1) |
新型ゼオライトの微結晶でも単結晶構造解析が出来る方法の確立を図った。電子回折強度を多くの晶帯軸入射で定量測定し、構造因子の位相推定をX線回折で発展した「直接法」で行い、Kinematical近似でゼオライトの構造を電子回折強度の定量測定から解けることを、構造未知のSSZ-48のナノ結晶を用いて示した。骨格構造のみならず一部の鋳型分子の位置も求めることが出来、この手法が密度の小さいゼオライトの構造解析法として極めて有力であることを明らかにした (Dr. P. Wagner, CALTEC, USA、Dr. S. Zones, Chevron, USAと協力)。 |
2) |
シリカメソ多孔体は水中での界面活性剤の自己組織機能を利用して形成される。すなわち、その境界面上にシリカ・ネットワークが形成されたと定性的に理解されている。ところで、メソ多孔体の構造は観測される粉末X線回折線の数が少なく、晶系すら確定出来ないのに、電子顕微鏡像にはきれいな周期性が観測されることが多い。この周期性に着目して、電子顕微鏡像のフーリエ解析から構造因子の振幅と位相を求め、3次元メソ多孔体の構造を一義的に決める方法を確立した。これを用いて、世界で初めて骨格構造の壁に有機基を一様に導入した無機−有機ハイブリッドメソ多孔体の構造評価に成功した。これらのメソ多孔体の構造を確定できたことにより、それら配列ナノ空間を利用した新物質創製が可能となった。1次元チャネルが蜂の巣状に配列したMCM-41とGyroid surfaceのMCM-48を利用して作ったPtクラスターは、それぞれ太さ約30 ÅのPt単結晶のナノワイヤ及びPtの3次元周期的ネットワークであることを示した。今後、構造が制御された様々なメソ多孔体を鋳型に多様なナノスケールの新奇な物質創製とその物性、更にそれらの機能の実用化が一層期待される((株)豊田中央研究所 稲垣伸二、Dr. A. Carlsson, Lund Univ., SWEDEN、Dr. G. Stucky, UCSB, USA、Dr. R. Ryoo, KAIST, KOREAと協力)。 |
3) |
典型的な配列した空間を与える高純度・高結晶質なゼオライト結晶を、この分野で活発に研究している吉林大学からのポスドクが中心となり合成し、ナノ結晶から大きな単結晶や多数の新型ゼオライトの結晶合成に成功した(Prof. S. QIU, Jilin Univ., CHINAと協力)。 |
4) |
2次元空間を含む骨格構造と結晶サイズ、形態の制御を目的として、溶媒及びimidazole系鋳型(構造規制)分子を系統的に変化させて合成を行い、多数の新型結晶を得た。構造解析の結果、合成できたAl-P-O系ミクロ多孔体の骨格構造と溶媒種やマクロ形態との関係について知見を得た。 |
5) |
ナノスケールでの組織構造を精密かつ自在に設計・構築するための化学的手法の開発を、特に層状ケイ酸塩を用いて、構造制御された無機有機ナノ複合物質の合成で行い、従来とは異なる構造のメソ多孔体の合成に成功した。層状アルミノケイ酸塩であるカオリナイトの層間での有機分子の選択的配向を明らかにし、層状ケイ酸塩カネマイトから誘導されるメソ多孔体のメソ孔の表面修飾と包接機能の発現について明らかにした。透明な無機−有機複合体薄膜の合成や、ポアの配列を制御することによる異方性の発現などの成果も得た。 |
6) |
構造の明確な分子状クラスターをゼオライトあるいはメソ多孔体細孔内に構築して、クラスターの反応性を利用した新規触媒系の開発を検討した。金属硫化物クラスター、金属酸化物クラスターを、ホスト・ゲスト相互作用を解明しながらゼオライト細孔内に合成した。解明したクラスターの構造とゼオライト細孔内クラスターの酸化活性、水素化脱硫活性を検討した。クラスターの構造と触媒作用を、用いるゼオライトの組成、構造により制御できた。 |
7) |
ゼオライトの新規合成法の開発を主眼として、層状ケイ酸塩(カネマイトやマガディアイト)からゼオライト合成を試み、MFI、MEL、MOR、FER、SODの合成に成功した。この手法により、大きな機械的強度(30 kg/cm2 以上)のゼオライト成形体や、成形体の両面で構造及び化学組成の異なった複合成形体(MFI/MOR)も得られた。これら成形体は、トルエンとメタノールのアルキル化反応において、約10%高いパラ選択性を示した。 |
8) |
LTA、FAU、MFI、AFI等のゼオライト結晶を合成し、粉末X線回折、電子回折及び高分解能電子顕微鏡法により、これらの骨格構造及びゲスト物質を導入した系の構造評価を定量的に行う途を拓いた。 |
9) |
HREM法を主な手法として、ゼオライト骨格構造及びその欠陥構造の決定を行い、骨格そのものに対する新たな知見を得るとともに、構造決定の方法論を展開・発展させた。また、ナノクラスター/ゼオライト複合系におけるクラスターの直接観察を通して、サイズや配列の制御を試みた。 |