効果の総合的評価
荒巻俊也,長谷川・栗栖 聖,花木啓祐,M. M. Galal(東京大学),
T. Kangwankraiphaisan, K. A. Mollah, P. T. M. Thao (Asian Institute Technology)

 サニテーションシステムの導入は水環境の改善というプラスの面とエネルギーや資源の消費といったマイナスの面を持つ.ここでは,これらの要因をDALYs (Disability Adjusted Life Years)という指標により総合的に評価する方法を提案する.具体的には,水質に関してはWater Quality Assessment→Risk Assessment→Integrated Assessment of health risk by DALYsの流れにより評価,エネルギー・資源消費については Life Cycle Assessment→Integrated Assessment of health risk by DALYsという流れでの評価を行うものである.
 DhakaのLalbagh地区を対象とした概算結果によれば,
1)疾病等に対する健康リスク低下によるDALYsの低下はフラッシュトイレの導入で1.219,Septic Tankで1.284,Cesspoolsで1.043と見積もられた.
2)一方,資源・エネルギー利用に伴うDALYs増加はフラッシュトイレの導入で0.028,Septic Tankで0.001,Cesspoolsで0.002という結果であった.

 
P054 秩父実証実験
伊藤竜生,船水尚行(北海道大学),大瀧雅寛(お茶の水大学),
蝦江美孝,田中伸幸(国立環境研究所),横田光正(三菱商事)

 現在,札幌,秩父,名護において実証実験を実施している.これらの実証実験では
・分離・分散型処理システム導入に関する仕組み作り
・システムの総合的評価(エネルギー,物質,病原微生物,おがくず性状)
・使用者の評価
 を目的としている.本ポスターは,秩父に設置している実証実験設備の概要と2005年5月以降の運転結果の報告である.

運転の概要:
1)問題なく約3500回のトイレ使用(トイレットペーパーは120個)が行われた.
2)トイレからの平均水分蒸発量は1日4kg〜10kgであった.
3)重金属の蓄積が観察されたが,現在の日本の肥料基準値の1/10以下であった.
4)全大腸菌群数は104のオーダーであった.
5)エネルギー消費は3〜8kWh/日であり,これらのエネルギーの約60%は水分の蒸発に使用されていた.また,系内へのエネルギーの蓄積はなく,すべて排気として外に放出されていた.
運転結果より,次の課題が明らかとなった:
1)エネルギー消費が大きく,運転条件の変更によりこのエネルギー消費を変えることは難しいことから,トイレへ供給する水分量を減らすことが必要である
2)そこで,手を洗った排水をコンポスト反応槽ではなく,土壌処理する変更を実施した.
3)尿分離型に変更することも考えられる.
4)大腸菌群数が104のオーダーであることから,リスクの評価が必要である.

 
P055 カンポン地区(バンドン,インドネシア)へのバイオトイレ導入効果予測と
トイレの運転管理方策の提案
Neni SINTAWARDANI, Jovita TRIASTUTI, Muhammad AFFENDI (LIPI),
入江光輝,牛島健,石川忠晴(東京工業大学)

 インドネシアの都市域の河川はし尿やごみの直接廃棄により非常に汚染している.バイオトイレを導入して,し尿と厨芥の処理を実施した場合の汚濁負荷削減効果とバイオトイレの維持管理方策について,Kampong地区(バンドン,インドネシア)を対象に検討した.その結果,
1)地域内河川の流量,水質調査,各家庭からの排水量,排水水質調査を行い,地域内での河川流量増加が家庭排水の流入によるものであることが確認された.また,排水量は一人一日89リットル+礼拝用水であることが判明した.
2)河川の2点の測定より,地域から発生する汚濁負荷の推参を行った.アンモニア態窒素負荷5.9g/day/capita,リン酸態リン負荷2.18g/day/capita,COD負荷14.86g/day/capitaであった.
3)バイオトイレ導入による汚濁負荷削減効果はアンモニア態窒素で30%,リンで90%,CODで70%に達することが明らかとなった.
 また,持続可能なシステムにするためには,コンポストの回収を含めたメンテナンスが重要であることから,維持管理方策について,ごみの収集の現状調査の結果をもとに,
4)現在,各家庭ではゴミ収集に2,000ルピア(日本円で約25円)負担している.
5)この地区(1480名,412家族)では,共同トイレとして,約40台のトイレを導入すると,これらのトイレの維持管理に1名の作業者(各家庭の負担2,000ルピア)で実施可能であること,が明らかとなった.




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