江口 浩一 | 京都大学 大学院工学研究科 教授 |
岡崎 健 | 東京工業大学 大学院理工学研究科 教授 |
加藤 千幸 | 東京大学 生産技術研究所 革新的シミュレーション研究センター センター長・教授 |
栗原 和枝 | 東北大学 原子分子材料科学高等研究機構 多元物質科学研究所 教授 |
斎川 路之 | (財)電力中央研究所 エネルギー技術研究所 上席研究員 |
中戸 義禮 | 大阪大学 産業科学研究所 特任教授 |
萩原 剛 | (株)東芝 電力・社会システム技術開発センター 機械システム開発部 部長 |
宮野 健次郎 | (独)物質・材料研究機構 フェロー |
吉田 真 | 京セラ(株) 経営推進統括部 副統括部長 |
渡辺 政廣 | 山梨大学 燃料電池ナノ材料研究センター センター長・教授 |
地球温暖化、資源枯渇などの地球規模の課題を克服し、豊かな持続性社会を構築するためには、エネルギー問題への貢献度を吟味した上で、目標技術におけるエネルギー利用効率を極限まで高めるとともに、新たなエネルギー関連技術を開発する必要があります。自然エネルギーの収穫を含め、あらゆるエネルギー利用過程の高効率化は、普遍的かつ根源的な研究開発目標としてさらに重要性が増しています。
エネルギーに関連する種々の機器やシステムには、固体、液体、気体といった異なる状態や異なる物質が互いに接する境界(相界面)が必ず存在し、そこで生じる力学的、化学的、あるいは電磁気学的な現象を利用するものが多くあります。一方、現実のエネルギー機器やシステムの性能は、その理論的最高性能(限界性能)に遠く及びません。これはエネルギーの変換、輸送、貯蔵プロセスにおける不可逆損失が主原因であり、また、それらの多くは相界面での現象に起因しています。そこで、相界面での不可逆損失を大幅に削減することが、省エネルギー、すなわち、エネルギー利用効率の向上を狙うすべての技術開発において本質的に重要と考えられます。
例えば、熱エネルギーシステムにおける乱流や沸騰などの複雑な熱流動制御や輸送機器における摩擦抵抗低減による効率の向上、燃料電池や蓄電池などの電極界面反応機構の解明と相界面材料・形態の最適化、太陽光による発電や燃料生産の素過程の解析と最適化、伝熱・物質交換・相分離技術の高度化によるヒートポンプの革新、分離膜の構造の詳細解析と孔径・相界面形態の高性能化、パワー半導体デバイスの界面制御による高効率化などの課題が存在します。
こうした課題を解決するためには、共通する相界面現象の基礎学理を深化させ、そこで得られた知識を基に理想的な界面を設計し、実証することが望まれます。また、求める相界面を具体的に作製・制御する技術の開発も必須です。一方、相界面はマルチスケール構造の各階層に存在します。従って、ナノメートルでの現象解明や材料研究の成果を実システムに活かすためには、幅広いスケールの現象を総合的に解析・設計するための計測技術や、モデリングとシミュレーション技術のための工学や数理科学の開拓も必要です。そして、これらの成果を統合することによって、機器やシステムのエネルギー損失の削減や、新たな省エネルギー機器、創エネルギー機器などの創造が可能となる共に、関連技術の飛躍的な性能向上と低コスト化を図ることができると考えられます。さらに、相界面科学は、人類のあらゆる生産・消費活動に関わっています。本研究領域推進による成果は、最終的にはエネルギー利用に限らず、広く他分野にも転用できる共通基盤的な科学・技術として構築されることを目指しています。
