独立行政法人 科学技術新興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業(CREST)「たんぱく質の構造・機能と発現のメカニズム」はゲノム科学の進展を受けて、たんぱく質の研究がクローズアップされる時代を迎えた生命科学の研究潮流に呼応するプロジェクトとして企画され、生物学的に重要な機能を担うたんぱく質について、その機能発現と構造の相関関係を解析する課題、および構造解析・機能解析の革新的な手法の開発を目指す課題を取り上げてたんぱく質研究の最前線を拓くことを目的としている。
 研究期間は各課題とも5年とし、平成13年秋からプロジェクトを立ち上げた。平成15年度まで、3年間にわたり各年度とも5-6件の研究課題を公募し、研究総括と領域アドバイザーの合議により採択課題を決定した。課題の採択は、初年度から当初の予想を遙かに上回る多数の研究計画が寄せられ、極めて高い競争率の中から採択するという苦渋の選択を強いられた。初年度に採択された課題は、平成18年度末をもって終了するので、この機会に、初年度採択の各研究課題について最終報告をとりまとめたのが本書である。
 激烈な競争の中から採択された研究代表者、およびその研究計画は、日本のタンパク質研究の代表と呼ぶにふさわしい高水準のものであった。どの研究課題も順調に推移し、当初の予想を上回る成果を挙げたものが多いと自画自賛している。事実、各課題ともその成果は、すでに国際的に大きな注目を集め先導性、波及性の高さを物語っている。むろん、ご高覧いただきご批判をお寄せいただけるなら、進行中の2年度目採択、3年度目採択の各研究課題の進展の上で役立たせていただきたく、さらに、広くCRESTの今後のあり方などに参考となる貴重なご意見として本部に伝えたく存じます。
 ここに収録したような立派な研究成果が得られたことは、もとより研究代表者はじめ参加した研究者各位の努力によるものであります。同時に、研究の進捗に応じて貴重なアドバイスをいただいた領域アドバイザーの諸先生方の寄与があってのこととアドバイザー、評価委員各位に感謝したいと思います。JST戦略的創造事業本部の研究推進部長、同研究第1課長をはじめとする職員各位、立川にある領域事務所の技術参事、事務参事はじめ職員のみなさんの支えも円滑な研究の進展に欠かせないものであったことも付記し、深く感謝の意を表します。

 平成19年3月31日