平成18年度研究終了報告(平成15年度採択課題)
「シミュレーション技術の革新と実用化基盤の構築」研究領域
研究終了にあたって

 本研究領域は、医療・情報産業における原子・分子レベルの現象に基づく精密製品設計・高度治療実現のための次世代統合シミュレーション技術の確立を戦略目標としてH14年に発足した。具体的には計算機内で微視的(ミクロ)現象から巨視的(マクロ)現象までを統合的に解析することで、2010年頃を目処に、物質材料・デバイス等の原子・分子レベルの現象に基づく精密製品設計開発や、細胞内タンパク質の挙動解析、生体機能シミュレーションによる高度治療等を可能とする、統合解析シミュレーション技術の実用化を目指した。

 平成15年度に採択された6件の研究チームのうち、高野 直樹(立命館大学) 「生体骨医療を目指したマルチプロフェッショナル・シミュレータ」研究チームは3年間という短い研究期間で生体硬組織(骨)を対象とし、医師らを主たるユーザと想定し、医師らが計算力学、材料科学、生体力学等の異分野の専門知識もあわせて研究に邁進し、成果を予防・治療に還元できるように、複数の専門学問(マルチプロフェッショナル)をまたぐ研究ツールとしてのシミュレータを開発した。

 本研究成果のシミュレータは海綿骨の微視構造と骨梁内の生体アパタイト結晶配向を考慮した世界初のマルチスケールシミュレータであり、近年増加傾向にある骨粗鬆症の予防・治療の診断補助のみならず、骨再生研究やインプラント研究開発に貢献するものと思われる。また同時に異分野の研究者の連携のため、マルチプロフェッショナル・シミュレータを構築することで、医学、生体力学、材料科学、計算工学の共通プラットフォームとして広範囲な利用が期待されている。

「シミュレーション技術の革新と実用化基盤の構築」研究総括
土居 範久
 

独立行政法人 科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業CRESTチーム型研究