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戦略的創造推進事業CREST研究領域 > テーラーメイド

研究領域

戦略目標

研究領域名

テーラーメイド医療を目指したゲノム情報活用基盤技術

研究総括

笹月 健彦(国立国際医療センター 名誉総長)

概要

 本研究領域は、ゲノム情報を活用した創薬、個々人の体質に合った疾病の予防と治療−テーラーメイド医療−の実現に向けて、新たなゲノム情報解析システムの創製を目指した研究や多因子疾患の解明と創薬をはじめとした革新的な治療・予防法の基盤となる技術等を対象とします。
 具体的には、遺伝力の強い疾病や感染症に対する感受性や抵抗性のゲノム情報からの解明と創薬、我が国に特徴的な生活習慣病の遺伝・環境要因の探索とゲノム情報に基づいた予防法の開発、さらにゲノム情報に基づく薬剤感受性(有効性と副作用)の個人差を迅速かつ確実に解明することを目指す技術に関する研究、およびそれらの基盤となる新たな高効率ゲノム情報(SNPs)解析技術の実現を目指した研究等が含まれます。

平成16年度採択分 中間評価  事後評価  年報

研究課題
染色体およびRNAの機能変化からの疾患の系統的解析
研究代表者(所属)
油谷 浩幸 (東京大学 先端科学技術研究センター 教授)
概要
本研究では、染色体のコピー数の多型、アレル間の遺伝子発現量の違いおよび変異RNAの多様性に着目し、それらの系統的測定法の開発および日本人における頻度解析をおこないます。染色体変異を頻繁に行うことが知られるがんをはじめとする様々な疾患のゲノム情報に基づいた「個性」を明らかにすることにより、疾患感受性遺伝子の同定、個別化医療の実現に貢献します。
研究課題
Whole Genome Association解析によるGVHDの原因遺伝子の探索
研究代表者(所属)
小川 誠司 (東京大学 医学部附属病院 特任准教授)
概要
骨髄移植は白血病をはじめとする難治性の血液疾患に対する最強の治療手段ですが、同時に非常に大きな副作用の危険を伴う治療法でもあります。なかでも、患者とドナーの遺伝学的背景の違いによって引き起こされる移植片対宿主病(GVHD)は、移植の成否に重大な影響を及ぼす副作用です。本研究ではその原因となる遺伝的相違を50万個の遺伝子マーカーを用いた全ゲノム関連解析により明らかにし、より安全な移植医療の確立と移植成績の向上を目指します。
研究課題
分子シャペロン工学に基づく遺伝子解析
研究代表者(所属)
丸山 厚 (九州大学 先導物質化学研究所 教授)
概要
迅速、正確かつ低コストの遺伝子診断法はテーラーメイド医療実現の要となります。このような診断法を開発するには、配列特異的な核酸のハイブリッド形成をより厳密かつ迅速にする工夫が必要です。生体内では、核酸シャペロンといわれるタンパク質がハイブリッド形成を介助しています。本研究では、この生体の仕組みを取り入れた新しい遺伝子解析法を開発し、さらには異分野横断的研究により、シャペロン工学の概念を創出します。
研究課題
大腸癌の発生、進展および治療感受性に関わる因子の解析
研究代表者(所属)
森 正樹 (大阪大学大学院 医学系研究科 教授)
概要
本研究では、急激に増加する大腸癌の撲滅を目指して、全国7主要施設を結集し、疫学解析、遺伝子発現および多型解析を大規模に行います。5年間で大腸癌2000例、コントロール3000例に健康調査アンケート、血液を用いたDNA多型解析、手術腫瘍を用いた遺伝子発現解析を行い、大腸癌の発生、進展、あるいは抗癌剤治療に感受性の因子解析を行います。得られた疫学情報、遺伝子情報により、より優れた診療法の開発を目指します。

平成15年度採択分 中間評価  事後評価  終了報告書  年報

研究課題
大規模共同研究による統合失調症遺伝子の探索
研究代表者(所属)
有波 忠雄 (筑波大学大学院 人間総合科学研究科 教授)
概要
統合失調症の易罹病性には遺伝的要因が強く関わっており、発症には多くの遺伝子が関与していることや民族差が有ることが推測されています。本研究では、日本における統合失調症の分子遺伝学的研究を集約して、大規模な連鎖不平衡/関連解析を行うとともに死後脳や髄液での遺伝子発現、遺伝子産物の解析により、日本人における統合失調症の関連遺伝子を同定し、その病態を解明することを目標とします。これらを明らかにし、診断ばかりでなく、薬剤による治療反応性、副作用予測などテーラーメイド医療を実現するためのゲノム情報を明らかにすることを目指します。
研究課題
sub-common diseaseの感受性遺伝子同定と個人型易罹患性診断への応用
研究代表者(所属)
井ノ上 逸朗 (東海大学 総合医学研究所 所長・教授)
概要
疾患感受性、薬剤感受性に関与するSNPは個人差医療の重要な鍵を握るとされますが、全ゲノムに存在するSNPすべてのタイピングは現実的ではありません。本研究では、比較的遺伝背景が強く、ある程度の頻度を有するsub-common disease(脳動脈瘤、後縦靱帯骨化症、家族性甲状腺癌)をモデル疾患とし、疾患感受性遺伝子を同定して、精度の高い易罹患性推定モデルを構築します。SNPデータ、生活習慣、臨床検査データを組み合わせ、患者が自分の健康についてモニターできる「オーダーメイド健康管理システム」を構築して、疾病の予防と無駄の少ない効率的な医療の実現に貢献することを目指します。
研究課題
生体分子の高次構造形成に基づく遺伝子診断法
研究代表者(所属)
寺前 紀夫 (東北大学大学院 理学研究科 教授)
概要
SNPをマーカーとして利用する簡便且つ迅速な遺伝子診断法の開発は、ポストゲノム時代の重要なテーマです。これまで、蛍光検出型DNAアレイセンサーが有望視され開発されてきましたが、DNAの蛍光ラベル化という化学修飾操作が必要であることが問題でした。そこで、本研究では、蛍光ラベル化を必要としない一塩基多型の蛍光検出法の構築を目指します。この方法ではSNPの検出のみならず、DNA損傷部位の検出にも応用可能であるため、ゲノム情報活用基盤技術として、テーラーメイド医療に大きく貢献することが期待されます。
研究課題
日仏共同体制による人種間ゲノム多型の比較解析
研究代表者(所属)
松田 文彦 (京都大学大学院 医学研究科 教授)
概要
標準的ヒト多型情報のデータベースづくりは世界規模で進んでいますが、疾患別ヒト多型情報の解析は始まったばかりです。本研究では、白人と日本人でSNPを探索し比較することで、人種特異的なSNPと疾患特異的なSNPを同定し、人種的偏差を加味した疾患別SNPデータベースを構築します。さらに、最先端のバイオインフォマティックスを用い、SNPと臨床情報を統合したデータベース統計解析を行い、SNPに基づく遺伝学が治療に直結した次世代の臨床遺伝学として有効であることを実証します。

