[電子・光子] 電子・光子等の機能制御

戦略目標

分子レベルの新機能発現を通じた技術革新」(PDF:13KB)

研究総括

菅野 卓雄 (学校法人 東洋大学 理事長)

概要

 電子や光子等の静的、動的特性を制御することで、新しい機能を発現しうる技術の可能性を探索する研究を対象とするものです。
 具体的には、信号の発生、増幅、処理、変換等の機能を発現させるための物理的、化学的メカニズムや、その実現に向けた技術的可能性の探索を行う研究等が 含まれます。特に、界面を含む物質内部、表面における電子や光子等に関わる量子力学的現象の発見、解明、利用およびその具体化のための材料、構造作成技術 の研究等が含まれます。

平成12年度採択分

固体中へのスピン注入による新機能創製

研究代表者(所属)
鈴木 義茂 (大阪大学 大学院 基礎工学研究科 教授)
概要
エレクトロニクスにおいて電子スピンの自由度をより積極的に利用する技術を確立するために固体中に非平衡 スピンを注入し、その伝搬と相互作用を研究した。具体的には、単結晶トンネル磁気抵抗素子においてスピン依存共鳴トンネリング効果が室温で現れることを実 証、また、ダイナミックにスピン流の注入を実現するスピンポンピング効果を発見した。さらに、純粋なスピン流の注入による磁化反転に成功すると共に、スピ ン注入素子におけるスピントルクダイオード効果を発見した。これら成果は、強磁性体RAM(M-RAM)における新しい情報の書き込み技術を与え、スピン トロニクスに新しい展開をもたらすものと考える。
 

量子暗号の実用化を可能にする光子状態制御技術

研究代表者(所属)
中村 和夫 ((独)物質・材料研究機構 若手国際研究拠点 副センター長)
概要
量子暗号の広範な応用への展開には量子中継などが必要で、このためには量子絡み合いに関する多様な要素技 術の総合的底上げが必須であり、これは量子情報技術全体のレベルアップにも繋がる。本研究ではこれらの要素技術として、量子絡み合い光源、量子状態の制 御・変換技術、さらに検出技術において、多くの世界初やトップクラスの成果を得た。また量子暗号の実用化促進や量子中継を含む将来システムへの発展に繋が る量子暗号システム実証でも長距離伝送など世界トップの成果を得た。
 

フォトニック結晶による究極の光制御と新機能デバイス

研究代表者(所属)
野田 進 (京都大学 大学院 工学研究科 教授)
概要
本プロジェクトでは、様々な人為的欠陥や発光体を含む3次元・2次元フォトニック結晶を開発し、発光や光 伝播に与えるフォトニック結晶効果を明らかにすることを目的とした。その結果、(i)完全3次元結晶を用いた究極の発光制御の可能性の実証、(ii)2次 元フォトニック結晶のバンド端を利用した新しい半導体レーザの実現と高性能化、(iii)2次元フォトニック結晶へ導入した点・線欠陥による光ナノデバイ スの初めての実現、(iv)ヘテロ構造の概念の提唱と世界最大の閉じ込め効果をもつナノ共振器の実現等の世界をリードする成果を挙げることが出来た。
 

強相関電子系ペロブスカイト遷移金属酸化物による光エレクトロニクス

研究代表者(所属)
花村 榮一 (千歳科学技術大学 光科学部 教授)
概要
ペロブスカイト型および関連する構造の遷移金属酸化物結晶では大きな振動子強度が可視域に分布し、強相関 電子系を反映して臨界温度の高い反強磁性、強誘電性、超伝導を示す。強誘電性・磁性体の非線形光学応答で秩序パラメーターの符号やそれらのドメイン構造を 決める事に成功し、磁気的ブロッホ壁と強誘電性壁のからみあいを発見し、その微視的機構を解明した。超短パルスレーザーでラマン活性フォノンモードを共鳴 励起する時に、結晶の動的対称性の破れを発見し、解析した。バンド間励起下での三原色の発光を示す材料、エレクトロルミネッセンス、カソードルミネッセン ス、レーザー材料を開拓した。超伝導-超放射の理論を提示した。
 

