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戦略的創造推進事業CREST研究領域終了領域一覧 > 免疫難病

研究領域

戦略目標

研究領域名

免疫難病・感染症等の先進医療技術
-遺伝子レベルでの発症機構の解明を通じた免疫難病・感染症の新たな治療技術の創製を目指して-

研究総括

岸本 忠三 (大阪大学大学院 生命機能研究科 教授)

概要

 この研究領域は、再生医療や抗体工学等を含む先進医療のうち、免疫が関わる各種疾患(例えば免疫由来各種難病や各種感染症)に対する先進医療技術を中心とし、その他関連する先進医療技術も含め、次世代の医療技術の基礎と応用に関する研究を対象とするものです。
 具体的には、免疫難病(自己免疫疾患やアレルギー等)の発症機構の遺伝子レベルでの解明とそれに基づいた新しい治療法、例えば抗体療法、遺伝子治療、DNAワクチン、幹細胞治療等の開発および結核、マラリア、エイズ等の細菌、原虫、ウイルス感染症に対する新しいワクチンや創薬の開発につながる基礎的研究等が対象となります。

平成15年度採択分 中間評価  事後評価  終了報告書  年報

研究課題
セマフォリンによる免疫調節機構の解明と免疫制御への応用
研究代表者(所属)
菊谷 仁 (大阪大学 微生物病研究所 教授)
概要
セマフォリン分子(CD100/Sema4D、Sema4A)は、免疫反応の成立や調節に重要な役割を果たしています。本研究では、セマフォリン分子のin vitro、in vivoにおける免疫学的活性、それらの受容体の同定、シグナル伝達経路の解析を行い、セマフォリンの免疫系における役割の解明を目指します。その成果は、免疫制御機構の理解を飛躍的に進めると同時に、免疫病の革新的な治療法の開発に繋がるものと期待されます。
研究課題
制御性T 細胞による新しい免疫制御法の開発
研究代表者(所属)
坂口 志文 (京都大学 再生医科学研究所 教授)
概要
制御性T細胞は、自己に対する免疫不応答の成立・維持に積極的に関与しています。特に、CD25+CD4+制御性T細胞の機能異常は自己免疫病、アレルギーなどの免疫疾患の直接的原因となります。本研究では、CD25+CD4+制御性T細胞による免疫制御の分子的基礎を解明し、制御性T細胞の細胞及び分子レベルの操作による新しい免疫制御法の開発を目指します。その成果を、自己免疫疾患、慢性感染症、アレルギーの治療・予防、腫瘍免疫の誘導、臓器移植の制御に展開します。
研究課題
病原細菌の粘膜感染と宿主免疫反応抑制機構の解明とその応用
研究代表者(所属)
笹川 千尋 (東京大学 医科学研究所 教授)
概要
赤痢菌を初めとする粘膜病原細菌が引き起こす下痢疾患により、開発途上国では毎年多くの人命が失われています。粘膜病原細菌の感染は、菌の分泌性機能タンパク質(エフェクター)と宿主因子の相互作用により進行します。近年、我々はエフェクターの一部が感染に対して誘導される免疫反応を一時的に抑制することを見出しました。本研究では、赤痢菌が分泌する一群のエフェクターに注目し、それらの感染成立に至る役割を分子レベルで明らかにし、安全な赤痢ワクチン等、新しい治療・制御法の確立を目指します。
研究課題
真に臨床応用できる多能性幹細胞の樹立
研究代表者(所属)
山中 伸弥 (京都大学物質-細胞統合システム拠点 iPS細胞研究センター センター長/京都大学再生医科学研究所 教授)
概要
胚性幹(ES)細胞は、高い増殖能と分化多能性から細胞移植療法の資源として期待を集めています。しかし、培養の困難さ、受精卵利用による倫理的問題、奇形腫形成等の問題があります。我々は、これまでES細胞の分化多能性を決定する転写因子Nanogや奇形腫形成における重要因子ERas等の遺伝子群を同定しました。本研究では、これら遺伝子群の解析によりES細胞の特性維持機構を解明し、体細胞から分化多能性は持つが腫瘍形成能の無い、理想的な幹細胞を作り出すことを目指します。

