植物の機能と制御

戦略目標

技術革新による活力に満ちた高齢化社会の実現」(PDF:13KB)

研究総括

鈴木 昭憲(東京大学 名誉教授)

概要

 植物の持つ多様な機能を解明するとともに、その機能を制御し、利用することをめざす研究を対象とするものです。
 具体的には、植物ゲノムの解析並びに遺伝情報の解明、植物と環境との相互作用や環境ストレス下での植物遺伝情報の発現、さらには分子育種や生理機能の制 御等を通じて、食料生産の増大及び質の向上、創薬への応用、パルプや建築材、繊維等の工業製品、その他未利用植物資源の利用、地球環境の保全や災害防止な どに至る様々な植物の利活用をめざす研究等が含まれます。

平成14年度採択分

タバコモザイクウイルスの増殖機構

研究代表者(所属)
石川 雅之 ((独)農業生物資源研究所 植物・微生物間相互作用研究ユニット 上級研究員)
概要
ウイルスの増殖はウイルスにコードされた因子と宿主因子の機能協奏により起こります。本研究では特に解明 の遅れている宿主因子を試験管内TMV(タバコモザイクウイルス)RNA翻訳一複製系を用いて同定するとともに、複製複合体形成メカニズムおよびその構造 を生化学的に解明します。これらの研究を通して、ウイルスの有効利用や感染の人為的コントロール(植物ウイルス病抑制による食糧増産、ヒトのウイルス感染 症治療)の基礎を構築します。
 

共生ネットワークの分子基盤

研究代表者(所属)
川口 正代司 (東京大学大学院 理学系研究科 准教授)
概要
多くの陸上植物の根には菌根菌が共生しており、土壌中のリンなどの養分を効率よく植物体へ供給していま す。また個々の植物は、これら菌根菌の菌糸を介して“共生ネットワーク”を構成しており、種々のストレスに対する抵抗力を高めています。本研究は、菌根菌 共生に必須な宿主遺伝子のクローニングとその機能を解明するとともに共生変異体の系統的な表現型を解析し共生ネットワークの全容に迫るものです。本研究で 得られた知見は、より高効率な共生能を植物に賦与し、生産性の向上に寄与するものと期待されます。
 

植物特異的な転写因子機能ネットワーク

研究代表者(所属)
高木 優 ((独)産業技術総合研究所 ゲノムファクトリー研究部門遺伝子転写制御研究グループ グループ長)
概要
最近の全ゲノムの解析から、植物の遺伝子発現調節に果たす転写因子の重要性が示されていますが、個々の転 写因子の機能についてはほとんど明らかになっていません。本研究の目的は、キメラリプレッサーを用いた新規機能解析法により、植物特異的な転写因子が制御 する形質および標的遺伝子を同定し、それらの機能ネットワークを解明することです。本研究の成果は、転写因子を用いたレギュロンバイオテクノロジーによる 有用遺伝子の人為的制御、高機能性植物の創製など、バイオ産業への広範囲な応用が期待されます。
 

種子蛋白質の量的・質的向上を目指した分子育種

研究代表者(所属)
西村 いくこ (京都大学大学院 理学研究科 教授)
概要
様々な植物種子は人類の貴重な食糧源です。本研究では、種子貯蔵タンパク質の集積に関わる未知の因子の同 定を行い、効率よい種子タンパク質の大量蓄積に関わる有用遺伝子群を単離します。さらに、種子タンパク質の集積と成熟化の分子機構を解明し、この機構を人 為的にモジュレートすることにより、種子の栄養価を損なわずに種子が持っている有害貯蔵物質の無毒化を図ります。これらの研究を通して、分子育種による食 糧あるいは家畜飼料種子の高付加価値化を目指します。
 

寒冷圏における光ストレスと北方林の再生・維持機構

研究代表者(所属)
原 登志彦 (北海道大学 低温科学研究所 教授)
概要
北方林は地球の全森林面積の1/3を占めています。近年、地球温暖化の影響を強く受けることや、自然災害 後の森林再生に長期間を要することなどから、その生態と環境が危惧されている森林です。本研究では、光ストレスにより生じる活性酸素が発芽、バイオマス生 長、開花、落葉/常緑などの植物のライフサイクルとどのように関わるのか、分子生物学的に解析し、北方林の再生・維持機構を解明します。本研究で得られた 知見は、地球温暖化ガスCO2の吸収源の確保、環境保護、持続可能な森林管理へ寄与することが期待されます。
 

