[糖鎖] 糖鎖の生物機能の解明と利用技術

戦略目標

がんやウィルス感染症に対して有効な革新的医薬品開発の実現のための糖鎖機能の解明と利用技術の確立」(PDF:24KB)

研究総括

谷口 直之(大阪大学微生物病研究所 寄附研究部門 教授/(独)理化学研究所 基幹研究所ケミカルバイオロジー研究領域システム糖鎖生物学研究グループ グループデイレクター)

概要

 本研究領域は、糖タンパク質、糖脂質、プロテオグリカンといった生体分子群の有する糖鎖の新たな生物機能を解明し、その利用技術を探索するための研究を対象とするものです。
 具体的には、脳神経機能、形態形成、分化における糖鎖の役割と制御のメカニズム等の新しい機能の解明や応用の可能性を開拓する研究、糖鎖の改変によるガ ンの浸潤転移の制御や感染防止、免疫機能制御の手法探索等の診断、治療、予防への応用を指向する研究、あるいは、糖鎖研究に広く用いられることが期待され る糖鎖の超微量解析技術、情報伝達のダイナミックな状況を可視化する技術の実現を目指す研究等が含まれます。

平成16年度採択分

糖鎖の動態-機能相関への統合的アプローチ

研究代表者(所属)
木下 タロウ (大阪大学 免疫学フロンティア研究センター 教授/大阪大学 微生物病研究所 教授)
概要
糖鎖は、生体内で構造が次々と変化し、構造の変化は、糖鎖の局在場所と連動しています。また、糖鎖には細 胞の膜の特定領域に濃縮されるものも多い。これら構造変化、局在部位の変化、存在様態を合わせた「糖鎖の動態」は「糖鎖の機能発現」と密接に連関していま す。本研究では、動態と機能の相関の総合的理解を深め、動態の変調が機能に及ぼす影響を解明します。さらに、糖鎖の制御を通した、生体機能や疾患の制御法 開発への展開を図ります。
 

糖鎖シグナルによる獲得免疫応答制御の解明と疾患制御への応用

研究代表者(所属)
鍔田 武志 (東京医科歯科大学大学院 疾患生命科学研究部 教授)
概要
糖鎖がどのようにして、生体が異物に反応した場合の抗体応答がおこるかおこらないかを決定したり、迅速大 量の抗体応答をおこすかを明らかにします。さらに、糖鎖複合体を用いて、抗体産出を迅速にする方法を開発したり、抗原特異的に抗体応答を調節する方法を開 発し、ユニバーサルワクチンともいえる感染防御を改善する糖鎖医薬品や、アレルギーや自己免疫疾患を治療する画期的な糖鎖医薬品の開発を目指します。
 

糖修飾システムによる神経機能の発現・制御

研究代表者(所属)
平林 義雄 ((独)理化学研究所 脳科学総合研究センター チームリーダー)
概要
神経に特徴的に存在しているスフィンゴ糖脂質は、神経の発生や生存に決定的役割を演じていることが明らか にされてきましたが、その分子機構は依然として大きな謎に包まれています。最近、私達は脳から今まで知られていなかった複数の新しい糖脂質を発見しまし た。本研究では、こうした糖脂質の神経系での生理機能とその発現機構、およびグリア細胞による代謝制御機能を明らかにし、最終的に神経変性疾患の予防・治 療への新たな基盤を提供します。
 

病態における膜マイクロドメイン糖鎖機能の解明

研究代表者(所属)
本家 孝一 (高知大学教育研究部 副学長・教授)
概要
細胞膜には、それぞれ特異的な糖脂質や糖タンパク質が会合した機能的に異なる膜マイクロドメイン構造が存 在しており、細胞接着やシグナル伝達のプラットフォームを提供しています。本研究は、膜マイクロドメインに対する抗体の作製やマイクロドメイン指向性プ ローブの開発を通して膜マイクロドメインの可視化を行い、発生・分化、癌、ウイルス感染、免疫における膜マイクロドメイン機能に関わる糖鎖の役割を解明し ます。
 

