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戦略的創造推進事業CREST研究領域 > シミュレーション

研究領域

戦略目標

研究領域名

シミュレーション技術の革新と実用化基盤の構築
CRESTプログラム、さきがけプログラムの混合型領域。

研究総括

土居 範久(中央大学 理工学部情報工学科 教授)

概要

 この研究領域は、計算機科学と計算科学が連携することにより、シミュレーション技術を革新し、信頼性や使い易さも視野に入れて、実用化の基盤を築く研究を対象とするものです。
 具体的には、物質、材料、生体などのミクロからマクロに至るさまざまな現象をシームレスに扱える新たなシミュレーション技術、分散したデータベースやソフトウェアをシステム化する技術、また、計算手法の飛躍的な発展の源となる革新的なアルゴリズムの研究や、基本ソフト、情報資源を取り扱いやすくするためのプラットフォームあるいは分野を越えて共通に利用できる標準パッケージの開発などが含まれます。

平成16年度採択分 中間評価  事後評価  年報

研究課題
数値線形シミュレーションの精度保証に関する研究
研究代表者(所属)
大石 進一 (早稲田大学 理工学術院基幹理工学部応用数理学科 教授)
概要
本研究では、数値線形シミュレーションツールを精度保証付きシミュレータへと性能向上させる理論とアルゴリズムを確立します。また、高精度内積計算アルゴリズムを用いた、悪条件線形問題の解決アルゴリズムとポータブルな高精度精度保証アルゴリズムを開発します。これらのアルゴリズムは、開発後に既存の有力シミュレータに実装して有効性を確認します。
研究課題
フラグメント分子軌道法による生体分子計算システムの開発
研究代表者(所属)
田中 成典 (神戸大学 大学院工学研究科 教授)
概要
本研究では巨大分子の電子状態を非経験的に計算する効率的な手法であるフラグメント分子軌道法のプログラムABINIT-MPを基に、金属を含んだ酵素反応や光励起反応も扱えるように機能を拡張し、汎用の第一原理生体分子シミュレーションシステムを開発します。これにより、中規模のPCクラスターでも溶液中の蛋白質や核酸に関する現実的な生体化学反応の分子シミュレーションが可能となり、生体の機能解明や創薬等に大きく寄与すると期待されます。
研究課題
リアルタイム宇宙天気シミュレーションの研究
研究代表者(所属)
田中 高史 (九州大学大学院 理学研究院地球惑星科学部門 教授)
概要
人類が宇宙に進出した現在、宇宙プラズマ現象は人間の生活に影響を与えるため、宇宙天気と呼ばれています。本研究では、最新のスーパーコンピューティング技術により、宇宙天気シミュレーションをリアルタイムで実行し、世界初の数値予報をめざすと共に、我々の周りの自然を本来複雑なものと捉え、数値空間上に作られた自然のコピーから現実世界の複雑性を解明する、複合系の科学に挑みます。
研究課題
システムバイオロジーのためのモデリング・シミュレーション環境の構築
研究代表者(所属)
冨田 勝 (慶應義塾大学 先端生命科学研究所 所長/環境情報学部 教授)
概要
細胞のモデリングとシミュレーションは、細胞の動的で複雑な振る舞いを理解するためのシステムバイオロジーの新しい方法論として注目されており、医療の創薬、微生物の工業利用や環境浄化などの産業分野において、最重要課題の一つといえます。本研究は、知識工学・ソフトウェア工学的手法を導入し、システムバイオロジーのための、本格的な実用に耐えられるモデリンング・シミュレーションソフトウェア環境を開発するものです。
研究課題
先端的データ同化手法と適応型シミュレーションの研究
研究代表者(所属)
樋口 知之 (情報・システム研究機構 統計数理研究所 副所長・教授)
概要
シミュレーションなどの数値モデルによる対象状態の時間発展更新と、装置からの部分的な観測量に基づく状態補正の二つを適切に組み合わせる作業はデータ同化と呼ばれます。本研究では先端的なデータ同化手法を開発し、さらにこの技法をもとに、シミュレーションモデルを複数走らせ、データ適応的に数値モデルを切り替え、あるいはそれらを統合するようなメタシミュレーションモデルを創出するプラットフォームを提供します。
研究課題
複合手法を用いた電子構造計算技術の開発
研究代表者(所属)
藤原 毅夫 (東京大学 大学総合教育研究センター 教授)
概要
第一原理電子構造シミュレーションの基盤的技術を構築するためには、100万原子あるいはそれ以上の原子からなるナノ・モデル系に適用できる第一原理分子動力学シミュレーション技術と今後重要な材料となる強相関電子系に対する第一原理電子構造計算シミュレーション技術が不可欠です。本研究では(1)超大型1万〜1000万原子系量子力学分子動力学シミュレーション技術の確立と量子論的プロセスシミュレーターの基盤技術の構築、(2)1電子バンド抽象と多電子抽象を融合した第一原理電子構造計算手法の構築、の二つの課題を取り扱い、物質材料設計のためのシミュレーションの基盤技術を確立します。

