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戦略的創造推進事業CREST研究領域終了領域一覧 > 脳を創る

研究領域

戦略目標

脳機能の解明」(PDF:17KB)

研究領域名

脳を創る

平成11年度採択分 中間評価  事後評価  終了報告書  年報

研究課題
感覚運動統合理論に基づく「手と脳」の工学的実現
研究代表者(所属)
石川 正俊 (東京大学大学院情報理工学系研究科 教授)
概要
「手と脳」のもつ感覚と運動の統合機能に注目した工学的脳型処理システムの研究を行った。システムを構成する諸要素(高速視覚、分布型触覚、高速多指ハンド、並列処理系)の研究開発を行うとともに、動特性を考慮した感覚運等統合理論を提案し、それらの成果を統合して、人間を超える高速な認識行動能力を持つ「手と脳」システムを実現した。ボールキャッチングやバッティングなどのデモを、人間を超える性能で実現し、システムの有効性を示した。
研究課題
行動系のメタ学習と情動コミュニケーション機構の解明
研究代表者(所属)
銅谷 賢治 ((株)国際電気通信基礎技術研究所脳情報研究所 室長)
概要
「学習のしかたの学習」をテーマに、計算理論と脳の回路・物質機構の両面から研究を行いました。ロボット群「サイバーローデント」を開発し、その学習を支配するパラメタと報酬関数が、自己保存と自己複製の要請のもとに最適化され得ることを実証しました。またfMRIによる脳活動計測により、大脳基底核を中心とした脳回路の異なる部位が、異なる時間スケールでの報酬の予測を行い、そのバランスが神経修飾物質のセロトニンにより制御されることを発見しました。
研究課題
海馬の動的神経機構を基礎とする状況依存的知能の設計原理
研究代表者(所属)
山口 陽子 ((独)理化学研究所脳科学総合研究センター チームリーダー)
概要
本研究では文脈性を獲得する神経機構としてラット海馬のシータリズム活動に注目して変動する環境における脳のリアルタイム計算の原理を探ることを目的とした。その結果、海馬ではシータリズムの位相に時系列をコードし構造化することで環境の文脈情報をリアルタイムに獲得できるという文脈情報生成の計算論の確立に成功した。この神経ダイナミクスに基づいた大域的なネットワークの形成が思考学習の基本原理となることを、サルやヒトにも共通のしくみとして提示した。

平成10年度採択分 中間評価  事後評価  終了報告書  年報

研究課題
運動の学習制御における小脳機能の解明
研究代表者(所属)
永雄 総一 (自治医科大学医学部 助教授)
概要
小脳の神経可塑性「長期抑圧(LTD)」と運動学習の因果関係を検証し、随意運動におけるLTD の役割を検討した。数時間程度の短期運動学習の記憶はLTDによって小脳皮質に形成されるが、数日程度の長期運動学習の記憶は、小脳皮質のLTD が原因となり、結果として小脳(前庭)核に形成されることを示した。さらに随意運動では、小脳がLTDを用いて大脳で作成された運動司令信号を最適化していることを示唆する。
研究課題
自律行動単位の力学的結合による脳型情報処理機械の開発
研究代表者(所属)
中村 仁彦 (東京大学大学院情報理工学系研究科 教授)
概要
機械知能の構成法に力学的な脳の情報処理のパラダイムを持ち込むことを方針に、(1)認識と生成の力学的情報処理、(2)機構と制御の進化的展開、(3)感覚と行動の計測・計算論、(4)学習と発達の記述と情報処理、の研究を実施した。ヒューマノイドの運動と記号を非線形力学系で結ぶ力学的情報処理、認識と生成の統計的情報処理による運動の記号化、体性感覚情報計算法、環境と連成するヒューマノイドの開発、が主要な成果である。
研究課題
時間的情報処理の神経基盤のモデル化
研究代表者(所属)
深井 朋樹 (玉川大学工学部 教授)
概要
脳の機能はニューロンやシナプスから形成される神経回路の機能によって実現される。脳の回路が情報を表現し計算する仕組みに、ニューロンや神経回路のダイナミクスという視点から迫る計算論的研究を行った。その結果、ニューロンの同期発火の生成や調節の機構や、スパイクタイミングによる神経回路の自己組織化の機構などについて、さまざまなことを明らかにした。また人間や動物の時間記憶と認知のための神経回路や、意思決定の最終処理過程としての積分回路のモデルを提案し、実際にサルの脳から記録した神経活動と比較しながら、行動を組織化するための神経メカニズムを検証した。
研究課題
発声力学に基づくタスクプラニング機構の構築
研究代表者(所属)
誉田 雅彰 (早稲田大学スポーツ科学部 教授)
概要
本研究は、人間の発声力学系に着目して発声動作の運動計画機構の解明することをねらいとし、発声系の生理的、力学的、及び音響的な機構に関する計算機モデル、及び人と同じように声帯を振るわせ口を動かして発声する人間形発話ロボットを構築するとともに、発声動作を生成する発声運動計画モデルを考案した。この研究を通じて、脳の音声情報生成メカニズムの理解を深めるとともに、音声生成機構に基づく音声情報処理の基盤技術を確立した。