平成15年度採択分

糖鎖機能を利用した組換えリソソーム酵素の脳内補充療法の開発

研究代表者(所属)
伊藤 孝司 (徳島大学大学院 ヘルスバイオサイエンス研究部 教授)
概要
従来、難治性疾患とされてきたリソソーム酵素欠損症(リソソーム病)に対し、近年組換え酵素補充療法の実 用化が進められています。本研究では、バイオインフォーマティクスを利用し、中枢神経障害を伴うリソソーム病の根本治療法の確立を目指します。また酵母変 異株を用いて大量発現したヒト型様糖鎖含有組換え酵素の中枢神経系細胞への導入法と、脳標的化技術を利用した末梢血管からの低侵襲的な脳内酵素補充療法の 開発を行います。
 

マイクロドメイン機能異常にもとづく2型糖尿病の病態解明

研究代表者(所属)
井ノ口 仁一 (東北薬科大学 分子生体膜研究所 教授)
概要
「2型糖尿病などの生活慣習病の病態は、スフィンゴ糖脂質の異常発現によって細胞膜(マイクロドメイン) の構成・構造および機能が変化し、シグナル伝達が異常になったマイクロドメイン病である」という作業仮説を検証し、新たな分子病態像を解明します。また糖 脂質関連遺伝子を検出するDNAアレイによる疾患別データベースの構築および診断法を開発します。さらには、これらの情報を統合したマイクロドメイン矯正 療法ともいえる新規治療法の開発を推進します。
 

担癌状態におけるムチンを介した免疫能の変化の解析と応用

研究代表者(所属)
中田 博 (京都産業大学 大学院長/同工学部 教授)
概要
上皮性癌の産出するムチンが癌組織や血液中において様々な免疫細胞に作用し、免疫能力の低下のみならず結 果的に腫瘍増殖に関与していることが示唆されました。本研究では単球/マクロファージに存在するスカベンジャー受容体や、様々な免疫細胞に存在するシグ レックファミリーに対するムチンの結合部位や情報伝達を解析し、最終的には抗腫瘍薬あるいは免疫制御薬などの創薬を目指します。
 

遺伝子破壊による糖鎖機能の戦略的解明

研究代表者(所属)
野村 一也 (九州大学大学院 理学研究院生物科学部門 准教授)
概要
線虫はヒトの糖鎖関連遺伝子の解析に極めて適したモデル生物です。ヒトの糖鎖形成に関与している様々な遺 伝子と同様な遺伝子を線虫で選び出し、その遺伝子機能をRNA干渉(RNAi)法と突然変異体の分離によって網羅的に解析し、その機能と遺伝子ネットワー クを完全に解明することを目標とします。さらにヒト遺伝子を導入した線虫や、ヒト細胞や移植癌での遺伝子機能を種々の方法で解析し、ヒトの疾患解析や創薬 ターゲット探索に結びつけます。
 

がんや糖尿病等におけるシアリダーゼ異常の機構解明と制御

研究代表者(所属)
宮城 妙子 (宮城県立がんセンター研究所 所長・生化学部長)
概要
従来からシアル酸と癌の深い関連性が指摘されてきました。この実体解明のため、糖鎖シアル酸量を調節して いるシアリダーゼの癌性変化を調べた結果、形質膜局在型シアリダーゼ(NEU3)が各種ヒト癌で異常に亢進していること、さらに、この遺伝子導入マウスに 糖尿病が発症することがわかりました。本研究では、癌や糖尿病等におけるシアリダーゼ異常発現の機構・意義について解析を進め、その制御法を探索し、本遺 伝子をターゲットとした新しい診断・治療法の開発を目指します。
 

糖鎖構造特異的単鎖抗体ライブラリーの構築

研究代表者(所属)
山口 陽子 (東海大学 工学部(糖鎖工学研究施設) 教授)
概要
糖鎖構造の高効率かつ高精度な解析に求められるのは、天然に存在する各種糖鎖の抗原決定基を特異的に検出 できるシステムの構築です。本研究は、従来のレクチンを利用する糖鎖構造の解析とは全く異なり、ファージディスプレイ法を活用して、各種糖鎖に特異的かつ 高親和性で結合する単鎖抗体を数多く単離し、糖鎖構造特異的単鎖抗体ライブラリーの構築を目指します。得られた単鎖抗体は抗原性や毒性もないので、診断法 や治療法への応用も期待されます。
 