平成15年度採択分 中間評価  事後評価  終了報告書  年報

研究課題
数値/数式ハイブリッド計算に基づくロバスト最適化プラットフォームの構築
研究代表者(所属)
穴井 宏和 (富士通(株)テクニカルコンピューティング・ソリューション事業本部計算科学ソリューション統括部 統括部長付)
概要
様々なものづくりにおいて、シミュレーション技術は設計・製造の効率化、高品質化、高付加価値化実現に不可欠な技術です。本研究では、計算機パワーを活用した記号・代数計算技術を基盤として、今まで行われてきた数値的計算技術を融合したハイブリッド計算技術の構築を目指します。本研究により、非線形・非凸問題などの制約・最適化問題を正確に解くことができ、新しい実用的な計算技術パラダイムの創設のための革新的な第一歩になると期待されます。
研究課題
材料の組織・特性設計統合化システムの開発
研究代表者(所属)
石田 清仁 (東北大学大学院 工学研究科 教授)
概要
各種の先進機能材料の創製には、その諸特性を引き出すために、ミクロ・ナノ組織形成のシミュレーションとそれに基づいた特性予測が求められます。本研究ではスタティクスからダイナミクスまで包括できる材料設計に関する統合化シミュレーションシステムの開発を行います。本研究の成果は材料学における永遠のテーマである材料の特性・材質予測の実現の突破口を開くものと期待されます。
研究課題
高度放射線医療のためのシミュレーション基盤の開発
研究代表者(所属)
佐々木 節 (高エネルギー加速器研究機構 計算科学センター 教授)
概要
放射線医療を適正に、また効率よく行うために、人体に対する放射線の影響をシミュレーションにより事前に知ることが求められています。本研究では、今後、放射線医療で重要となる陽子線、重粒子線まで含めた放射線医療シミュレータの開発を行います。本研究成果のソフトウエアは特定の治療装置や既存のコードに依存しないため、複数の放射線治療装置に対して事前に精密な検証が可能となり放射線治療法の最適化を行うことができ、放射線医療の発展に貢献できるのもと期待されます。
研究課題
生体骨医療を目指したマルチプロフェッショナル・シミュレータ
研究代表者(所属)
高野 直樹 (立命館大学 理工学部マイクロ機械システム工学科 教授)
概要
高齢化社会の中で増加の傾向にある骨粗鬆症患者の診断・治療では、骨梁の形態的特徴量やナノスケールのアパタイト結晶の配向を考慮した骨質の評価が重要であることが分かってきました。本研究ではナノ材料科学に基づき、生体骨の特性解析をナノスケールからメゾ、マクロ領域のマルチスケールシミュレーションにて実現し、また同時に異分野の研究者の連携のため、マルチプロフェッショナル・シミュレータ“DoctorBQ”を構築しました。これは、医学、歯学、生体力学分野のみならず、材料科学、計算工学分野における共通プラットフォームとして広範囲な利用が期待されます。
研究課題
グリッド技術を用いた大規模分子シミュレーションプログラムの開発
研究代表者(所属)
長嶋 雲兵 ((独)産業技術総合研究所 計算科学研究部門 主幹研究員)
概要
新規産業創製へ向けて新規物質創造の迅速化・低コスト化が強く叫ばれており、実験に取って代わる分子シミュレーションの重要度が増しています。本研究では今まで計算が困難であった大規模分子シミュレーションを実現するために、並列分散処理を実現する革新的なアルゴリズムを開発し、グリッド技術を用いて高速計算が可能なプログラムの開発を行います。本研究により計算化学シミュレーションの適用範囲が拡大し、新規材料開発や創薬の効率向上が可能となります。図にHIVとリガンドを示しました。本研究により、このような巨大系の電子状態を詳細に調べることができるようになり、新薬や新規物質の開発が計算機を用いてできるようになることが可能となります。
研究課題
医療・創薬のためのマルチスケール・マルチフィジックス心臓シミュレータの開発
研究代表者(所属)
久田 俊明 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 教授)
概要
近年の分子生物学の進歩に伴い、個々のタンパク質機能に関する膨大な知見が集積されていますが、これらを統合し生体全体を再構成することによって初めて真の意義は解明されます。本研究は、心臓のミクロからマクロに至る総合的理解を可能とする大規模なマルチスケール・マルチフィジックスシミュレータを開発するものです。心臓の医療に貢献するだけでなく、汎用生体シミュレータ開発のプラットフォームを提供するものになると期待されます。