平成9年度採択分 中間評価  事後評価  終了報告書

研究課題
脳の動的時空間計算モデルの構築とその実装
研究代表者(所属)
合原 一幸 (東京大学大学院新領域創成科学研究科 教授)
概要
本研究では、ニューロンのカオス性、非同期性とノイズ効果に着目して、脳における非線形時空間ダイナミカル情報処理機構に関する数理モデルを構築するとともに、そのモデルをアナログ・非同期電子回路技術を用いて実装した。この研究を通じて、現在のディジタルコンピュータとは大きく異なる、アナログ性と非同期性に基づく脳型情報処理システムの構成理論と基盤技術を確立するとともに、様々なカオス工学応用技術を開発した。さらに、脳の情報コーディング機構に関して、集中発火率と同期発火間隔を用いた時空間デュアルコーディング仮説を提案した。
研究課題
聴覚の情景分析に基づく音声・音響処理システム
研究代表者(所属)
河原 英紀 (和歌山大学システム工学部 教授)
概要
本研究では、人間の聴覚の機能を支えている原理を理解し、工学的に実現することを通じて『聴覚脳』を創りあげることを目指して来ました。人間の音声のように周期性のある音は、生物にとって重要であり、特別な処理が行われています。その機構の研究からSTRAIGHTと呼ばれる強力な音声分析加工技術が生まれ、また、その過程で音の時間構造の新しい表現が発見されました。さらに、この発見は、聴覚での処理の本質を捉えた『初期聴覚系の計算理論』の構築につながり、STRAIGHTと併せて広範な応用の世界を拓きつつあります。
研究課題
脳型情報処理システムのための視覚情報処理プロセッサの開発
研究代表者(所属)
小柳 光正 (東北大学大学院工学研究科 教授)
概要
人間の網膜や視覚野で行っているような視覚情報処理手法を取り入れた新しい視覚情報処理システムの実現を目指して研究を行った。試作したシステムに取り入れた機能は網膜と視覚野の機能の一部である。網膜と視覚野の機能をできるだけ忠実に再現するために、それぞれの処理部分に対する専用のLSIチップを設計、試作した。網膜や視覚野における機能と構造の相関を重視して、LSIの構造も網膜や視覚野の構造に似た3次元積層構造型とした。ウェーハ張り合わせ法に3次元集積化技術を開発することにより、世界初の3次元積層型人工網膜チップおよび視覚野チップの試作に成功した。
研究課題
言語の脳機能に基づく言語獲得装置の構築
研究代表者(所属)
酒井 邦嘉 (東京大学大学院総合文化研究科 助教授)
概要
機能的磁気共鳴映像法(fMRI)の実験から、文法処理を伴う言語理解で人間の脳が特異的に活動することを発見した。文法判断課題における皮質活動を、文や単語の短期記憶課題における活動と直接比較したところ、ブローカ野を含む左脳の前頭前野で文法処理に選択的な活動が観察された。この活動は、課題の難易度や言語性短期記憶などの一般的な認知因子では説明することはできない。また、経頭蓋的磁気刺激法(TMS)の実験から、意味処理から独立した「文法中枢」の座を特定することに初めて成功した。以上の結果は、ブローカ野が文法処理を司ることを示す直接的な証拠である。
研究課題
MEGによる人間の高次脳機能の解明
研究代表者(所属)
武田 常広 (東京大学大学院新領域創成科学研究科 教授)
概要
本研究によって、色覚、調節・瞳孔反応、運動視、立体視などの基礎的な視覚特性について、従来の研究では明確に出来なかった様々な事実を明らかにし、さらに人間の注意、言語などに関する新たな知見を得た。ICA、ウェーブレットを用いたデータ処理法を適用するとともに、分布型磁場源推定法においてL1およびL2ノムルを結合した評価法によって、より確からしい活動源の分布を推定する手法を開発した。MEG装置の最大のネックである大量のヘリウム消費の問題を解決できる装置を、GM冷凍機の予冷機能を巧みに利用することによって開発した。
(*所属機関・役職名は研究終了時点のものです)