脳の機能発達と学習メカニズムの解明

戦略目標

教育における課題を踏まえた、人の生涯に亘る学習メカニズムの脳科学等による解明」(PDF:23KB)

研究総括

津本 忠治((独)理化学研究所 脳科学総合研究センター グループディレクター)

概要

 本研究領域は、脳を育み、ヒトの一生を通しての学習を促進するという視点に、社会的な観点も融合した新たな視点から、健康で活力にあふれた脳を発達、成長させ、さらに維持するメカニズムの解明をめざす研究を対象とするものです。
 具体的には、感覚・運動・認知・行動系を含めた学習に関与する脳機能や言語などヒトに特有な高次脳機能の発達メカニズムの解明、及びそれらの臨界期(感 受性期)の有無や時期の解明、発達脳における神経回路網可塑性に関する研究、高次脳機能発達における遺伝因子と環境因子の相互作用の解明、健やかな脳機能 の保持を目指した研究、精神・神経の障害の機序解明と機能回復方法の研究、社会的な環境の変化が脳機能に及ぼす影響に関する研究等が含まれます。

平成17年度採択分

応用行動分析による発達促進のメカニズムの解明

研究代表者(所属)
北澤 茂 (順天堂大学 医学部 教授)
概要
自閉症に対して、応用行動分析を用いて早期集中介入を行うと、通常の社会生活ができる迄に「回復」する症 例が報告され、注目を集めています。本研究では、応用行動分析による自閉症治療法を脳科学的に検証する一方、同じ手法を適用したサルに生理学的研究を行 い、応用行動分析による発達促進の脳内メカニズム解明を目指します。その成果は、自閉症の効果的な治療法、更にはより一般的な発達障害予防法の開発に繋が ることが期待されます。
 

ドーパミンによる行動の発達と発現の制御機構

研究代表者(所属)
小林 和人 (福島県立医科大学 医学部附属生体情報伝達研究所 教授)
概要
ドーパミン神経系は、行動の学習や発達にきわめて重要な役割を果たしていますが、その脳内機構については 未だ明らかになっていません。本研究課題では、広くげっ歯類から霊長類までを対象にした総合的研究をとおして、ドーパミンによる脳機能発達と行動制御の仕 組みを解明することを目指します。本研究の成果は、現在深刻な社会問題となっている統合失調症や注意欠陥多動性障害など、ドーパミン神経系の異常に起因す ると考えられる発達障害の機構解明に貢献できると期待されます。
 

大脳皮質視覚連合野の機能構築とその生後発達

研究代表者(所属)
藤田 一郎 (大阪大学大学院 生命機能研究科 教授)
概要
ヒトを含む霊長類の大脳皮質連合野は、種々の高次脳機能において重要な役割を果たしていますが、その生後 発達過程はほとんど解明されていません。本研究では、霊長類の視覚連合野において、高次情報処理機能がどのような神経回路によって担われているのか、また これらの神経回路機能が、生後どのように発達するのかの解明を目指します。その成果は、高次脳機能の発達や学習に伴う変化のメカニズム解明に貢献すること が期待できます。
 

脳発達を支える母子間バイオコミュニケーション

研究代表者(所属)
和田 圭司 (国立精神・神経センター 神経研究所 部長)
概要
本研究では、母体由来の生理活性物質を介した母子間のコミュニケーションが胎児・乳児の脳に作用してその 健やかな発達を促し、生後の適正な行動の獲得などに寄与するという新しい視点に立って、母子間の物質的コミュニケーションの存在を動物・ヒトで実証し、さ らに母体側因子の変動が子供の脳発達に与える影響を解明することを目指します。これらの成果は、脳発達障害の病因の解明やその予防法の開発に繋がることが 期待されます。
 

平成16年度採択分

神経回路網における損傷後の機能代償機構

研究代表者(所属)
伊佐 正 (自然科学研究機構 生理学研究所 教授)
概要
神経回路が損傷を受けた場合、残存する回路により機能代償が行われることは経験的に知られていますが、そ のメカニズムは不明です。本研究では、霊長類モデルを用いて、脊髄において錐体路の損傷後に生ずる手指の運動機能回復及び大脳一次視覚野の破壊後に残存す る視覚機能の回復について、遺伝子からシステムレベルまで解析を行い、その機能的・物質的基盤の解明を目指します。これらの成果はリハビリテーションにお いて新しい方策の開発に繋がるものと期待されます。
 

ニューロン新生の分子基盤と精神機能への影響の解明

研究代表者(所属)
大隅 典子 (東北大学大学院 医学系研究科 教授)
概要
本研究では、胎児期から成人に至る脳の発生・発達過程におけるニューロンの新生に影響を与える遺伝的因子 及び環境因子を、分子・細胞レベルから個体レベルまで階層的に解明することを目指します。また、その成果を統合失調症などの精神疾患の遺伝学的情報と統合 し、ニューロン新生と精神疾患との関連について解析します。これらの研究によって、脳の健やかな発達に必要な遺伝的・環境的因子が明らかになることが期待 されます。
 

発達期および障害回復期における神経回路の再編成機構

研究代表者(所属)
鍋倉 淳一 (自然科学研究機構 生理学研究所 教授)
概要
損傷後の回復期において機能的神経回路の広範な再編成が生じます。この過程は発達期における回路網の再編 成と類似するものがあります。本研究では、発達期における再編成のメカニズムの理解を更に深めるとともに、急性脳障害後の機能回復期におこる回路再編成機 構を明らかにすることを目指します。さらに、成熟脳損傷後の回復過程に臨界期があるのかモデル動物とヒトにおいて検証します。これによって脳障害後の健や かな脳機能回復のための方策に繋がることが期待されます。
 