平成14年度採択分 中間評価  事後評価  終了報告書  年報

研究課題
粒子法によるマルチフィジクスシミュレータ
研究代表者(所属)
越塚 誠一 (東京大学大学院 工学系研究科 教授)
概要
連続体の運動を離散粒子群の運動によって近似する粒子法は、複雑な境界面に柔軟に対応でき、連続体の連成シミュレーションに有効です。本研究では、マイクロスケールに適用できる多相流体解析を粒子法により確立し、流体・構造連成解析手法の開発を目指すものです。また本解析手法に基づき、汎用マルチフィジクスシミュレータの開発を行います。将来的には、熱、化学反応、電磁場等の連成解析機能を整備し、統合的な解析ツールの開発を目指します。
研究課題
放射線治療の高度化のための超並列シミュレーションシステムの開発
研究代表者(所属)
斎藤 公明 ((独)日本原子力研究開発機構 原子力基礎工学研究部門 研究主席)
概要
本研究は、放射線がん治療を対象として、詳細人体モデルと電磁カスケード・モンテカルロ法を用いた超並列計算により、患者に与えられる線量を短時間に高精度で計算し、治療を支援するシステムを開発するものです。さらに、高度な放射線治療を実現するために、本システムを強度変調型放射線治療(IMRT)やCT集光治療へ適用する研究を行うとともに、レーザー駆動陽子線治療を実現するための計算システムの構築と検討を実施します。
研究課題
多階層的バイオレオシミュレータの研究開発
研究代表者(所属)
土井 正男 (東京大学大学院 工学系研究科 教授)
概要
これまでの生体シミュレータは、バイオメカニクスのように、生体のマクロの階層に限定されたものでした。本研究では、生体のメソの階層に着目し、生体組織および生体代替材料における物質の変形、流動、拡散などのレオロジー現象に対するシミュレータを構築します。具体的には、(a)バイオ流体シミュレータ、(b)バイオゲルシミュレータ、(c)バイオ界面シミュレータ、(d)バイオ分子シミュレータの4つのシミュレータを構築し、これらを共通のシミュレーションプラットフォームの上で連携させ、生体組織に対する多階層的なシミュレーションを実現します。これにより、ティッシュエンジニアリング、バイオマテリアル、バイオチップ設計など、先端的医工学の開発研究を支援するシステムを構築します。
研究課題
大規模シミュレーション向け基盤ソフトウェアの開発
研究代表者(所属)
西田 晃 (中央大学 理工学研究所 客員研究員)
概要
高速ネットワーク環境の発展に伴い、今後は大規模アプリケーションについて各種資源をネットワーク上で共有し、オープン環境で研究開発を行う機会が増えてきます。本研究は、従来から個別に作成されてきた数値シミュレーションに必要な計算手法やアルゴリズムに関する基本的なライブラリを整備し、並列数値計算を可能とする標準的なソフトウエア基盤を構築することを目指すものです。
研究課題
ナノ物性計測シミュレータの開発
研究代表者(所属)
渡邉 聡 (東京大学大学院 工学系研究科 教授)
概要
ナノ構造およびナノスケール局所領域の物性計測は、今後ますます重要になると考えられますが、プローブや外場との強い相互作用のため、計測結果の解釈は困難なものになっています。本研究は、バイアス電圧などの電気的刺激を与えるナノ物性計測の計測データから、高い信頼性で物性を予測するための解析技術の確立を目指し、計測量そのものの計算と局所物理現象を解析する計算法により、実用的ナノ計測シミュレータを開発します。
(*研究者の所属は2009年12月現在のものです(但し、終了課題に関しては、その終了時点))