平成14年度採択分

糖タンパク質の品質管理における糖鎖機能の解明

研究代表者(所属)
伊藤 幸成 ((独)理化学研究所 伊藤細胞制御化学研究室 主任研究員)
概要
タンパク質が正常な機能を発現する上で、正しい立体構造の獲得と細胞内輸送が必要不可欠です。これらを司 る細胞内タンパク質品質管理機構の解明は、ポストゲノム時代の重要な課題であるのみならず、プリオン病やアルツハイマー病との関連においても注目を集めて います。本研究は、糖鎖及び糖タンパク質の精密合成、細胞内レクチン/シャペロンと糖鎖との相互作用解析を分子生物学、細胞生物学的手法と組み合わせて、 タンパク質品質管理機構における糖鎖の役割を分子レベルで理解することを目指します。
 

癌の進展における細胞接着性機能糖鎖の解明

研究代表者(所属)
神奈木 玲児 (愛知県がんセンター研究所 分子病態学部 部長)
概要
糖鎖が機能性分子としてがんの進展で主役を演じる局面を解明し、新利用技術を開発してがんの診断・治療に 展開応用します。糖鎖の機能には細胞識別機能とシグナル分子機能の二つがあります。セレクチンと糖鎖リガンドを介したがん細胞の接着においては糖鎖の細胞 識別・接着機能が良く発揮されており、がん細胞のCD44-ヒアルロン酸シグナル伝達系においては糖鎖のシグナル分子としての機能が良く発揮されているの で、この両者のがん進展との関わりを研究します。
 

感染と共生を制御する糖鎖医薬品の基盤研究

研究代表者(所属)
木曽 真 (岐阜大学 応用生物科学部 教授)
概要
ウイルスや病原性細菌の感染および細菌毒素の侵入は、多くの場合、宿主細胞が持つ糖鎖への付着により開始 されます。また有用な腸内細菌が体内に止まるための足場も糖鎖複合体です。本研究では、これら糖鎖を介した相互作用の制御を目的として、化学合成法と酵素 合成法を駆使することにより、天然型や非天然型の様々な糖鎖複合体を創製します。さらに感染症の抑制あるいは有益な共生の促進効果を持つ糖鎖医薬品の開発 を目指します。
 

糖鎖構造の制御によるがん及びウイルス疾患の予防法及び治療法の開発

研究代表者(所属)
小山 信人 (タカラバイオ(株)臨床開発部 部長)
概要
糖転移酵素であるGnT-III遺伝子を大量に発現させたり、GnT-VやFUT8の遺伝子発現を抑制し たりすることにより、がんの転移や増殖が抑えられることが知られています。本研究ではそれらのメカニズムを解明してがん治療法の開発につなげるとともに、 GnT-IIIやGnT-V遺伝子の発現を制御する物質を発見し、医薬品や健康食品としての利用を目指します。さらに、糖鎖構造の違いに基づいた新しいが ん診断法の可能性を探ります。
 

ウイルス感染における糖鎖機能の解明と創薬への応用

研究代表者(所属)
鈴木 康夫 (中部大学 生命健康科学部 教授)
概要
変異しやすいウイルスの新興・再興、高齢化社会におけるウイルス感染症の拡大、地球温暖化による熱帯ウイ ルス感染症の拡大は、今世紀の重要問題です。本研究では、「糖鎖ウイルス学」の観点から、糖鎖機能によるウイルス感染症の克服研究を遂行します。ウイルス 感染過程における糖鎖の役割を解明し、創薬へと結びつけます。インフルエンザウイルス、HIV、デング、パラインフルエンザウイルス等の重要ウイルスを研 究対象とします。
 

RNAi法による糖鎖機能解明と利用技術の開発

研究代表者(所属)
西原 祥子 (創価大学 工学部 教授)
概要
ショウジョウバエをモデル系としてヒトの基本的糖鎖の生理機能を解析します。ハエでは誘導型RNAi変異 体システムが新規に開発されており、多数の遺伝子を短時間に解析することができます。また、ヒトの糖鎖関連遺伝子の6割がハエで保存されており、基本的糖 鎖の機能解明が可能です。ハエの結果を基にヒトや哺乳類培養細胞系で解析し、RNAi技術を含む研究成果をヒトの遺伝病や癌、感染症などの解析や治療へ応 用する事を目指します。

 

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