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平成19年度採択課題 研究終了にあたって

「次世代エレクトロニクスデバイスの創出に資する革新材料・プロセス研究」研究領域
研究総括 渡辺 久恒

 本研究領域は、戦略目標「新原理・新機能・新構造デバイス実現のための材料開拓とナノプロセス開発」の達成に向けた研究領域の一つとして平成19年度に発足した。具体的には、新しい原理により消費電力の増大、製造コストの巨額化などの実用上の問題を解決するための高集積情報処理デバイス、異種材料や技術の融合により新機能・高性能を発揮するデバイス、及びそれらを可能にする材料・プロセス研究、また従来にない斬新なアプリケーションを切り拓く研究を目指し、次世代エレクトロニクスデバイスの創出に資する革新材料・プロセス研究の対象として、18課題の研究開発を進めてきた。

 平成19年度に採択された6件の研究チームのうち、二瓶瑞久(富士通株式会社)「LSI用3次元カーボン・アクティブ配線の開発」研究チームは、現在用いられている銅配線に替わる、電気伝導特性や熱伝導特性に優れる次世代エレクトロニクス材料である多層グラフェンを用いた微細・高性能配線、及び新しい付加価値を有する3次元カーボン・アクティブ配線の可能性を示すことを目標とした。

 グラフェン成長技術に関して、オリジナルな手法である光電子制御プラズマCVD技術を開発し、触媒金属を用いずに400℃以下の温度で、絶縁膜基板表面にナノグラファイト薄膜(多層グラフェンのナノ粒子が互いに複雑にネッワークした膜)を形成する技術を開発し、光電子が放出しやすい基板材料上に良質なグラフェン構造が成長できる見通しが得られたことは、実用上の大きな前進であり、期待できる成果である。また、転写グラフェン薄膜を用いたトランジスタプロセスも検討され、一応の電流・電圧特性が得られた点は、グラフェン材料を次世代デバイスへ応用という世界の潮流に貢献することが期待される。

 当初5.5年の研究期間で予定された本研究課題は、最先端研究開発支援プログラム(FIRSTプログラム)の「グリーン・ナノエレクトロニクスのコア技術開発」(中心研究者:横山直樹)の中でさらに成果を発展させることとなったため、研究開始から2.5年の平成22年3月で終了することになった。

 最後に課題の選定・評価、サイトヴィジット、進捗報告会などで適切なご助言とご指導を頂いた領域アドバイザーの石原宏先生、大泊巌先生、大野英男先生、財満鎭明先生、前口賢二先生、百瀬寿代先生、和田敏美先生の各位に深く感謝いたします。