[ゲノム] ゲノムの構造と機能

戦略目標

分子レベルの新機能発現を通じた技術革新」(PDF:13KB)

研究総括

大石 道夫 ((財)かずさDNA研究所 所長)

概要

 現在急速に発展しつつある各種生物のゲノムの構造とその機能に関する研究を対象とするものです。
 具体的には、種々のゲノムの構造解析、ゲノム解析技術、ゲノム機能の分子生物学的研究、ゲノム研究に関連した遺伝子やタンパク質の研究、それらの研究成果に基づく細胞の機能発現に関する研究等が含まれます。

平成12年度採択分

高等真核細胞で標的組み換えの効率を上昇させる方法の開発

研究代表者(所属)
武田 俊一 (京都大学 大学院 医学研究科 教授)
概要
高等真核細胞でDT40細胞を含むニワトリBリンパ細胞株だけがランダムインテグレーションに対して標的 組み換えを高頻度でおこします。そこで、なぜニワトリBリンパ細胞株でのみ標的組み換えが効率良く起こるのかの解明を図り、さらに、その性質のヒトや植物 細胞への移植を試みました。本研究により、遺伝子治療、品種改良、遺伝子ノックアウトが容易になると考えられます。

klothoマウスをモデルとしたゲノム機能の体系的研究

研究代表者(所属)
鍋島 陽一 (京都大学 大学院 医学研究科 教授)
概要
老化疾患の優れたモデル実験系であるklothoマウスを用いて、個体老化に関わる遺伝子群の体系的解 析、老化疾患の成立に関連する遺伝子素因の解析、遺伝子多型の解析、更に個体レベルの新たな遺伝子機能解析技術の開発に関する研究を行い、ゲノム研究の新 たな方法論の開発と老化の分子機構、老化疾患の分子病態の解明を目指します。

染色体転座・微細欠失からの疾病遺伝子の単離と解析

研究代表者(所属)
新川 詔夫 (長崎大学 大学院 医歯薬学総合研究科 教授)
概要
単一遺伝子疾患と染色体転座を合わせもつ患者では、転座によって遺伝子断裂が起き遺伝子病が発症すると考 えられるため、疾病遺伝子の同定や単離の絶好の材料であると認識されています。一方、染色体の微細な欠失を伴う(と考えられる)患者が多数存在し、そのう ち一定の臨床像を伴うものは微細欠失(または隣接遺伝子)症候群と呼ばれ、数個の遺伝子が欠失しているとの共通認識があります。この研究では、このような 症例を全国規模でかつ組織的に集積し、転座切断点および微細欠失領域から、Sotos症候群、Marfan症候群2型を始め多くの疾病遺伝子の単離・同定 を行いました。

クラスター型カドヘリンのゲノム構造・機能の解析

研究代表者(所属)
八木 健 (大阪大学 大学院 生命機能研究科 教授)
概要
シナプスに局在するCNRファミリーは、多様化した新規カドヘリンでありゲノム上で遺伝子クラスターを形 成しています。この研究ではCNRを含むクラスター型カドヘリンの、神経細胞分化にともなうゲノム構造変化、個々の神経細胞での遺伝子発現、分子機能の解 析を行いました。その結果、神経細胞での新たな遺伝子発現制御、神経回路網形成での新たな分子機構を明らかにしました。また、クラスター型カドヘリンや関 連遺伝子のゲノム構造を網羅的に解析し、ゲノム構造とヒト精神神経疾患との関係を解析しました。今後は、治療応用への可能性が期待できます。

平成11年度採択分

p53によるゲノム防御機構

研究代表者(所属)
田矢 洋一 (国立がんセンター研究所放射線研究部 部長)
概要
p53は細胞のDNAがダメージを受けた時など、さまざまなストレスによって安定化されて活性な転写因子 となり、ある場合には細胞をG1期に増殖停止させるが、別の場合にはアポトーシスを誘導して細胞を自殺させる。このアポトーシス誘導にp53のSer46 のリン酸化が関与するらしいことを見出した。さらに、エンドサイトーシスで重要な役割を演じるクラスリンの重鎖の約5% が核内にも存在していて、p53と結合し、p53の転写活性化能とアポトーシス誘導能に必須の働きをするという全く予想外のことも発見した。

ゲノム情報維持の分子メカニズム

研究代表者(所属)
花岡 文雄 ((独)理化学研究所 細胞生理学研究室 主任研究員)
概要
皮膚がんを高頻度に発症する色素性乾皮症のC群とE群の責任遺伝子産物の複合体(それぞれXPC複合体お よびDDB複合体)は、ゲノム全体のヌクレオチド除去修復機構における損傷認識に働くことが知られている。本研究ではヒト正常繊維芽細胞に紫外線を照射す ると、XPCタンパク質が可逆的にユビキチン化されることを明らかにした。このユビキチン化はDDB複合体の存在に依存しており、少なくとも試験管内では DDB-E3複合体がXPCタンパク質をユビキチン化することを見出した。

ナノチップテクノロジーの創製とゲノム解析への応用

研究代表者(所属)
馬場 嘉信 (名古屋大学 大学院 工学研究科 教授)
概要
本研究では、ナノピラー(直径100-500nm)やナノボール(直径30-100nm)などの新規ナノ 構造体を構築する技術を開発し、ナノ構造体中におけるDNA分子の特異な構造や挙動を発見した。さらに、この特異的な構造や挙動を利用することにより、 DNAの分子量・配列などを高速・高分解能で識別できるナノチップテクノロジーを創成した。ナノチップテクノロジーをゲノム解析に応用することにより、手 のひらサイズのチップで、数万種類のSNPsを数分以内に解析できるシステムの基盤技術を開発した。

