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研究領域

戦略目標

研究領域名

量子情報処理システムの実現を目指した新技術の創出

研究総括

山本 喜久 (情報・システム研究機構 量子コンピューティング研究部門 教授/スタンフォード大学 応用物理・電気工学科 教授)

概要

 本研究領域は、ミクロの世界で観測される量子力学的現象を制御し、記憶、演算などの情報処理を行うシステムへ展開していくための基盤となる新しい技術の創出を目指す研究を対象とするものです。
 具体的には、光・電子・原子・原子核など様々な系を対象として、量子効果に基づく基本的なデバイスや多量子ビット化の技術、量子情報の伝送技術や中継技術、さらにそれらの基盤となる要素研究、例えば量子もつれ現象の制御・観測に関する研究等に関して、シミュレーションを含めた実証的な研究を対象とします。

平成17年度採択分 中間評価  終了報告書  年報

研究課題
通信波長帯量子もつれ光子とその応用システム
研究代表者(所属)
井上 恭 (大阪大学大学院 工学研究科 教授)
概要
量子力学特有の光の状態である量子もつれ光子対は、光の量子的性質を利用する量子情報通信システム(例えば、量子暗号の長距離化を可能とする量子リレー・量子中継、量子コンピュータ間をつなぐ量子ネットワークなど)を構築するための基本要素とされています。本研究は、ファイバ伝送にとって重要である1.5μm波長帯における量子もつれ光子技術の確立を目的として、もつれ生成技術及びそのシステム応用について研究します。
研究課題
極低温原子を用いる量子計測法の開拓
研究代表者(所属)
香取 秀俊 (東京大学大学院 工学系研究科 准教授)
概要
極低温原子を用いた新たな量子計測・量子情報処理のツール「光格子時計」、「シュタルク原子チップ」の手法を確立し、その工学的・理学的応用を目指します。特に、「光格子時計」の研究では、Sr、Yb、Hgの原子のうち、2種以上の原子で16桁を上回る相対精度でスペクトルの相互比較を行い、次世代の時間標準としてのフィジビリィーを評価するとともに、微細構造定数の恒常性/揺らぎの検証に挑戦します。
研究課題
分子スピン量子コンピュータ
研究代表者(所属)
北川 勝浩 (大阪大学大学院 基礎工学研究科 教授)
概要
分子の核スピンや電子スピンを用いた量子コンピュータの実現をめざして、分子の設計・合成、量子演算実験を行います。核スピンでは、資源の指数爆発を防いで真の量子計算を実現するために、低エントロピー化とデータ圧縮による初期化を行います。電子スピンでは、まず2-qubit 演算を実現し、多qubit化をめざします。また、量子情報圧縮と量子/古典インタフェースの研究も行います。
研究課題
量子多体協力現象の解明と制御
研究代表者(所属)
宮下 精二 (東京大学大学院 理学系研究科 教授)
概要
多自由度からなる系でのコヒーレントな量子現象の特徴を理論的に研究し、それらの状態の能動的制御法の確立をめざします。特に、量子相関が強い状態の外場への応答の特徴を研究し、任意の量子プロセスを発生する量子シミュレータや、量子揺動を用いた情報処理の実現への理論的基礎付けを行ない、実証手段としての量子スピン系、光格子に閉じ込めた極低温粒子系、二次元電子系などにおける量子状態の外場による制御などを探求します。

平成16年度採択分 中間評価  事後評価  終了報告書  年報

研究課題
単一光子から単一電子スピンへの量子メディア変換
研究代表者(所属)
小坂 英男 (東北大学 電気通信研究所 准教授)
概要
本研究では、ナノテク、スピントロニクス、フォトニクス、量子情報を融合した“ナノスピンフォトニクス量子情報”分野を開拓し、光子キュービットから電子スピンキュービットへの量子メディア変換を目指します。単一電子のスピン自由度を操るg因子エンジニアリングと電子正孔対のすみやかな解離が成功の鍵となります。本研究は、絶対的に安心な通信網を実現する量子中継器や量子計算機の光量子インターフェース実現に貢献します。
研究課題
冷却イオンを用いた量子情報処理基礎技術
研究代表者(所属)
占部 伸二 (大阪大学大学院 基礎工学研究科 教授)
概要
冷却されたイオンは量子計算などの量子情報処理システムを物理的に実現する方法として大きく期待されています。本研究開発では、冷却イオンの振動基底状態の発生を行うとともに、新たな量子ビット、イオンの輸送などの空間操作、協同冷却、イオンと光の相互作用などのイオントラップを用いた集積化量子計算システムを構築するための基盤技術の研究開発を行います。
研究課題
分子の電子・振動・回転状態を用いた量子演算基盤技術の開発
研究代表者(所属)
百瀬 孝昌 ((独)情報通信研究機構 客員研究員/ブリティッシュコロンビア大学 教授 )
概要
分子は電子・振動・回転という光で制御可能なほぼ無限の内部量子状態をもっています。私たちは、固体パラ水素などの量子凝縮相中に捕捉した分子の内部量子状態の量子もつれ状態の生成やデコヒーレンス等に関する基礎的な実験を行うとともに、分子の内部状態の特徴を生かした量子演算のアルゴリズムに関する理論研究を行うことで、分子の豊富な内部量子状態を用いた量子計算の基盤技術を世界に先駆けて開発することを目指します。