情動発達とその障害発症機構の解明

研究代表者(所属)
西条 寿夫 (富山大学 大学院医学薬学研究部システム情動科学 教授)
概要
情動はヒトの行動に強い影響を及ぼし、またその異常は深刻な社会問題となっていますが、情動発達の脳内機 構についてはほとんど解明されていません。本研究では、情動の発達及びその障害発症機構を、基礎医学と臨床医学の両面から、遺伝子、分子、細胞及び行動レ ベルで総合的に解明することを目指します。その結果、情動の脳内メカニズムの理解が進み、さらに情動障害の発症機構の解明やその治療法の開発に繋がること が期待されます。
 

臨界期機構の脳内イメージングによる解析と統合的解明

研究代表者(所属)
ヘンシュ 貴雄 ((独)理化学研究所 脳科学総合研究センター チームリーダー)
概要
発達脳における学習のメカニズムを理解するためには、発達期神経回路網の可塑性に関する知識、脳の種々の 機能発達における臨界期(感受性期)の正確な理解と臨界期が終了するメカニズムの解明が必要です。本研究では新しい方法を使い、生きている脳で臨界期の終 了過程に生じる神経回路の再編成過程を可視化することを目指します。これによって、発達脳の学習メカニズム、さらには成人における学習促進方策の解明が期 待されます。
 

平成15年度採択分

言語の脳機能に基づく獲得メカニズムの解明

研究代表者(所属)
酒井 邦嘉 (東京大学大学院 総合文化研究科 准教授)
概要
本研究では、言語の脳機能に焦点を当て、言語獲得のメカニズムの解明を行います。第一に母語と第二言語の 獲得メカニズムの解明、第二に脳機能に基づく言語獲得の感受性期と、獲得過程における遺伝因子と環境因子の相互作用の解明、第三に言語教育による脳の可塑 性の可視化を行います。これにより、精神疾患の発症機構の解明と、脳機能に基づく適切な教育方法の提案を行い、脳科学の成果を広く教育へ応用することを目 指します。
 

高齢脳の学習能力と可塑性のBMI法による解明

研究代表者(所属)
櫻井 芳雄 (京都大学大学院 文学研究科 教授)
概要
行動を制御する覚醒脳のレベルでは、高齢脳の学習能力と可塑性の実態は未だ不明です。そこで本研究は、高 齢脳が本来備えている学習能力と可塑性を引き出し明らかにすることを目指します。そのため、脳の神経活動が機械を直接操作するBMI(Brain- MachineInterface)を構築し、高齢個体の衰えた運動出力系を機械出力系に置き換えることにより、研究を行います。本研究の成果は、高齢化 社会における教育の意義や、脳の機能回復を目指すリハビリテーション医学に新たな視点を与えるものと期待されます。
 

幼児脳の発達過程における学習の性質とその重要性の解明

研究代表者(所属)
杉田 陽一 ((独)産業技術総合研究所 脳神経情報研究部門 グループリーダー)
概要
本研究では、幼児期の学習の性質及びその重要性の神経学的基盤の解明を目指します。視覚体験の効果を明ら かにするために、実験動物の幼児期に特殊な視覚体験をさせて、その後の発達経過を心理学的方法で検討します。また、視覚体験の効果を生理心理学的に解明す るために、単一細胞活動記録及び組織学的方法で線維投射様式を明らかにします。これらの成果は、生物学的な基盤に立った教育システムの開発に多くを資する ことが期待されます。
 

乳児における発達脳科学研究

研究代表者(所属)
多賀 厳太郎 (東京大学大学院 教育学研究科 准教授)
概要
ヒトの乳児期初期の行動の発達と脳の発達との関係は、まだほとんど解明されていません。本研究は、乳児期 初期の大脳皮質の機能的発達と、記憶と行動の発達の機構を明らかにすることを目指します。そのために、乳児の異種感覚統合、言語知覚、運動による外界との 相互作用、記憶の発達に焦点を当てた行動計測及び脳機能計測の研究を進めます。これによって、動的システム論を拡張した発達脳科学理論を構築し、科学的な 知見に基づく新しい発達観の創造が期待されます。
 

コミュニケーション機能の発達における「身体性」の役割

研究代表者(所属)
中村 克樹 (国立精神・神経センター 神経研究所 部長)
概要
本研究では、コミュニケーション機能の発達における「身体性」に焦点を当て、脳機能画像研究、臨床神経心 理学研究、認知心理学研究、神経生理学研究、神経生物学研究、行動科学研究、情報工学研究を組み合わせ、その発達メカニズムの解明を目指します。これによ り、子供のコミュニケーション障害の理解が深まることが期待されます。また、コミュニケーションの発達支援のプログラム開発や、障害児を対象としたリハビ リテーション研究に発展させ、高次機能障害の霊長類モデルの作成を試みます。
 

小脳による学習機構についての包括的研究

研究代表者(所属)
平野 丈夫 (京都大学大学院 理学研究科 教授)
概要
本研究では、小脳シナプス可塑性について、発現・維持・制御の分子機構、また、各シナプス可塑性の神経回 路活動への作用、個体の学習・行動に与える影響を解明することを目指します。分子・細胞レベル、組織・個体レベルの双方から研究を進め、包括的な理解を得 ることを図ります。これにより、小脳による学習機構の解明が進み、ヒトの学習障害の克服や学習方法の改善・改良にとって有用な知見を提供することが期待で きます。

 

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