平成14年度採択分 中間評価  事後評価  終了報告書  年報

研究課題
M細胞の免疫生物学的解明とそれを標的とする粘膜ワクチンの開発
研究代表者(所属)
清野 宏 (東京大学 医科学研究所 教授)
概要
感染防御機構の第一線バリアである粘膜免疫の誘導・制御は、腸管パイエル板と鼻咽頭関連リンパ組織(NALT)が司令塔的役割を果たしています。しかし、パイエル板やNALTに存在する抗原取込み専門細胞と言われるM細胞については、基礎的情報は殆どありません。本研究では、未知のM細胞特異的抗原分子とその関連遺伝子を探索・同定し、M細胞の免疫生物学的全容を明らかにし、それを標的とした「M細胞標的粘膜ワクチン」の開発を目指します。
研究課題
病原微生物の宿主免疫系との共生戦略の解明による治療・制御法の開発
研究代表者(所属)
小安 重夫 (慶應義塾大学 医学部 教授)
概要
病原微生物は、宿主の免疫反応に巧みに干渉し、感染を成立・持続させます。本研究では、感染の初期防御ならびに獲得免疫の起動に重要な自然免疫系の活性化機構とそれに干渉する微生物の共生機構を明らかにします。具体的には、宿主側の因子PI3キナーゼ系の役割に注目し、培養系のみならず、そのノックアウトマウス等の遺伝子改変動物を駆使して個体レベルでの解析を推進します。病原微生物感染における免疫系に作用する因子、およびその作用の分子機構を明らかにし、病原因子の影響を阻害し、免疫系のバランスを適切に保つ治療・制御法の開発を目指します。
研究課題
獲得免疫における高親和性抗体の産生機構と感染症防御への応用
研究代表者(所属)
阪口 薫雄 (熊本大学大学院 医学薬学研究部 教授)
概要
外界の病原微生物に対する獲得免疫反応は、末梢のリンパ組織において、抗原と特異的で高親和性に結合する抗体を産生することによって重篤な感染症から我々を守っています。この獲得免疫反応をくぐり抜ける病原体(肝炎ウイルス、レトロウイルス、発がんウイルス)や、プリオンタンパク質等の異常分子が現れ、現代医学の緊急の課題となっています。本研究では、GANP分子の機能の解析を通し、末梢のリンパ組織における高親和性抗体産生の分子機構を明らかにし、現在、重篤で難治とされているさまざまな感染症から我々を防御する方策を提示するものです。
研究課題
マラリア感染成立の分子基盤の解明と新たな感染阻止法の創出
研究代表者(所属)
鎮西 康雄 (三重大学大学院 医学系研究科 客員教授)
概要
マラリアは年間約四億人の感染者と約200万人の死者を出す、世界で最も重要な感染症の一つです。薬剤耐性原虫の出現などにより、その対策は困難を極めており、効果的なマラリア防御法の開発が求められています。マラリア原虫スポロゾイトは感染蚊の吸血を介して人の皮膚に注入されます。体内に入った原虫は、血流で運ばれて肝臓に感染し、そこで‘マラリア’と呼ばれる病態をもたらす赤血球感染型原虫になります。本研究は、スポロゾイトの肝臓への感染に着目し、マラリア感染成立の分子基盤を逆遺伝子学的手法により明らかにします。さらに、ここで得られた知見を基に、スポロゾイトの肝臓感染過程を標的とした感染阻止法の創出を目指します。この阻止法はマラリア根絶技術に発展することが期待されます。
研究課題
異肝臓における造血・免疫機構の解明と肝疾患治療への応用
研究代表者(所属)
宮島 篤 (東京大学 分子細胞生物学研究所 教授)
概要
肝臓は、成体における主要な代謝器官であるとともに造血・免疫組織であり、特に胎生期では最も主要な造血組織です。また、肝炎ウイルス等による肝障害は多くの肝疾患の本態であり、持続的な傷害と再生は肝癌発生の要因となります。本研究では、胎生肝臓細胞の初代培養系を用いて造血幹細胞増幅因子の同定を目指します。また、オンコスタチンMは、肝再生に深く関与しており、その役割の解明から肝再生機構の解析を行います。これらの知見は細胞治療や肝炎治療薬の開発につながることが期待されます。