平成15年度採択分 中間評価  事後評価  終了報告書  年報

研究課題
光子を用いた量子演算処理新機能の開拓
研究代表者(所属)
井元 信之 (大阪大学大学院 基礎工学研究科 教授)
概要
本研究では、光子を用いた量子情報処理を基本ゲートから機能的タスクまで実現することを目標とし、実験および理論の両面から追求します。現在可能な「線形光学素子による量子演算」の可能性を最大限引き出すとともに、その評価に欠かせない量子トモグラフィー技術を確立します。具体的には制御NOTを含むことはもちろん、単一光子や多体エンタングルメントの良質な生成、それにエンタングルメント制御やリピーターを実現することを目指します。
研究課題
超伝導量子ビットシステムの研究開発
研究代表者(所属)
蔡 兆申 日本電気(株)ナノエレクトロニクス研究所 主席研究員/(独)理化学研究所 フロンティア研究システム 非常勤チームリーダー
概要
本研究は、ジョセフソン接合回路で構成される超伝導量子ビット回路、および同様な回路技術で構成され、より古典的な領域で動作する超伝導集積回路技術の融合技術によるシステム化の実現を目標とします。デコヒーレンス時間ができるだけ長く、同時により速く駆動できる量子ビットを目指すと共に、量子情報処理システムとしての動作を目的とした、量子ビット部とインターフェイス部の研究開発を行います。
研究課題
中性原子を使った量子演算システムの開発
研究代表者(所属)
清水 富士夫 (日本電信電話(株)物性科学基礎研究所 客員教授/電気通信大学 共同研究員)
概要
近年、レーザー冷却技術の発展に伴い原子ガイド中で中性原子の運動が制御可能になり、さらに原子ボーズ凝縮体の実現によって原子で巨視的な量子状態も作れるようになりました。その結果、個々の原子を量子計算の要素(qubit)とした系は量子情報処理システムの有力候補となっています。我々は、高度な固体表面微細加工技術と種々のレーザー冷却技術を利用することにより、工学的に意義のある量子情報処理システムのサンプルを実現することを目標に研究開発を進めます。
研究課題
原子アンサンブルを用いた量子情報処理の基盤技術開発
研究代表者(所属)
高橋 義朗 (京都大学大学院 理学研究科 教授)
概要
本研究では、ひとつひとつの量子状態を制御することで演算を行う従来の概念とは異なり、将来の実用化に向けた固体系への拡張を視野に入れ、“原子アンサンブル”を用いた量子情報処理の実現を目指します。そのための基礎理論、基礎技術を構築するにあたり、量子多体系の量子シミュレーションの研究や、ユニタリー相互作用による原子の量子もつれあい状態の生成、原子-光間のユニタリーな情報交換、といった基盤技術をうちたてます。
研究課題
量子ネットワークへ向けた量子エンタングルメント制御
研究代表者(所属)
古澤 明 (東京大学大学院 工学系研究科 教授)
概要
本研究では量子光学的手法を用いて量子エンタングルメント制御に関する研究を行います。具体的には、量子テレポーテーションの高フィデリティ化、マルチパータイトエンタングルメント生成および検証、量子テレポーテーションネットワーク、量子エンタングルメントスワッピング、量子エラーコレクション、非ガウス型量子エンタングルメント制御への拡張を行います。以上の研究は将来の量子情報ネットワーク構築のための重要な技術基盤を提供するものとなります。
(*研究者の所属は2009年12月現在のものです(但し、終了課題に関しては、その終了時点))