研究課題別中間評価結果

1.研究課題名
有機・無機複合光電子移動触媒系の開発
2.研究代表者
研究代表者 福住 俊一 大阪大学大学院 工学研究科 教授
3.研究概要
 本研究では、有機・無機複合系を用いて、光電子移動触媒反応を精密制御し、高効率かつ高選択性を有する新しい物質変換手法を確立するとともに、人工光合成システムを構築することを目的としている。電子移動を経由して反応が起こる場合は、光励起状態も含めて一般に強力な電子供与体および電子受容体の組み合わせに限られる。しかし、触媒を用いてその電子移動活性を向上させることができれば、電子移動を利用する化学反応のスコープを大幅に広げることができ、また精密制御も可能となる。具体的には、有機・無機複合系を用いて、有機分子光励起種と配位不飽和金属錯体と錯形成させることにより、種々の有機化合物との光電子移動触媒反応を精密制御し、高効率かつ高選択性を有する新しい物質変換手法を確立しようとしている。現在最も社会的要請の高い、地球環境保全・省資源・省エネルギープロセスの開発、さらに太陽エネルギーの有効利用および化学的エネルギーへの変換システムの構築が期待できる。
4.中間評価結果
4−1.研究の進捗状況と今後の見込み
 酸素分子の一電子還元により生成するスーパーオキシドイオンの不均化機構をはじめ、金属イオンの電子移動触媒作用を明らかにした。また、フラーレンとポルフィリンを連結した有機・無機複合分子系を設計し、従来にない新しいタイプの人工光合成系の分子を合成した。そして、このものが、極めて長い電荷分離状態を示すことを実証するなど、顕著な業績を上げつつある。極めて順調に研究が進行しており、このまま残りの期間に実績を上げることが出来るものと期待される。
4−2.研究成果の現状と今後の見込み
 電荷分離状態の寿命が1秒に近い人工光合成分子の合成に成功したことは、画期的な成果である。これは電子移動過程を触媒で制御するという、研究代表者らのアイデアが正しい方向であったことを示唆しており、明確な基盤を持った成果と言える。当初の想定どおりの好ましい展開になっている。現在の段階では逆電子移動の制御が途についたばかりであるが、今後の研究によってさらに大きな成果が期待できると考えられる。
4−3.今後の研究に向けて
 現在の所順調に推移しているので、このまま活力を持続していただきたい。
4−4.戦略目標に向けての展望
 本研究は精密な考察に基づく電荷分離状態実現の研究であり、それが当を得ていることに価値がある。戦略基礎研究の名に相応しい活動をしていると言える。後半の成果が大いに期待される。実際、一段と進んだ展開を予見させるアイデアが示されている。それらが実現できるかどうかは、今後の研究によるが、明快な方向性を提案しているところが、期待につながる点である。
4−5.総合的評価
 研究の方向性、研究成果の集積、活発な研究発表、国際シンポジウムの開催等、抜群の成果を上げている。
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