(3)新規SbRe2O6複合酸化物の触媒作用
選択酸化反応は重要な化学プロセスである。本研究でイソブタン及びイソブチレンのアンモ酸化反応、さらにはメタノ−ルの部分酸化反応に優れた触媒作用を示す新しいアンチモン−レニウム複合酸化物(SbRe2O6)を見出した。これまで、メタノ−ルから一段で酸化的にメチラ−ルを合成する(3CH3OH+2O2→CH2(OCH3)2)優れた触媒は報告されていないが、SbRe2O6触媒は93.5%もの高い選択率でメチラ−ルを生成した(特許出願)。また、SbRe2O6触媒はイソブタン及びイソブチレンのアンモ酸化によるメタクリロニトリル生成に活性を示し、低級炭化水素類のアンモ酸化反応に有望な触媒である(特許出願)。 (4)触媒概念"Surface Catalytic Reactions Assisted by Gas Phase Molecules"
Co/Al2O3触媒上でのNO-CO反応において、触媒作用の新規概念"Surface Catalytic Reactions Assisted by Gas Phase Molecules"を見出した。すなわち、表面コバルトジニトロシル(Co(NO)2)を経て進むNOの還元反応が、表面に観察されないCO分子(Spectator)により著しく促進される。Co(NO)2における2個のNO配位子間の角度がCOの存在により大きく増大し、同時にNO吸着量が増大する。反応中間体の構造と量がSpectator分子により著しく影響を受け、結果として触媒反応が促進される現象である。水性ガスシフト反応等にも応用可能であり、本現象を利用した触媒反応速度の向上や新反応ル−ト開拓が期待できる。
このように本研究では、反応条件下での動的な表面反応解析法を種々開発して表面化学過程を直接捕らえ、単一分子やその集団の反応特性と活性表面創出に関する基本原理を明らかにしてきた。触媒反応過程に関し、反応中間体及び生成物も含めての反応場が直接画像化されるようになり、新触媒開発の礎を固めた。