このように、本研究領域の目標を達成するには、様々な科学・技術の連携や融合が欠かせず、分野を越えた研究者の協働が必須です。つまり、基礎科学としての研究だけに留まるのではなく、あるいは個別技術の改善だけに留まるのではなく、最終的な目標技術への道程を見通した上での基盤的研究課題の設定を求めます。 公募にあたっては、材料系、化学系、機械系、電気系、システム系、さらには物理系、数理系など幅広い分野からの研究者が参画する研究チームを歓迎します。ただし、こうした連携、融合を実現するための端緒としては、主として相界面現象や材料機能の微視的詳細を基に高効率化を目指すアプローチ(Scienceアプローチ)、あるいは、具体的な実システム、構造やデバイスを基に高効率化を狙うアプローチ(Engineering Scienceアプローチ)といった二つの道筋があると考え、応募者にはどちらのアプローチを採るのかを記載していただきます(注)。もちろん、両方のアプローチを含んだ取り組みを期待しますが、その場合も応募に関してはどちらかを選んでください。いずれの場合も、広く異分野の研究者が、エネルギー高効率利用を目的に結集し、新たなブレークスルー達成に挑戦していくことを期待しています。
なお、目標とするどのようなエネルギー関連技術の検討においても、実際の応用においては大量のエネルギーを扱い得ること、そして低コストであることが重要となります。従って、目標技術の革新性だけでなく、量的貢献も含めた観点からの課題設定が必要です。また、相界面科学は、人類のあらゆる生産・消費活動に関わっています。本研究領域推進による成果は、最終的にはエネルギー利用に限らず、広く他分野にも転用できる共通基盤的な科学・技術として構築されることを期待しています。
(1)エネルギーはわが国が直面する主要課題のひとつであり、CRESTはその解決に結びつく課題解決型基礎研究を国として集中投資して推進する事業であることを念頭に、エネルギー高効率利用に向けた優れた基礎研究提案を選ぶ。
(2)エネルギー高効率利用への量的貢献あるいは低コスト化による広い市場普及に繋がる、具体的な技術目標を見据えた基礎研究を期待する。すなわち、目標技術の革新性だけでなく、量的貢献も含めた観点からの課題設定を重視する。
(3)研究課題としては、界面現象のプロセス・素過程の解明、計測技術とモデリング・シミュレーション、相界面の設計(最適化、制御)などがあり得るが、単なる現象解明や一般的な解析・計測技術の開発に留まる研究よりも、エネルギー高効率利用に貢献する明確な道筋を有する研究提案を重視する。
(4)領域目標を達成するには、様々な科学・技術の連携や融合が欠かせない。従って、異なる学術領域の研究者が連携するチームによる挑戦的な計画を期待するが、将来的に異分野連携に発展できる可能性があるものも評価する。
本研究公募にあたっては、材料系、化学系、機械系、電気系、システム系、さらには物理系、数理系など幅広い分野からの研究者が参画する研究チームを歓迎します。ただし、こうした連携、融合を実現するための端緒としては、主として相界面現象や材料機能の微視的詳細を基に高効率化を目指すアプローチ(Scienceアプローチ)、あるいは、具体的な実システム、構造やデバイスを基に高効率化を狙うアプローチ(Engineering Scienceアプローチ)といった二つの道筋があると考え、応募者には主としてどちらのアプローチを採るのかを記載していただきます(注)。両方のアプローチを含んだ取り組みを期待しますが、その場合も応募に関してはどちらかを選んでください。いずれの場合も、広く異分野の研究者が、エネルギー高効率利用を目的に結集し、新たなブレークスルー達成に挑戦していくことを期待しています。
本研究領域の実施においては、以上の学際的な研究推進を実現するために、CREST研究チーム間の連携や共同研究、さきがけ研究者との連携などによる相乗効果を図るため、合同研究会、あるいは合同シンポジウムなど、ダイナミックな運営形態を採用する予定です。
(注)本研究領域に応募される場合は、研究提案書の様式1の「研究課題名」の先頭に、『Scienceアプローチ』の場合は【Sアプローチ】、『Engineering Scienceアプローチ』の場合は【Eアプローチ】と、いずれかを必ず記載して下さい。(SおよびEは、半角英数大文字)
また、e-Radにおいても、「研究開発課題名」の先頭に、いずれかを必ず記載してください。