戦略的創造研究推進事業

研究領域「医療に向けた化学・生物系分子を利用したバイオ素子・システムの創製」

平成18年度 研究終了報告書(平成13年度 採択研究課題)

巻頭言
研究領域
医療に向けた化学・生物系分子を利用したバイオ素子・システムの創製」
平成13年度採択課題 研究終了にあたって

研究総括 相澤 益男

21世紀初頭、ナノテクノロジーは、時代を切り開く新しい基盤技術として、その展開が世界的に注目されるようになった。我が国においては、総合科学技術会議が第2期科学技術基本計画を策定し、“ライフサイエンス”、“情報通信”、“環境” とともに、“ナノテクノロジー・材料”を戦略的重点4分野に位置付けた。これを受けて、文部科学省、経済産業省、厚生労働省等は、それぞれ独自のナノテクノロジー重点推進施策を打ち出した。

  文部科学省は、平成13年度、科学技術振興事業団(現独立行政法人科学技術振興機構)の戦略基礎研究プログラム(CREST)として、2研究領域を開始した。その内の一研究領域が、「化学・生物系の新材料等の創製:ナノスケールでの化学や生物系の革新的な機能材料、分子機械、分子素子、バイオ素子、バイオセンサー技術の創製を目指して」である。99件の応募があり、その中から6プロジェクトが採択された。

  ナノテクノロジーが、きわめて裾野の広い、基盤研究分野であることに鑑みて、文部科学省は、JST戦略的創造研究推進事業に“ナノテクノロジー分野別バーチャルラボ” と称する新プログラムを創設した。このプログラムには、三つの戦略目標が設定され、それぞれの戦略目標の下に合計10の研究領域が設けられた。平成14年度には、10領域の全てについて研究課題が公募され、平成13年度分12課題と合わせて、102課題が採択された。さらに、平成14,15年度に緊急性の高い研究課題、シミュレーションに関する課題が公募され、合計117課題が採択されている。世界に先駆けて、ナノテクノロジー研究を、きわめて大規模、かつ組織的に推進する体制が実現したことは画期的といえよう。

  平成14年度には、“ナノテクノロジー分野別バーチャルラボ”に、「非侵襲性医療システムの実現のためのナノバイオテクノロジーを活用した機能性材料・システムの創製」を戦略目標とした、「医療に向けた化学・生物系分子を利用したバイオ素子・システムの創製」研究領域が設置された。この研究領域には、厳選された7プロジェクトが採択され、研究を開始した。さらに、平成13年度発足のCRESTプログラム「化学・生物系の新材料等の創製:ナノスケールでの化学や生物系の革新的な機能材料、分子機械、バイオ素子、バイオセンサー技術の創製を目指して」研究領域は、“ナノテクノロジー分野別バーチャルラボ”研究領域に統合されて運営されるようになった。

  この度、「化学・生物系の新材料等の創製」として平成13年度に採択された6研究課題が、研究期間を成功裏に終了し、研究報告書を取り纏めることが出来た。多様な化学・生物系のナノ材料・デバイスが創出され、その成果は国内だけではなく国際的にも評価が高まっている。また何れの研究課題も、このプロジグラムに採択されたことにより、飛躍的な発展を遂げていることが特徴的だ。シンポジウムや領域会議での異分野の研究者との交流がコラボレーションを生み出したことも注目される。若手研究者の受賞・昇進などが多々現れたことは、人材育成への効果として大変喜ばしい。

  成果の詳細はこの報告書を見ていただきたいが、研究終了にあたり、一貫してご指導を賜った領域アドバイザーの諸先生方に心から感謝したい。また科学技術振興機構本部および領域事務所の皆様に深く感謝したい。