平成16年度 研究終了報告書 (平成11年度採択課題)
「脳を知る」研究領域
研究終了にあたって

 平成11年度の戦略的基礎研究推進事業(Core Research for Evolutional Science and Technology:CREST)の「脳を知る」領域の研究公募に対して63件の提案が申請された。これらの研究提案は一次選考の書類審査により12件(約19%)が二次選考の面接審査に推薦され、最終的に3件(約5%)が採択された。今回、これら3件の研究課題が5年間の研究を無事終了した。

 脳・神経領域は生命科学最後のフロンティアといわれ、多くの研究者を魅了し、あらゆる角度からのアプローチが繰り返されている。脳研究は長い歴史的背景に支えられている。

 100年前までは、脳研究は動物の行動解析、光学顕微鏡レベルでの形態観察に依存してきた。1950年頃には、電気生理学の手法が著しく進展し、単一神経細胞から電気的活動を記録できるようになり、1980年以降になると、脳研究は分子、遺伝子のレベルで実施することが可能となった。このように、脳・神経の研究はこれまで、科学の技術的発展によって促進されてきたし、今後も、科学技術の成長に伴って、脳神経の研究がさらに進展することは疑いない。

 脳研究が多種の科学技術の手法に依存すると共に、その研究分野も拡張し、多岐にわたる脳研究が実施されるようになった。たとえば、平成11年度に採択された3件の脳研究課題を例にとっても、「神経細胞膜上の機能分子の動態」(重本チーム)、「大脳前頭前野における行動制御機能」(丹治チーム)、「学習・記憶に関するシナプスのメカニズム」(八尾チーム)と多種多彩である。したがって、脳研究の理解には広範な知識が要請され、領域総括だけですべての研究提案を評価することは不可能である。研究提案の内容をできる限り正確に理解するために、 6名の領域アドバイザーの参加を依頼した。また、研究代表者の研究内容の詳細を知る目的で、領域総括と技術参事は1年に1回、各研究代表者の研究室を数時間にわたって訪問し、研究内容に関する質疑応答を実施した。さらに、研究室訪問のほかに、中間評価会において、各研究代表者の研究成果を研究アドバイザー、外部評価者を交えて検討した。

 これらの研究評価に際して貴重な意見をいただいた、伊佐正、小津瀞司、金子章道、城所良明、御子柴克彦、水野昇、村上富士夫の諸先生に感謝致します。
「脳を知る」研究総括
久野 宗

独立行政法人 科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業CRESTチーム型研究