研究課題別事後評価結果

1.研究課題名
地球環境保全のための国際的枠組みのあり方
2.研究代表者名及び主たる研究参加者名(研究機関名・職名は研究参加期間終了時点)
研究代表者佐和 隆光京都大学経済研究所 所長
主たる研究参加者今井 晴雄京都大学経済研究所 教授
 江崎 光男名古屋大学大学院国際開発研究科 教授
 森 俊介東京理科大学理工学部経営工学科 教授
3.研究内容及び成果
論文発表(国内誌188件、国際誌65件)、招待、口頭講演(国内153件、国際69件)等、数多くの論文を通じて主要な成果を発表している。
京都メカニズムの制度設計について、課題となるところや、細部にわたる要件を経済学的に究明し、排出権取引の実際的側面について評価し、CDMを軸とする国際協力のあるべき方策を提案、又、50年〜100年スパンの独自技術戦略を提案しているが、従来知られている内容を大きく超えるものではない。
CDMに関する日本、中国、韓国の共同研究は、机上の理論に止まる事のない実証的研究として、中韓、政府・産業関係者の幅広い関心を集めた。
 京都会議(COP3:気候変動枠組み条約第3回締約国会議:1997.12)で採択された、京都議定書(Kyoto Protocol)について、排出権取引や共同実施の経済学的意味と意義についての研究を進め「排出権取引等の制度設計」を行なった。なかでもクリーン開発メカニズム(CDM)については制度設計と有効活用のための国際協力あり方を検討した。50年ないし100年の時間幅で、エネルギー・環境関連の技術開発戦略のあり方について、いくつかの有意味な結論を導いた。技術開発の不確実性、技術の組み合わせの最適化、技術開発の費用対効果分析、等々の視点から、ユニークな環境技術開発戦略を提案した。
(1)国際制度グループ
 実験経済学や、ゲーム理論の手法等を用いて、排出権取引、共同実施、クリーン開発メカニズムの制度設計に関する理論的究明を行なった。CDMに関する日本、中国、韓国の共同研究を行い、CDMにおける投資国となりうる日本のような先進(付属書T)国、CDMのホスト国として多様な投資機会をもつ中国のような途上(非付属書T)国、現在は非付属書T国ではあるが、近い将来、付属書T国となる可能性の高い韓国のような国が、それぞれの利害をすり合わせて、お互いに納得のゆくCDMの制度設計を考える上での要件を究明した。
(2)国際協力グループ
 中国に的を絞り、中国への技術移転がもたらすであろう二酸化炭素の排出削減効果の評価、それがもたらすであろうマクロ経済影響の評価、中国のエネルギー消費と二酸化炭素排出量の予測、等々を行い、エネルギー・環境面での日中間国際協力の可能性とその効能を数量的に明らかにした。世界の工業生産の一大拠点となるであろう中国の二酸化炭素排出量を必要最小限にとどめるための、CDM有効活用の、日本と中国の双方を利する国際協力のあり方を提案した。
(3)技術戦略グループ
 50年ないし100年の時間幅で、エネルギー・環境関連の技術開発戦略のあり方について、専門家の聞き取り調査や、最適化モデル分析をとおして、いくつかの有意味な結論を導いた。技術開発に不可避的につきまとう成否の不確実性、利用可能な技術の組み合わせの最適化、技術開発に世する費用の負担、技術開発の費用対効果分析、等々の新しい視点を適宜取り込むことにより、環境技術開発戦略について独自提案を導いた。
4.事後評価結果
4−1.外部発表(論文、口頭発表等)、特許、研究を通じての新たな知見の取得等の研究成果の状況
 
4−2.得られた研究成果の科学技術への貢献
COP5(ボン:1999.11)のサイドイヴェント・ワークショップで研究成果を公にし学術的研究の参画として注目された。
排出権取引の実効性に関するゲーム理論的検証は、国内初の試みとして評価できる。
各種政府審議会・委員会における、研究成果に基づく政策提言は、京都メカニズムへの政府見解に少なからず影響を与えた。
4−3.その他の特記事項
なし

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