研究課題別中間評価結果

1.研究課題名
機能環境流体を利用した資源循環・低エミッション型物質製造プロセスの創製
2.研究代表者
生島 豊 産業技術総合研究所 超臨界流体研究センター チーム長
3.研究概要
 超臨界水と超臨界二酸化炭素を媒体として利用するだけでなく、反応基質、触媒として全く新たな可能性を追求するとともに、独自に開発した分光学的その場測定法を駆使して溶媒機能や反応性の発現機構の解明を世界に先駆けて行い、基礎と応用の有機的な連携のもとで新たな化学反応の構築、物質製造法の創製に成功した。
4.中間評価結果
4−1.研究の進捗状況と今後の見込み
 この研究は超臨界水及び超臨界二酸化炭素について、これまでにも行われてきたような溶媒としての機能ばかりでなく、触媒のような機能で化学物質の合成あるいは分解の反応を起こさせることを狙っている。在来の研究では、分解反応は可能でも合成反応は難しいと考えられてきたが、本研究では超臨界水にマイクロリアクターシステムを適用して、シクロヘキサン水溶液からカプロラクタムの合成に成功している。超臨界二酸化炭素については、過去にダイオキシン抽出の目的で研究されたが成功していないなど、その抽出、合成の溶媒としての適性に多少疑問もあるが、一応、計画どおりに進捗していると判断した。計測法についての説明不足も感じられるが、手法の変更は必要ないと判断している。
4−2.研究成果の現状と今後の見込み
 マイクロリアクターを用いてナイロン6の原料であるカプロラクタムを無触媒・高収率で合成するなど、世界的にも反響を呼ぶであろう基礎的研究成果は得られており、ブレークスルーする可能性を秘めている。エネルギー効率、使用材料のコストを含めた実用化への道筋を探る必要があろう。ただ、目標のレベルが高く、達成に疑問が残るとの厳しい意見も出されており、脇を固める必要がある。研究組織も産総研と東北大、北大とややクローズされた感が否めない。
4−3.今後の研究に向けて
 超臨界流体は世界中の研究者が興味を持っている日進月歩の領域であり、未知の部分が大きいが、このグループは、これまでも日本で最も成果を挙げてきたグループである。その意味で現在のグループ構成を拡大することには、当事者たちは反対であろうが、領域アドバイザーの多くがグループのオープン化を指摘した。早期の実用化を考えると、もう少し産業界を加えたメンバー構成にすることをアドバイスしたい。
4−4.戦略目標に向けての展望
 「資源循環・エネルギーミニマム型社会システムの構築」という戦略目標から考えると、資源循環という面からはナイロンの再資源化への可能性を開いたといえるが、実用化に向けて、エネルギー利用効率の検討を進める必要がある。現在はそのような視点が皆無である。
4−5.総合的評価
 超臨界水を用いたマイクロリアクターにより、シクロヘキサンからカプロラクタムを無触媒で短時間に高収率で合成することに成功した意義は大きい。今後、テルペノイドやアミノ酸の合成へと拡大してゆく計画であるが、あまり種類を拡大するよりも実用化への道を探る方が先であろう。水に比し超臨界二酸化炭素の方は基礎研究の段階に止まっており、実用化への道筋も明らかとは言えない。今後、テーマの整理と実用化への具体的な検討が必要のようである。

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This page updated on September 12, 2003
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