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戦略的創造推進事業CREST研究領域 > ナノ界面

研究領域

戦略目標

研究領域名

ナノ界面技術の基盤構築
研究領域HP

研究総括

新海 征治(崇城大学 教授/九州大学 工学部ナノサイエンス学科 名誉教授)

研究領域

 本研究領域は、異種材料・異種物質状態間の界面をナノスケールの視点で扱う研究分野が集結することによりナノ界面機能に関する横断的な知識を獲得するとともに、これを基盤としたナノレベルでの理論解析や構造制御により飛躍的な高機能を有する革新的材料、デバイス、技術の創出を目指すものです。
 具体的な研究対象としては、エレクトロニクス、エネルギー変換用デバイスにおける有機材料と金属・半導体などとの界面、環境浄化触媒や機能制御膜などにおける表面・界面、ナノバイオ医療用の生体材料と人工物との界面などが対象となります。さらには、物質・材料の生成プロセスを利用した、または、ソフト構造体を鋳型とした無機系物質のナノ構造体の創製なども機能界面の利用という視点で研究対象に含まれます。また、ナノスケール材料の生体安全性に関する知見の蓄積、例えば、ナノ粒子の細胞膜上での挙動なども主要な研究の方向性の一つです。

平成20年度採択分  中間評価

研究課題
界面ナノ細孔での液体の巨視的物性の解明
研究代表者(所属)
一ノ瀬 泉 ((独)物質・材料研究機構 ナノ有機センター センター長 )
概要
ナノ細孔は、内部のガスや液体に特異な熱力学的状態を与えます。細孔内での液体の沸点や凝固点は、温度や圧力などを変数として取り扱うことができます。しかし、密度や粘度、拡散係数などの巨視的物性の取り扱いは、学理としての体系化が遅れています。本研究では、分子シミュレーションや最新の構造解析技術を駆使することで、界面ナノ細孔での液体の流体力学的特性を解明し、革新的な膜分離技術を開発することを目指します。
研究課題
水素活性化アクア触媒界面による常温・常圧エネルギー変換
研究代表者(所属)
小江 誠司 (九州大学 大学院工学研究院 教授)
概要
常温・常圧で水素をプロトンと電子に変換する酵素であるヒドロゲナーゼを範として合成した「水素活性化アクア触媒」の界面を利用した、ナノレベルでの水素駆動型常温・常圧エネルギー変換を行います。具体的には、水素活性化アクア触媒の界面で水素から抽出した電子を利用する(1)常温・常圧燃料電池の開発、(2)水素から光へのエネルギー変換の開発、(3)環境調和型の水中・常温・常圧での酸化還元反応の開発を目指します。
研究課題
表面力測定によるナノ界面技術の基盤構築
研究代表者(所属)
栗原 和枝 (東北大学原子分子材料科学高等研究機構 教授)
概要
研究代表者が開発したツインパス型表面力装置と共振ずり測定法を中心手段として、機能デバイス設計や反応場として重要な固−液界面の特性・機能を、分子レベルで解明・制御する新規ナノ界面技術の基盤形成を目的とします。特に、界面の液体をも機能分子として捉え、装置開発など新規アプローチを創製し、(1)金属も含む機能界面の特性評価、(2)束縛液体の特性、光反応機能の解明、(3)界面の高次階層機能構造制御などの研究を行います。
研究課題
DDS粒子のナノ界面と鳥インフルエンザワクチン等への応用
研究代表者(所属)
櫻井 和朗 (北九州市立大学国際環境工学部 教授)
概要
薬物運搬システム(DDS)に使われるナノ粒子の機能は、親水層と疎水層のナノ界面を通した未知の相互作用に支配されています。次世代のDDSナノ粒子に関して、粒子の内部構造、粒子内の疎水/親水界面における薬物の挙動と形態、生体膜との融合挙動を、放射光を用いて精密に解明します。この結果を利用して、パンデミックフルーのワクチンを提案するとともに、遺伝子デリバリーやタンパク質製剤の分野に新しいDDS技術を提供します。
研究課題
量子界面制御による量子ナノデバイスの実現
研究代表者(所属)
松本 和彦 (大阪大学産業科学研究所 教授 )
概要
本研究では、量子細線を利用し、ナノ構造の真の特長を生かした基礎デバイスとして、カーボンナノチューブ/金属電極の量子界面を制御し、電子の粒子性と波動性を自在に制御する量子ナノデバイスを実現します。また実用化デバイスとして、量子細線の周辺に同心円状に2層絶縁膜を形成し、同心円構造による電界集中を利用して、従来の平面構造メモリの〜1/10の低電圧で動作する量子細線ナノメモリを実現します。