平成11年度採択分

ネオシリコン創製に向けた構造制御と機能探索

研究代表者(所属)
小田 俊理 (東京工業大学 量子ナノエレクトロニクス研究センター 教授)
概要
ナノ結晶シリコンの粒径と間隔を原子スケールで制御した新機能材料「ネオシリコン」を開発した。構造制御 では、粒径5nm、トンネル膜厚1nmを達成し、分散溶液法により面密度7×1011cm-2の高集積化にも成功した。また、機能制御では、弾道電子放出 現象や、単電子帯電効果、さらには隣接する2ドット間の量子力学的結合の観測など、バルクシリコンでは決して得られない様々な新機能を発見した。これらを 応用して、固体面発光素子の動作実証、長保持時間ナノドットメモリ、ナノエレクトロメカニカル不揮発性メモリなど、オリジナル素子への展開を推進した。
 

核スピンネットワーク量子コンピュータ

研究代表者(所属)
北川 勝浩 (大阪大学 大学院 基礎工学研究科 教授)
概要
分子や結晶の核スピンを量子ビットとし、それらの結合ネットワークから成る多ビット量子コンピュータの実 現を目指し、その最大の障害となっている初期化を中心に研究を行った。また、光子を用いた相補的な実験や量子計算理論の研究によって、より一般的な知見獲 得も目指した。分子の光励起三重項状態を用いた動的核偏極の機構を解明し、ほぼ理論限界の70%の高偏極を達成した。さらに初期状態の違いを圧縮して残り の部分を初期化する効率的なアルゴリズムを考案した。これら2段階の初期化により、資源の指数爆発を起こさない真の量子コンピュータの実現に道を拓いた。
 

人工光物性に基づく新しい光子制御デバイス

研究代表者(所属)
中野 義昭 (東京大学 先端科学技術研究センター 教授)
概要
半導体材料の光物性を一原子層単位で設計・制御された人工結晶構造により変革しその光機能を飛躍的に高め ること、ならびにこれら半導体人工光物性と高度な光共振器/干渉計構造に基づいて全光子制御デジタルデバイスを実現し、デジタルフォトニクスの基礎を築く ことによって光情報通信技術の発展に資することを目指した。その結果、GaN/AlN多重量子井戸サブバンド間遷移全光スイッチ、選択成長SOA 集積マッハツェンダー型全光論理ゲート、DC/MMI BLD 型全光フリップフロップ(図)、半導体能動導波路型光アイソレータなどに代表される新たな光子制御デバイス群を創出することに成功した。
 

ナノサイズ構造制御金属・半金属材料の超高速光機能

研究代表者(所属)
中村 新男 (名古屋大学 大学院 工学研究科 教授)
概要
量子力学的な効果が現れるナノスケールの金属と半金属の、物性と機能に関する研究を進めた。ガラスなどの 絶縁体中に埋め込んだ金属のナノ粒子の大きさ、形状、密度を制御することによって非線形な光学応答が増大することを明らかにした。このような材料は光通信 網に使われる光スイッチなどフォトニクスデバイスへの応用が期待される。ナノスケールで厚さが制御された半金属と半導体のヘテロ構造を創ることに成功し、 量子力学的なトンネル効果によるダイオード特性を得ることが出来た。また、磁性体と半金属や金属の接合系の伝導特性や磁気特性の理論解析と予測を行った。
 

光・電子波束制御エンジニアリング

研究代表者(所属)
覧具 博義 (東京農工大学 工学部 物理システム工学科 教授)
概要
フェムト秒パルスの持つ振幅・位相情報を、物質中に生成された量子波束の振幅・位相情報に転写し、またその逆の動作も可能とするデバイスの原理を実証した。これにより、光の運ぶ位相情報を一時的に保持する光メモリあるいは光バッファとしての応用が期待される。具体的には、フェムト秒プログラマブル位相制御光源とフェムト秒位相分光法の開発を行い、有機分子や量子構造半導体中での量子波束制御を試みた。また、波束制御に最適な多準位遷移評価用非対称量子井戸材料の設計と試作も行った。これら波束制御のための要素技術を単に「できる」技術から「使える」技術への実用化にもつなげた。
 

