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平成14年度採択課題 研究終了にあたって

「糖鎖の生物機能の解明と利用技術」研究総括 谷口 直之

 本領域はポストゲノム研究のなかにあって中心的な役割を果たすものであり、第3の生命鎖と呼ばれる糖鎖の生物機能の解明を行い、その利用のための基盤的な技術の開発を目指したものである。
糖鎖はタンパク質の50%以上に付加されており、ゲノムやタンパク質の研究にくらべて、多様性にとみ、また解析の複雑さから研究がどちらかというと避けられてきた嫌いがある。しかし、我が国の研究者は糖鎖を合成する遺伝子の6割以上を同定したという実績を持ち、国際的にリードする領域である。

 本領域の第一期募集にあたる平成14年度の応募件数は57件であり、多くの優れた研究提案があった。領域アドバイザーと共に書類選考により15件を選考し、面接選考を経て6件を採択した。採択に当たっては、研究が、国際性、独創性、創造性に富んだものであることと、研究計画が具体的で、将来、応用への基盤的な技術開発へ貢献できるものを選出した。糖鎖生物学のみならず糖鎖化学の研究者も積極的に採用した。また選考にあたっては利害関係にある選考委員は選考に参加せず、公正な選考に努めた。

 採択後は、研究報告会や研究実施報告書を参考に領域アドバイザーのご意見を取り入れ、研究上の問題点、その解決方法などを指導した。また、研究テーマが拡大し過ぎたときには軌道修正や、国際的に競合していたが残念ながら先行されてしまったテーマについては具体的なテーマの方向転換や修正などを指示した。

 平成14年度採択課題の中から多くの国際的な成果が生まれ、引き続き我が国が国際的にこの領域でリードできる地位を占めることができた。いくつかの例をあげると、精密に化学合成した糖鎖を活用してタンパク質品質管理の分子論的な解明、がんの進展における糖鎖遺伝子発現の因果関係の解明、ユニークな糖鎖合成法の確立、新しい膵がんマーカーの発見、インフルエンザなど感染症での糖鎖の役割解明、ショウジョウバエにおける糖鎖機能の解明、などいずれも国際的に評価の高い成果があがった。また本領域の研究者を中心とした国内外のネットワークの構築もおこなった。このように、本領域の成果が国際的に大きなインパクトを与えることができたことを自負している。

 平成14年度採択課題の研究終了にあたり、適切な助言をいただいた領域アドバイザーの塚田 裕先生、川嵜 敏佑先生、若槻 壮市先生、近藤 規元先生、鈴木 明身先生、成松 久先生、また研究の遂行を初め国内外の会議の運営、知的財産の確保にご尽力いただいた西澤 敏雄技術参事、また会計事務初め備品の調達などにご尽力いただいた長澤 睿事務参事および糖鎖研究事務所の皆さんに厚く御礼申しあげます。