平成13年度採択分

植物発生における細胞間シグナリング

研究代表者(所属)
岡田 清孝 (京都大学大学院 理学研究科 教授)
概要
植物の主要器官である葉の形成過程について詳細な解析を行い、葉の表(向軸側)と裏(背軸側)の区別や左 右の対称性など側生器官の基本的な構造を決定するシグナル機構について制御遺伝子を同定し、その働きを明らかにした。また、気孔形成過程や表皮のクチクラ 層の分化過程を制御する新たな細胞間シグナル機構を調べ、制御遺伝子を同定した。さらに、受精時に雌配偶体から雄配偶体(花粉管)を誘引するシグナル分子 を同定し、機能を解析した。また、茎頂分裂組織におけるペプチドリガンドの網羅的解析と植物体内における物質移動の様相を観察するバイオイメージング系の 開発を行った。これらの成果は、植物形態と機能をより効率的で安全に変える人工的な制御方法開発の基盤になると期待される。
 

植物の害虫に対する誘導防衛の制御機構

研究代表者(所属)
高林 純示 (京都大学 生態学研究センター 教授)
概要
我々は、害虫の食害を受けた植物が、その害虫の天敵を呼び寄せる匂いを救援信号として出す現象、及びこの 匂いを受容した健全な株でも、誘導防衛を始める現象(植物間コミュニケーション)を明らかにしました。本研究では、さらにこの匂い物質生産の分子メカニズ ムと、健全株での匂い受容メカニズムを明らかにしました。天敵誘引物質生産に関する新たな植物の機能が解明され、天敵を効率よく利用する害虫管理技術の創 出につながる成果です。
 

植物の鉄栄養制御

研究代表者(所属)
西澤 直子 (東京大学大学院 農学生命科学研究科 教授)
概要
全陸地の25%を占める石灰質アルカリ土壌では、植物は生育に必要な鉄を吸収できず、極めて農業生産性の 低い不良土壌となっています。本研究では植物の鉄栄養を制御する機構を明らかにすることによって、石灰質アルカリ土壌耐性のイネを創製しました。この成果 は食糧の増産と砂漠の緑化に貢献すると期待されます。また貧血症の改善のために、種子中鉄含有の高いイネを創製しました。マーカーフリーベクターを開発 し、これらの新機能植物からマーカー遺伝子を取り除くことを可能にしました。
 

植物が作る未解明窒素化合物の構造と作用

研究代表者(所属)
森川 弘道 (広島大学大学院 理学研究科 教授)
概要
代表者は植物に吸収された窒素酸化物や硝酸由来の窒素の約三割が、未解明のメタボライト(UN化合物と呼 ぶ)に変換されることを発見しました。本研究は、この化合物の構造、生成・分解機構、生理作用を解明し、生物における窒素代謝の新しいパラダイムの提起を 目指します。これにより、一酸化窒素(NO)などの活性窒素分子種の作用や硝酸過剰傷害の分子機構が解明され、他方、植物の環境修復機能や生産性の向上が 期待されます。
 

トリプトファン生合成系における一次・二次代謝の制御と利用

研究代表者(所属)
若狭 暁 (東京農業大学 農学部 教授)
概要
植物トリプトファン生合成系はトリプトファンと関連二次代謝産物を合成します。本合成系の鍵酵素であるア ントラニル酸合成酵素αサブユニットの改変型を利用してトリプトファンを蓄積した作物を作製するとともに、その代謝産物を解析して他への影響のないこと示 しました。改変酵素の機能を解析し、新たにより効率的にトリプトファン蓄積を可能にする酵素を創成しました。また、突然変異体の解析からフェニルアラニン 合成をコントロールできる新たな変異酵素を獲得しました。これらの研究により、実用的で安全な高トリプトファン作物が作製され、また、有用な二次代謝産物 の合成制御法開発の可能性が示されました。
 