平成10年度採択分

量子相関機能のダイナミクス制御

研究代表者(所属)
青柳 克信  (東京工業大学 大学院 総合理工学研究科 教授)
概要
本研究では量子ドットを用いた量子相関機能の探索を様々な材料系に対し行った。カーボンナノチューブで は、2重結合量子ドットの形成および単一量子ドットでの単一スピンの発生に成功し、これらの成果は、今後、高温動作可能な量子ドットデバイスや量子ビット へ発展が期待される。また、高品質な化合物半導体の単一量子ドットで高いコヒーレンスを実現し、励起子のコヒーレント振動(ラビ振動)の観測に成功した。 本成果は、励起子量子ビット操作への第一歩となる結果である。
 

最高性能高温超伝導材料の創製

研究代表者(所属)
田中 康資 ((独)産業技術総合研究所 エレクトロニクス研究部門 主任研究員)
概要
高温超伝導体TlCu-1223の表面抵抗の温度依存性。従来材料Y-123より優れた特性が得られてい る。CuxBa2Ca3Cu4Oy(Cu-1234)超伝導体を軸に最高性能高温超伝導材料の開発に取り組んだ。 (Tl,Cu)Ba2Ca2Cu3Oy(TlCu-1223)のマイクロ波フィルター用1インチ両面薄膜の作製法を確立し、バルク TlBa2Ca2Cu3Oy (Tl-1223)では、Tc>133.5K を実現した。また多層型高温超伝導体の科学を創成し、二つのTc、磁性と超伝導の共存の発見、ソリトン理論へと発展させた。
 

表面吸着原子制御による極微細ダイヤモンドデバイス

研究代表者(所属)
川原田 洋 (早稲田大学 理工学部 教授)
概要
ダイヤモンドは優れた物性を有する究極の半導体として期待されるが低抵抗のドーピング技術がなく、能動デ バイスの開発が遅れていた。我々は、水素終端表面で生じる低抵抗のp 型伝導層に着目し、これを利用した表面チャネル型FET を開発し、その微細化を行った。その結果、このFETはハイパワーの高周波デバイスへ、表面のナノ改質により単正孔トランジスタ等の量子デバイスへ、また 液体電解質中での動作と生体分子固定により耐環境バイオセンサーへと多角的に応用可能であることを世界で最初に明らかにした。
 

相関エレクトロニクス

研究代表者(所属)
平山 祥郎 (日本電信電話(株)物性科学基礎研究所 部長)
概要
結合量子ドットでは電子が右のドットに存在するか左のドットに存在するかが量子ビットとして働く。この実 験では加えた電気的なパルスの長さにより電子が左に存在するか右に存在するかが制御され電流値として読み出されている。すなわち量子ビットのコヒーレント な回転操作が実現されている。半導体薄膜構造、ナノ構造のキャリア相関に着目して研究を進めた。半導体薄膜、ナノ構造中での電子スピン、核スピンの振る舞 いについて、それらの相関も含めて理解が進み、さらに半導体ナノ構造での電子波の直接測定を実現し、量子情報処理の進展に向けた研究、SNOMやTHz を用いた新しい評価手法を確立した。また電気的なポンプ・プローブ法を確立し、半導体電荷量子ビットのコヒーレント振動の測定にも成功した。コヒーレント 半導体デバイスの実現を目指して、今後とも「相関エレクトロニクス」の研究を発展させる。
 

量子スケールデバイスのシステムインテグレーション

研究代表者(所属)
鳳 紘一郎 (東京大学 大学院 新領域創成科学研究科 教授)
概要
NP完全問題を解く、あるいは人間のように柔軟な認識・判断処理を行うといったことは、現在のコンピュー タのフレームワークでは非常に困難な課題である。本研究では、シリコンVLSI技術を用いてこれらを実行できるシステムを、量子原理を導入することで実現 することを目指した。量子状態の重ね合わせを新たな並列処理プロセッサで表現、75 量子ビット相当のVLSI 量子計算機エミュレータを実現した。また、量子的な共鳴現象を人間の経験・知識の表現に用いて、連想・直感・類推といった柔軟な認識処理のできる電子シス テムを創った。さらに量子的な共鳴特性を精度良く実現するため、単電子効果機能デバイス、ナノワイヤトランジスタ等新たな機能デバイスをシリコン技術を ベースに研究・開発、実際の素子の試作によってそれらの有効性を実証した。

 

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