平成19年度採択分 年報 中間評価

研究課題
巨大Rashba効果によるスピン偏極電流
研究代表者(所属)
有賀 哲也  (京都大学 大学院理学研究科 教授)
概要
代表者らは、最近、従来の記録を1桁近く上回る巨大Rashba効果を見いだしました。この効果を利用すると、界面を動き回る電子について、外部磁場や磁性体をいっさい用いずに、スピン状態に応じて運動を制御することが可能になります。本研究では、重元素修飾した半導体表面の巨大Rashba効果を利用することにより、特定のスピン状態の電子のみの電流を作り出したり、電子のスピン状態を識別したりする方法を開拓します。
研究課題
自己組織化に基づくナノインターフェースの統合構築技術
研究代表者(所属)
君塚 信夫 (九州大学 大学院工学研究院 教授)
概要
金属イオンや金属錯体を含む様々な構築素子の自己組織化を利用して、新しいナノ界面構造(0次元、1次元、2次元、3次元)を自在に構築し、それらの界面の構造的特徴を最大限に活かして新機能の創製に結びつける「新しいナノ界面構造ならびに電子機能の統合制御技術」を開発します。その応用分野として、分子メモリ、ナノ誘電体薄膜やセンサー、医療ナノ材料などを含む革新的な自己組織性ナノマテリアルの創製を目指します。
研究課題
ナノギャップ電極/ナノ量子系接合による新機能の創出
研究代表者(所属)
平川 一彦 (東京大学 生産技術研究所 教授)
概要
単一分子や量子ドットなどナノ量子系の状態を金属電極により電気的に制御・読み出すことができれば、演算や記憶を司る情報処理デバイスに革新をもたらすことができます。本研究では、精密に構造制御したナノギャップ電極により単一分子、InAs量子ドット、グラフェンへの接合を作製し、金属接合を介した1電子の注入と金属/ナノ量子系接合が発現する新規な物理現象の解明とその高機能デバイスへの展開について研究を行います。
研究課題
自己組織化有限ナノ界面の化学
研究代表者(所属)
藤田 誠 (東京大学 大学院工学系研究科 教授)
概要
本研究では、自己組織化により定量的に生成するナノスケール中空球状錯体の表面および内面を「一義構造の有限ナノ界面」と捉え、明瞭な構造を持った巨大分子上で有限系の表面化学と内面化学を展開します。具体的には、(1)有限界面を分子設計に基づいて精密構築します。(2)界面の特性に基づく新機能や新反応を溶液状態で発現させます。(3)有限界面での現象を溶液・結晶化学手法で解析し、界面現象の本質の解明や有用物質の創製を達成します。
研究課題
分子運動操作を基盤とした多次元的バイオ界面
研究代表者(所属)
由井 伸彦 (東京医科歯科大学 生体材料工学研究所 教授)
概要
生体内埋込型医療デバイスと生体との理想的な界面の創製を目指して、材料を構成する分子の運動をナノメーターレベルの分子間力をもとにして操作し、それを基盤とした多次元的バイオ界面構築によって生体の階層的応答を支配します。これにより最終的には、材料−細胞界面における機能を永続的に発現して生体と共存可能なバイオ界面を創製します。

平成18年度採択分 年報 中間評価

研究課題
有機シリカハイブリッド材料のナノ構造制御と機能創出
研究代表者(所属)
稲垣 伸二 ((株)豊田中央研究所 稲垣特別研究室 室長/シニアフェロー)
概要
有機物と無機物が分子レベルで複合化した有機シリカ材料のナノ構造制御により、光合成をお手本とした光エネルギー変換材料の創製等の機能創出を行う。安定性が低くナノ構造制御が難しい従来の有機系の材料の欠点を、無機物との複合化により克服します。すでに、規則的なナノ空間を形成した安定な有機シリカ材料の合成に成功しており、太陽光を利用した二酸化炭素の固定や高効率な分子認識材料への応用を目指します。
研究課題
超高輝度放射光機能界面解析・制御ステーション
研究代表者(所属)
尾嶋 正治 (東京大学大学院 工学系研究科 教授)
概要
新しいナノ領域界面構造を利用したナノデバイスの開発を可能にするため、長尺アンジュレータ超高輝度放射光ビームラインにおいて、高い分解能で機能界面を解析し、界面制御・設計を行うステーションを開発します。具体的には、1)三次元分布解析法、2)ナノ領域分光法、3)サブミクロン軟X線発光分光法、4)軟X線ホログラフィによる界面動的観察、を体系的に進めます。
研究課題
酸化物・有機分子の界面科学とデバイス学理の構築
研究代表者(所属)
川崎 雅司 (東京大学大学院工学系研究科 教授)
概要
酸化物半導体・強相関酸化物・有機分子などで構成される2次元界面を対象に、異種物質の電子状態をつなぎ合わせて電荷を注入し、自己形成する絶縁層を介した電界効果で電荷を蓄積する新手法を開発します。これらの界面における電子・磁気・光機能を雛形デバイスとして実証し、エレクトロニクス材料としての基礎を構築します。
研究課題
錯体プロトニクスの創成と集積機能ナノ界面システムの開発
研究代表者(所属)
北川 宏 (京都大学大学院 理学研究科 教授)
概要
金属イオンを有機配位子で架橋した金属錯体を基盤材料として、水素分離、水素吸着・乖離、水素酸化、プロトン伝導などが関わる新しい学術分野「錯体プロトニクス」の創成により、水素ガス輸送、超高速電子・プロトン輸送、超効率物質変換などの各素機能を薄層集積化した界面システムの開発を推進します。近未来技術として想定される、全錯体型燃料電池や白金フリーな電極触媒、プロトン電池デバイスなどへの発展を目指します。
研究課題
異種物質との接合を利用した金クラスター触媒の機能設計
研究代表者(所属)
春田 正毅 (首都大学東京 大学院 都市環境科学研究科 教授)
概要
金は化学的に不活性な金属であるが、直径2nm、原子数300個以内のクラスターになると、その化学的性質が劇的に変化します。このような金クラスターを種々の卑金属酸化物、炭素(豊富なナノ構造を有する)、高分子(ソフトマテリアル)と接合することにより、その物性をさらに広範に飛躍的に変化させ、環境に優しい化学プロセスを生み出す新規触媒の探求を行います。
(*研究者の所属は2011年4月現在のものです)