平成13年度採択課題 研究終了にあたって

「植物の機能と制御」研究総括 鈴木 昭憲

 今日、食糧問題、環境問題などの地球規模の問題に植物科学の研究が深くかかわることは広く認識されており、社会的関心が高まっている。そのような背景のもと、戦略的創造推進事業(CREST)「植物の機能と制御」研究領域は、植物の持つ多様な機能を解明するとともに、その機能を制御し、利用することを目指すという成果の社会的貢献をも念頭において展開する植物科学の先端研究を推進するものとして、平成12 年度に発足した。
 成果の社会的貢献の内容を、1.生産力(収量)向上、2.高付加価値物質生産、3.環境保全、4.新技術の創成の4 つのカテゴリーに分類し、多くの応募課題の中から17 課題を採択し、鋭意研究が進められてきた。
 本研究領域の第2 回採択となった平成13 年度には、5 つの研究課題を採択した。採択された研究課題を具体的に分類すると、「植物の害虫に対する誘導防衛の制御機構」(高林純示・京都大学教授)は「生産力(収量)向上」に、「トリプトファン生合成系における一次・二次代謝の制御と利用」(若狭 暁・東京農業大学教授)は「高付加価値物質生産」に、「植物が作る未解明窒素化合物の構造と作用」(森川弘道・広島大学教授)は「環境保全」に、「植物発生における細胞間シグナリング」(岡田清孝・京都大学教授)、「植物の鉄栄養制御」(西澤直子・東京大学教授)は「新技術の創成」に位置づけることができる。
 上記5 課題の研究チームは、5 年間の研究期間中に多くの成果を上げ、それらの成果は、我国の植物科学の成果として国際的にも高く評価されるものと確信している。諸成果の詳細は研究終了報告書をご参照いだきたいが、これら基礎的研究成果および応用的研究成果を、地球規模で進行している食料問題、環境問題の解決手段の一つとして効率的に利用し、対応技術を早急に構築する必要性が問われてもいる。
 最後に研究課題の採択、中間評価、事後評価、シンポジウムなどの場のみならず、数々のご指導を賜った領域アドバイザーの諸先生方に感謝を申し上げると共に、全ての研究課題が遅滞なく研究を遂行できるようご尽力いただいた科学技術振興機構本部ならびに研究事務所の各位に深く感謝したい。