ゲノムの安定保持を保証する細胞核構造の解明

研究代表者(所属)
平岡 泰 ((独)情報通信研究機 構関西先端研究センター グループリーダー)
概要
細胞分裂での染色体の正確な複製や分配は細胞機能に重要です。本研究は、ゲノムの安定保持を保証する細胞 核構造を理解することを目的として行い、分裂酵母の蛍光タンパク質のライブラリーやDNAマイクロアレイを作製しました。これらの生物資源と蛍光顕微鏡を 用いた解析から、体細胞分裂と減数分裂の過程でセントロメアやテロメアの構造が変化すること、この変化が次世代へのゲノムの継承に重要であることがわかり ました。

核内因子の局在と修飾に関する化学遺伝学的研究

研究代表者(所属)
吉田 稔 ((独)理化学研究所 化学遺伝学研究室 主任研究員)
概要
分裂酵母全遺伝子産物のクローン化と発現を通じて個々の蛋白質の細胞内局在を全て決定しました(図)。また、全ての遺伝子産物の電気泳動上の位置も決定しました。その情報に基づき、核外移行阻害剤や抗アセチル化リジン抗体によって核外へ輸送される蛋白質やアセチル化される蛋白質を網羅的に同定しました。また、新たな脱アセチル化阻害剤や蛋白質修飾特異的抗体を開発するとともに、動物細胞におけるチューブリン脱アセチル化酵素や動的に核内を移動する転写因子複合体等を発見しました。

平成10年度採択分

哺乳類特異的ゲノム機能

研究代表者(所属)
石野 史敏 (東京医科歯科大学 難治疾患研究所 教授)
概要
ゲノムインプリンティングは哺乳類特異的な遺伝子発現機構である。体細胞クローン技術を用いた生殖細胞系 列での記憶の成立、体細胞系列での片親性発現パターンの成立の分子機構等の総合的な解析の結果、哺乳類の個体発生機構にこれが必須の機能を持つことを証明 した(コンプリメンテーション仮説)。また、哺乳類ゲノム機能の進化にレトロトランスポゾンが重要な役割を果たした証拠となる新規インプリンティング遺伝 子を発見した。

アポトーシスにおけるゲノム構造変化の分子機構

研究代表者(所属)
長田 重一 (大阪大学 大学院 生命機能研究科 教授)
概要
動物の発生の過程では多くの細胞がDNAの分解を伴うアポトーシスで死滅する。一方、赤血球、目のレンズ 細胞では分化過程でDNAが分解され、機能のある細胞になる。本研究ではこれらの過程でのDNA分解に関与している酵素を同定した。そして、これら酵素の 遺伝子を欠損するマウスを樹立し、アポトーシス時のDNAが分解されなければ種々の組織の発生が阻害されること、赤血球の核が分解されなければ貧血になる こと、レンズ細胞のDNAが分解されなければ白内障になることを示した。

組換えを介したゲノム動態制御

研究代表者(所属)
柴田 武彦 ((独)理化学研究所 遺伝生化学研究室 主任研究員)
概要
1.相同組換えに特異的なDNA立体構造(図1)から「ヘテロ二本鎖形成はDNA自身の固有機能である」 という示唆を得、この反応を行う新規の蛋白質群を見付けた。その一つ,Mhr1がmt遺伝の基本「ホモプラスミー」に働くという,組換えの新機能を見付 け、その機構の概要を示した。2.酵母をモデル生物とし、減数分裂期相同組換えを開始するDNA二本鎖切断に働く2階層のクロマチンを介した制御系の諸要 因をほぼ明らかにした。更に、これらの知見に基づく全く新しい原理による高頻度または部位指定相同組換え誘導技術とそれを利用した遺伝的多様化技術を実現 しつつある。

器官形成に関わるゲノム情報の解読

研究代表者(所属)
松原 謙一 ((財)国際高等研究所 学術参与)
概要
マウスの小脳は出生後に起こる脳形成を調べるモデル系である。先ず外顆粒層の細胞が大増殖を起こし、次い で細胞移動、繊維ネットワークと継起し、全体として成熟に到る。この間に起こる遺伝子発現プロファイルの空間的及び時間的変動を小脳全体と微小切り出し試 料についてATAC-PCR法とDNAチップ法ならびにハイスループット形質転換法に依って調査し、その振る舞いと器官形成における細胞群の振る舞いとの 対応関係を検討した。これらの成果をデータベース化して公開し、また、介在する制御機構の解析を試みた。

大腸菌におけるゲノム機能の体系的解析

研究代表者(所属)
森 浩禎 (奈良先端科学技術 大学院 大学遺伝子教育研究センター 教授)
概要
大腸菌は地球上で最も解析の進んだ生物である。これを利用して細胞という生命の基本システムの完全理解へ の研究基盤構築が本研究の目的である。ゲノム構造から予測される全遺伝子のクローンと欠失株のリソース作製を行い、それを基にした細胞内全転写ネットワー ク解明及びタンパク質相互作用地図作製など網羅的な研究を推進した。解析基盤となるバイオインフォマティックスの技術開発も進め、解析結果等はデータベー スとして公開している。

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