平成12年度採択分

植物の重力感知の分子機構

研究代表者(所属)
飯田 秀利 (東京学芸大学 教育学部 教授)
概要
植物における重力感知の分子機構を解明するために、重力センサーの1つと考えられている伸展活性化Ca2+透過チャネルの候補遺伝子をシロイヌナズナから単離しました。本研究では、(1)この遺伝子の産物が伸展活性化Ca2+透過チャネル活性をもつこと、(2)この遺伝子の欠損株は重力刺激後のCa2+動員に異常があるとともに接触刺激応答にも異常があること、(3)この遺伝子の高発現株は培地中のCa2+によって生育障害を受けること、などを明らかにしました。本研究は重力感知および接触感知の分子機構の研究に先駆的な役割を果たすと期待されています。
 

植物生殖成長のキープロセスを統御する分子機構の解明

研究代表者(所属)
経塚 淳子 (東京大学大学院 農学生命科学研究科 助教授)
概要
イネとシロイヌナズナを用いて、生殖成長を制御する分子機構を解析します。イネの花序形成遺伝子を単離・ 解析し、イネ育種への応用可能性を探ります。シロイヌナズナを用いて花成と花序形成を制御するFTおよびTFL1遺伝子の機能を分子生物学的に解析してい ます。これまでに、FTが花成ホルモン「フロリゲン」の実体かもしれないという可能性を示しました。
 

光合成生物の生物時計:その分子機構と環境適応

研究代表者(所属)
近藤 孝男 (名古屋大学大学院 理学研究科 教授)
概要
生物時計(概日時計)は、生物が昼夜交替する地球環境に積極的に適応するための時間プログラム装置とし て、あらゆる生物で機能している。この計画では、これまでに開発した最も解析の容易なシアノバクテリアを使って、世界に先駆け概日時計の振動発生機構を解 明しました。即ち、生物時計は、これまでの遺伝子発現によるものではなく、時計蛋白質の機能(リン酸化)に基づくことが明らかになりました。生命の基本機 構である生物時計の解明は広く医学、農学上の発展が期待できます。
 

ポストゲノム科学を基盤とする植物同化代謝機能のダイナミクス解明

研究代表者(所属)
斉藤 和季 (千葉大学大学院 薬学研究院 教授)
概要
植物は、炭素・窒素・硫黄・リンなどの物質を植物に有用な物質に変換し合成する機能を有している。本研究 では植物の持つこれらの機能の解明を行います。さらに、遺伝子組換え技術を利用し、栄養吸収同化能力や有用物質生産能力の高いイネを作出するなど、植物の 生産性や品質の向上をめざした研究を行います。
 

オオムギゲノム機能の開発と制御

研究代表者(所属)
武田 和義 (岡山大学 資源生物科学研究所 教授)
概要
オオムギゲノムに存在する遺伝子を包括的に解析する技術および遺伝子単離技術を開発した。これらを用いてオオムギ遺伝子の機能を解析した。さらに、オオムギ遺伝資源に存在する有用な遺伝子を効率よく制御して実用品種を選抜するシステムを開発した。
 

デンプンメタボリックエンジニアリングの開発

研究代表者(所属)
中村 保典 (秋田県立大学 生物資源科学部 教授)
概要
イネはデンプン合成反応に関わる遺伝子として4クラス23種類を有するが、想定される全キー酵素の特異的 な機能を明らかにした後、それらの機能を単独または複数を制御した、あるいは他種植物から単離した遺伝子を導入したイネ形質転換体に、新分野の産業に利用 可能と思われる新規形質を有するデンプンを創生するシステムを開発した。
 

植物における染色体機能要素の分子的解析と人工染色体の構築

研究代表者(所属)
村田 稔 (岡山大学 資源生物科学研究所 教授)
概要
植物の染色体は、3つの機能要素(セントロメア、テロメア、複製起点)によって維持されています。この研 究では、最も重要な機能要素、セントロメアについて、そのDNA構造と局在タンパク質を解析しました。その結果、DNAの構成は全く異なっているにもかか わらず、酵母やヒトのセントロメアタンパク質に相同なものが、植物にも多種存在することが明らかとなりました。また、シロイヌナズナにおいては、セントロ メアのDNAサイズが短い数種のミニ染色体を創出することに成功しました。これらは、将来、“植物人工染色体”の基礎材料となると考えられます。
 

 

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