戦略的創造研究推進事業
ナノテクノロジー分野別バーチャルラボ(CREST)
「エネルギーの高度利用に向けたナノ構造材料・システムの創製」
平成19年度 研究終了報告書

総括挨拶
研究領域「エネルギーの高度利用に向けた材料・システムの創製」
研究終了にあたって

研究総括 藤嶋 昭

 我々の活動に必要なエネルギーを確保して快適な環境を作ることは、食料を得て健康を維持することと同様に最重要課題です。平成14年度からスタートした本研究領域は、ナノ材料や機能材料を有効に活用することにより環境保全、エネルギーの変換・利用技術を進展させることを目的とする10テーマと致しました。
 キーワード的には、1.光エネルギー変換[ナノシート(佐々木チーム)、可視光水分解(工藤チーム)、複合電極による太陽光水分解(中戸チーム)], 2.新しい電池[リチウム電池(山木チーム)、全固体型電池(金村チーム)、燃料電池(池庄司チーム)、燃料電池用白金ナノチューブ(木島チーム)]、3.機能材料[熱電変換素子(河本チーム)、コンビナトリアルナノテクノクノロジー手法による酸化物と有機半導体(鯉沼チーム)、高温超伝導体(松本チーム)]などです。
 本研究の実施結果として、新しい基礎概念の提案や基本特許の取得と、更に、論文掲載や特許出願の件数(アウトプット)だけでなく、インパクトの大きなアウトカム(研究成果としてのアウトプットが社会にどのように役立っているか)も目指しました。研究を推進する上で最も重要なことは研究リーダーの熱意であり、優れたオリジナリティーのある人のリーダーシップと活発な雰囲気が重要なファクターだと考えて領域を運営致しました。
 5年半における研究をさせていただき、今は少しホッとしているところです。私たちのナノテクとエネルギーに関する研究者に配分していただいた研究費だけでも40億円以上という多額の研究費を使わせていただきました。領域の事務所経費や、サポートの人々の人件費などを加えるとトータルではどのくらいなのか、私にとりまして詳細はわかりませんが、いずれにしろ、貴重な税金を使わせていただいたわけで、厚くお礼を申し上げます。
 10チームのリーダーはもちろん研究員の方々、また周辺の学生の方々、さらにJST本部の方々を含めて、多数の方々のご協力を頂き実施することができました。厚くお礼申し上げます。
 研究成果として、予想以上の成果を出してもらったところでは、新聞やテレビでも成果を広く報道していただいたものも多く、各研究者の方々に感謝申し上げる次第です。一方で、一部には期待した通りには成果が出なかったところもありますが、これも未知に向かっての挑戦としての結果ですのでやむを得ないところもありました。
 5年間以上にわたるこの期間中、貴重な研究成果をもとに、研究員の方々の昇任や転任などうれしいニュースも多くありました。終わりに近づいてきますと、さらにこの領域を続けることができたらとの思いも起こります。すばらしい成果をあげた全体の三分の一ぐらいのチームは規模を小さくしてでも、研究を継続するシステムがあればとの思いもあります。システムとして検討していただけたらと思います。

 子日く、これを知る者はこれを好む者に如かず。これを好む者はこれを楽しむ者に如かず。論語(巻三第六雍也篇20)

 これは孔子の言葉です。研究を楽しむことができました。ありがとうございました。

以上

 
ナノバーチャルラボ