平成14年度採択分 中間評価  事後評価  終了報告書  年報

研究課題
高精度ゲノムアレイの開発と疾患遺伝子の探索
研究代表者(所属)
稲澤 譲治 (東京医科歯科大学 難治疾患研究所 教授)
概要
これまで、100kb〜数Mbにわたる大きさのゲノム異常をゲノムワイドに検出するシステムは存在しませんでした。本研究では、高精度ゲノムアレイを開発し、従来法では検出不能であった癌や遺伝疾患の微細構造異常を網羅的に探索して原因遺伝子を同定することを目標とします。本技術の開発は、癌治療の標的分子や癌個性診断のバイオマーカーの発見を可能とするだけでなく、自閉症や精神発達遅滞などの潜在的染色体異常の存在が示唆されている遺伝疾患の病態解明に強力なツールを提供します。
研究課題
高血圧関連疾患に関する多面的なゲノム疫学研究
研究代表者(所属)
加藤 規弘 (国立国際医療センター研究所 遺伝子診断治療開発研究部 部長)
概要
血圧は複数の遺伝子によって制御されていますが、食事などの環境要因が大きな影響を与えると推定されています。本研究では、遺伝と環境の相互作用という視点から双方の要因を同定し、高血圧及び臓器合併症の病因・病態を明らかにすることを目標とします。これらが解明されれば、個人の体質に合わせて“必要な人に、必要なタイミングで、必要最小限の高血圧治療”を施せるようになり、死亡率の減少、QOL(quality of life)の改善、医療費の削減に資することが期待されます。
研究課題
転写調節系の分子解剖による糖尿病素因の探索
研究代表者(所属)
武田 純 (岐阜大学大学院 医学系研究科 教授)
概要
日本の糖尿病人口は700万人に達し、「21世紀の国民病」といっても過言ではありません。本研究では、肝臓、膵臓のHNF(Hepatocyte nuclear factor)転写調節システムの障害が糖尿病のみならず肥満にも関連するという発見をもとに、HNF転写システムとその下流を構成するコンポーネントを中心に独自に開発したESTマイクロアレイ法などで解析し、感受性遺伝子を特定することを目標とします。ここで得られる成果を基に、日本人の2型糖尿病の遺伝子診断法の開発と創薬基盤の構築を目指します。
研究課題
ゲノム解析によるパーキンソン病遺伝子同定と創薬
研究代表者(所属)
戸田 達史 (大阪大学大学院 医学系研究科 教授)
概要
パーキンソン病は、ドパミンニューロンの変性による運動障害を主症状とする多因子遺伝性神経変性疾患です。現在の治療はドパミンの補充が主体であり、根本的な治療法ではありません。本研究ではまず、ゲノムワイドマイクロサテライト関連解析、連鎖解析、多数の候補遺伝子SNPに基づく大規模関連解析などを行い、疾患感受性遺伝子を同定することを目標とします。ここで得られる成果をもとに、SNPと各薬剤への反応性、副作用との関連を明らかにしてテーラーメイド治療法を確立し、更には同定された遺伝子の機能解析、蛋白構造解析などに基づく日本発のパーキンソン病創薬を目指します。
研究課題
遺伝子発現調節機構の包括的解析による疾病の個性診断
研究代表者(所属)
間野 博行 (自治医科大学 医学部 教授)
概要
有効なテーラーメイド医療には、ゲノム情報を利用したリアルタイムな患者個々の疾病の評価が不可欠です。本研究では、「疾患責任細胞の後天的な遺伝子変異」を発現調節機構の面から包括的に解析し、新規診断マーカーの同定、薬剤感受性規程因子の同定および予後予測法の開発を通してテーラーメイド医療を実現することを目標とします。「膵臓癌」、「血液疾患」「うっ血性心不全」、「婦人科腫瘍」などの疾患に対して、実際の医療への展開を目指します。
(*研究者の所属は2009年12月現在のものです(但し、終了課題に関しては、その終了時点))