「プロセスインテグレーションによる機能発現ナノシステムの創製」

平成24年度 研究終了にあたって

「プロセスインテグレーションによる機能発現ナノシステムの創製」研究総括 曽根 純一

 研究領域「プロセスインテグレーションによる機能発現ナノシステムの創製」では半導体微細化技術に代表されるトップダウンプロセスと自律的な化学反応を利用したボトムアッププロセスの融合により、新たな機能を発現するナノ構造体を実現し、従来技術に対し、飛躍的な性能、機能を有するナノシステムを創製することを目指して、16課題の研究開発を進めている。
 平成21年度に採択された6件の研究課題のうち、染谷隆夫(東京大学大学院工学研究科 教授)を研究代表者とする「大面積ナノシステムのインターフェース応用」の課題では、自己組織化単分子膜をゲート絶縁膜に用いた有機トランジスタを開発、独自のナノ印刷技術によりその集積化を実現し、次世代ヒューマンインターフェースへの応用を視野に入れた大面積ナノシステムの概念構築を目指している。
 平成21年度開始から平成23年度が終了するまでの2.5年間に、低電圧駆動と集積化が可能な有機トランジスタの開発、折り曲げ可能なプラスチックフィルム上における集積回路の安定動作、さらには大面積システム応用に向けたインクジェット描画やスクリーン印刷によるトランジスタ作製技術の開発を進めてきた。これらの技術を用いて、センサーシートやアクチュエータシートなどのヒューマンインターフェースを実現、大面積化ナノシステムとしての有効性を実証してきた。これらの成果はNature Materialsなどのトップクラスの論文誌での発表、多くの招待講演、受賞等に見られるように学会内で高く評価されている。一連の研究成果を通じて大面積ナノシステムという概念の方向性が見えてきたと考えており、ナノシステム創製という捉えどころのない本研究領域の大きな目標に対し、先導的な役割を果たしてくれたと評価する。大面積ナノシステムの基盤技術は用意されつつあり、今後は本システムが目指す具体的な応用の提起とその有用性の実証が求められる。CRESTプログラムとしてはまだ3年間を残しており、やり残した事も多いが、より応用を意識したERATOの「生体調和エレクトロニクスプロジェクト」の研究総括として、また産学連携のプログラムである「次世代プリンテッドエレクトロニクス技術研究組合」でもプロジェクトリーダーとして活躍する可能性が出てきたことを鑑み、本研究領域の成果をそれらのプロジェクトでさらに発展させていく事が望ましいと考え、研究開始から2.5年の平成23年3月で本研究領域の課題としては終了することとした。
 最後に、これまで本課題の選定、評価に適切な助言、ご指導を頂いた領域アドバイザーの方々に深く感謝します。

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