研究代表者 | 潮田 資勝 | 東北大学電気通信研究所 教授 |
主たる研究参加者 | 宮野 健次郎 | 東京大学大学院工学系研究科 教授 |
@ | 清浄表面の原子分解能STM発光分光:Au(110)-(2×1)表面とSi(111)-(7×7)表面の原子位置分解能STM発光分光を行った。ともに、原子サイズの探針位置の違いにより、異なるスペクトルが観測された。これは、局所表面電子状態の違いや試料内に入射したホットエレクトロンの緩和過程の違いによりもたらされていることを明らかにした。 |
A | 個々の表面吸着種のSTM発光分光:Au(111)表面に弱く化学吸着したC60分子とCu(110)表面に(2×1)構造で化学吸着した酸素原子の原子分解能STM発光分光に成功した。共に、吸着種に特有なSTM発光スペクトルが観測された。さらにスペクトルの発現機構を解明した。 |
@ | 半導体超格子構造:STM像で個々の量子構造を識別した上で、試料表面を損傷することなく個々の単一構造の発光分光を行った。さらに、量子構造と探針間の試料面内距離と発光強度の関係から、試料に入射したホットエレクトロンの動的振る舞いの解析が可能であることを示した。また、GaAs/InGaAs歪超格子の表面形状像とSNOM発光像を同時計測した。その結果、この構造の臨界膜厚は力学的平衡理論によって説明できることがわかった。 |
A | 半導体孤立ナノ微細構造:個々のGeナノ微粒子のバンドギャップ・エネルギーをサイズの関数としてSTSで計測した。その結果、明確なサイズ依存性を示すバンドギャップ・エネルギーが赤外領域にあることがわかった。 |
B | 希薄磁性半導体:MnドープGaAs劈開面のSTM像からアクセプター密度を定量的に評価し、Mn原子が母体のGaAs結晶にどのように取り込まれているかを明らかにした。 |
C | 酸化膜上の金属ナノ微粒子:アルミニウム酸化膜上に作製した個々のナノ金属微粒子のSTSとSTM発光分光の同時計測を行った。STM発光スペクトルの解析から、チャージング・エネルギーを直接決定した。 |
@ | 孤立微小球:最も単純な微小共振器である動的電気四重極トラップに捕捉された微小液滴を用いて、球の固有モードと液滴中の色素の発光との相互作用(弱結合における共振器QED)を初めて定量的に検証し、この範囲では半古典的なモデルが完全に有効であることを示した。 |
A | |
B | 基板上の配列微小球:SEMで観察しながら、微小球を基板上に任意の構造に配列する方法を確立した。これを用いて、様々な結晶構造(フォトニック結晶)における固有モードを赤外分光によって調べ、理論計算とのよい一致をみた。また、二層構造の場合に、特異的に発生する回折と屈折の相乗効果を発見し、この現象が前項の近接場を介したモード間結合と本質的に同じであることを見出した。SEMの中で一つ一つ粒子を操作して結晶構造を構築するという手法は他に例が無く、フォトニック結晶研究者に強い衝撃を与えた。さらに、その自由度の高さによって、二層構造を作製することができ、新たな現象の発見につながった。この手法は現在、化合物半導体の格子を組上げる研究にも用いられていて、フォトニック結晶一般への応用が期待されている。 |
C | 表面プラズモンの観察:SNOMと暗視野顕微法を組み合わせて、表面プラズモン伝播の実空間観察を行い、これを定量的に解析することにより、金属薄膜の不均一さが波の伝播にもたらす影響を解明した。 |
D | 金属微粒子の局在プラズモン散乱:SEM観察によって、その形・大きさが既知の銀微粒子の局在プラズモン散乱スペクトルを観察し、理論と半定量的な一致を見た。従来このような研究は、多数の粒子の統計平均として行われてきたが、個々の粒子による研究は本例が初めてである。 |
@ | ポイントコンタクトにおける磁化依存伝導:Niのポイントコンタクトにおける量子化伝導が磁化に依存することを、Curie点上下、磁場の有無の組み合わせで明確に示した。 |
A | 絶縁体・金属転移の可視化:光励起によって遷移金属酸化物の絶縁体を金属へと相転移させ、差分反射顕微法によって実像観察することに成功した。相転移自身はすでに知られていたが、これが実空間でどのような配置になっているかを可視化した。 |
B | 磁気力顕微鏡の開発と薄膜の磁区観察:FM変調法による磁気力顕微鏡(MFM)を開発し、磁性酸化物薄膜の散漫相転移の磁場、履歴、温度依存性などを明らかにした。 |