研究課題別中間評価結果

1.研究課題名
高温運転メタノール直接型燃料電池の開発
2.研究代表者
渡辺 政廣 山梨大学 クリーンエネルギーセンター 教授
3.研究概要
 高温作動(〜150℃)可能なメタノール直接型燃料電池(DMFC)を実現するため、(1)耐食性が優れ、かつ高活性な合金電極触媒設計指針を確立し、高性能ガス拡散電極を開発する。また、(2)この条件下でも、導電性が高く、メタノール浸透が抑えられるハイブリッド膜やコンポジット膜を開発し、この膜中にさらに微量、超高分散した白金触媒でメタノールを酸化除去できる新しい電解質を開発する。
4.中間評価結果
4−1.研究の進捗状況と今後の見込み
 現在、自動車用あるいは家庭用として、近く実用化が見込まれる燃料電池は、PEFC(固体高分子型燃料電池)と呼ばれるもので、電解質である高分子の耐熱性が十分でないため、100℃以下程度の低温でしか運転できない。これに較べて150℃程度の温度で作動できるDMFC(メタノール直接型燃料電池)は、自動車用はもとより、携帯機器用、排熱の利用が容易なのでコージェネレーション用等の用途に適している。開発にあたっては、高温作動が可能な電解質膜と白金を用いない触媒の開発が急務である。特に、触媒の評価法すら確立されていなかったのが現状であったが、このグループが開発した「加圧型薄層フローセルによる合金電極触媒固有活性評価法」は初めてこれを可能にした。この業績は画期的であり、直ちに多数の触媒を評価して、メタノール酸化触媒の作用メカニズムを明らかにする成果を挙げた。更に、このグループが開発したボロシロキサン膜はこれまでにない材料で、極めて有望である。また白金高分散膜によるメタノールの酸化促進・直接浸透(クロスオーバー)阻止技術も大きな成果である。

 研究代表者の指導よろしきを得て、テーマを分担した各グループが、よく協力しあい着実に成果を挙げつつあり、今後も大きな発展が期待できる。

4−2.研究成果の現状と今後の見込み
 以上のように高温高圧の運転条件下で、触媒活性の評価を比較的簡便に行う方法を確立したことがその後の発展に大きく寄与している。各グループの協調体制がよく保たれており、当初計画どおりに研究は進捗している。今後も順調に成果を挙げ続けるだろう。
4−3.今後の研究に向けて
 DMFCの研究は世界でも例が少なく、まちがいなくこのグループが世界のトップを走っているようだ。内外の研究者の評価も高い。各グループの成果の単なる足し算だけでなく、今後とも融合の効果、掛け算の効果を出して欲しい。このグループならそれも充分可能だろうと期待している。
4−4.戦略目標に向けての展望
 「資源循環・エネルギーミニマム型社会システムの構築」という戦略目標から考えると、実用化に向けて、発電効率の飛躍的な向上を目指して欲しい。
4−5.総合的評価
 膜・電極一体型のような超薄型燃料電池はマイクロ電池の可能性など、現在までに得られた知見は極めて優れており、独創性に富んでいる。今後は期間内の実用化を目指して次第に焦点を絞って欲しい。

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This page updated on September 12, 2003
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