1) |
ニワトリ松果体細胞が分泌するメラトニン量には日周変動があり、メラトニン分泌系は時計出力系の一つとして広く認知されている。しかし、メラトニンの分泌機構は未だに不明であるため、分泌経路の要であるゴルジ体に着目し、ゴルジ体機能の可逆的な阻害剤であるブレフェルジンA(BFA)を投与することにより、メラトニン分泌過程におけるゴルジ体及びゴルジ体由来の分泌小胞の役割を解析した。 その結果、@メラトニンは、ゴルジ体由来の分泌小胞を介さずに、形質膜を直接透過するか、もしくは形質膜上のトランスポーターを介して分泌されること、Aメラトニンの分泌量がBFA除去直後に低下し、この主な原因は、メラトニン合成系酵素の一つ、N-アセチルトランスフェラーゼ(NAT)活性の低下であることを明らかにした。BFA除去によってNATのmRNA量は減少しないことから、NAT活性の抑制は蛋白質レベルで起こる酵素活性の低下に起因することが示唆された。 |
2) |
マウスPer1遺伝子(mPer1)の発現量は、マウス脳の視交叉上核(SCN)において約24時間周期のリズムを示すことが知られている。そこで、SCNニューロンの初代培養系を用い、蛍光顕微鏡下で生きた単一SCN細胞の時計発振を可視化することを目的に、mPer1の上流配列(プロモーター領域を含む)にレポーターとしてd1EGFP(改変型GFP)を繋ぎ、これを用いてトランスジェニックマウスを作成した。 |
3) |
単一SCN細胞の時計発振可視化、及び時計機能解析のための顕微鏡システムを構築した。これは「GFP可視化技術」と「セミインタクト細胞系」をカップルさせた「単一細胞顕微測光アッセイシステム」である。本システムでは、光学顕微鏡下の単一細胞内で起こるGFP融合タンパク質の輸送・ターゲティング・相互作用や、レポーターとしてのGFPの発現を定量的に解析できる。また、セミインタクト細胞系の利点を生かし、昼・夜の状態の細胞質をセミインタクト細胞内に導入することで、細胞内環境を一時的に昼・夜の状態に同期させ、概日時計の生化学的再構成実験の構築が可能になる。 |