平成13年度採択分 中間評価  事後評価  終了報告書  年報

研究課題
インフルエンザウイルス感染過程の解明とその応用
研究代表者(所属)
河岡 義裕 (東京大学 医科学研究所 教授)
概要
ウイルス感染症は多大な被害を及ぼしています。本研究は、インフルエンザウイルス増殖過程の理解を深め、そこで得られた知識を、本感染症制圧に応用することを目的とした。得られた成果は、抗ウイルス薬開発のターゲットを提示し、新しい概念のワクチンならびにワクチンベクターの創製につながるとともに、他のウイルス感染症研究のモデルとなる可能性があります。
研究課題
自然免疫とヒト難治性免疫疾患
研究代表者(所属)
瀬谷 司 (北海道大学大学院 先端生命科学研究院 教授)
概要
本研究で自然免疫(リンパ球以前の微生物認識系)が関与する免疫細胞応答とがん・感染症について以下の成果を得た。1. ヒト樹状細胞は微生物パターン(アジュバント)を認識し、多指向性に成熟化する。2. NKはTICAM-1 (TRIF) 経路で活性化し、CTLはMyD88で活性化する。3. がん・感染症対策に目的指向性のワクチンアジュバントの開発が必要である。細胞性免疫の起動に必要な樹状細胞の分子機構を解明して、がんの免疫療法開発のための基礎資料を提示した。
研究課題
IgL受容体の理解に基づく免疫難病の克服
研究代表者(所属)
高井 俊行 (東北大学 加齢医学研究所 教授)
概要
免疫系を正と負の両方向にバランスよく制御するイムノグロブリン様受容体(IgLR)分子群の中でも、自己のマーカー分子であるMHCクラスI分子群をリガンドとするIgLRであるPIRによる免疫制御のしくみが解明されました。PIRは同一細胞上のMHCクラスIを恒常的に認識することで、アレルギーや炎症反応を制御しており、自己免疫病や移植免疫病にも重要な役割を演じていることが分かりました。これら免疫難病に対する画期的な治療法や薬剤の開発につながる成果が数多く得られました。
研究課題
IL-18を標的とした自然型アトピー症の治療戦略
研究代表者(所属)
中西 憲司 (兵庫医科大学 教授)
概要
アレルギー性炎症は、Th2/IgEで誘導されるもの(外因型)と、されないもの(内因型/自然型)とに分けられる。マウスに抗原特異的Th1細胞を全身的に誘導し、次に、抗原+IL-18を局所投与するとアトピー性皮膚炎あるいは気管支喘息を誘導できる。抗原とIL-18で刺激されたTh1細胞はスーパーTh1細胞となりIFN-γ、 GM-CSF, IL-3、 IL-9そしてIL-13を産生して、組織改変を伴うアレルギー性炎症を誘導する。IL-18の代わりに病原体成分で刺激しても、内因性IL-18が誘導され、やはりアレルギー性炎症がおこる。抗IL-18抗体で内因性のIL-18を中和すると、アレルギー性炎症が阻止されることから、抗IL-18抗体療法は感染で誘導されるアレルギー性炎症の有効な治療法を提供することが見込まれる。
研究課題
病原体糖脂質認識シグナル伝達機構の解明
研究代表者(所属)
三宅 健介 (東京大学 医科学研究所 教授)
概要
エンドトキシンは病原体糖脂質の中で最も強く免疫機構を活性化し、多くの疾患と関連するだけでなく、それ自体がエンドトキシンショックを引き起こします。本研究ではTLR4/MD-2 によるエンドトキシン認識機構について、エンドトキシンとの結合、それに引き続くTLR4-clusteringの誘導を示し、さらには、MD-2とエンドトキシンとの結晶構造についても明らかにしました。これらの知見は、エンドトキシンショック治療薬開発のための糸口となることが期待されます。さらに、TLR4に会合する新たな分子をクローニングし、その分子がTLR4の表面への発現とエンドトキシンに対する応答性を制御することを示しました。この分子が新たなエンドトキシンショックの治療法の標的分子となりうる可能性についても今後検討する予定です。
(*研究者の所属は2008年12月現在のものです(但し、終了課題に関しては、その終了時点))