研究課題別中間評価結果

1.研究課題名
人工光物性に基づく新しい光子制御デバイス
2.研究代表者
研究代表者 中野 義昭 東京大学 先端科学技術研究センター 教授
3.研究概要
 本研究チームは、半導体材料の光物性を一原子層単位で設計・制御された人工結晶構造により変革し光能動基本機能ならびに光非線型性を飛躍的に高めること、これに基づいて全光子制御デジタルデバイス/回路を実現しデジタルフォトニクスの基礎を築くことを目的としている。これまで材料プロセス、デバイス、回路システムの各レイヤーから主に実験的アプローチにより研究を行い、新規・独自のプロセス技術、材料、半導体光デバイス、ファイバ光デバイス、光システム、および測定法を創出、開発することに成功している。
4.中間評価結果
4−1.研究の進捗状況と今後の見込み
 本研究チームは全て東大の教官と研究員で構成される。人工光物性に基づくデジタル光デバイスの研究、単原子層MOVPE(Metal Organic Vapor Phase Epitaxy)/集積プロセス技術の研究、人工光磁性材料/スピン機能光デバイスの研究、光物理と光システムの研究、光ファイバハイブリッドデジタル光デバイスとシステム応用の5つのグループで構成される。

 目標の実現に向けて良く努力されており、個々のグループの研究は概ね当初の研究計画通りに順調に進んでいる。本提案の様に、材料・デバイス・システムに亘る研究グループは少ないので、システム構成上の観点からの評価を加え、人工光物性に基づく新しい光子制御デバイスとしての視点を維持し、研究を継続して欲しい。

4−2.研究成果の現状と今後の見込み
 MOVPEにおける成長シミュレーションとその妥当性の実験的検証、磁性半導体の研究におけるGaAs:MnAsナノクラスターの発見とその特異な磁気光学特性および光アイソレータへの応用の可能性、電界吸収型(EA)光変調器、光フリップフロップ、サブ20fsの超短パルス形成技術の開発、光ファイバー波長変換器、Dual mode DFB(分布帰還型,distributed feedback)レーザーによる波形再生器など個々のグループの成果の科学的、技術的インパクトは比較的高い。
 人工光物性の観点で新規性が特に高いと思われたのは人工光磁性材料であり、適切なデバイスとしての実証でよりインパクトが出てくると期待される。
4−3.今後の研究に向けて
 個別グループのレベルは高く数多くの成果は出ているが、当初の狙いであるデジタルフォトォトニクスの実現に向けての各分野のグループの戦略的な取り組みの点では不十分と映る。残りの研究期間で当初の目標の下、何がシステムとして実証できるかを再検討し、デジタルフォトニクスの実現に向けてシステム構成要素としての評価を欠かすことなく集中した方が良い。
 本研究チームは全員が同一機関に所属しているという他に例を見ない特徴を有効に利用して連携を密にし、グループ間の研究内容のつながりをより強めてほしい。
4−4.戦略目標に向けての展望
 ネットワークの広帯域化への要求はますます増大しており、本提案のデジタルフォトニックネットワーク開発の必要性は増大している。この機に、人工光物性に基づく新しい光子制御デバイスの研究に集中し、個々にブレイクスルーを狙う中それらを「デジタルフォトニクス」へ向け戦略的に束ねるという点で一層の努力を期待したい。

 研究者はともすればチャンピオンデータを追うのが楽しいが 本提案では特にシステム的観点からの評価、実証が重要であり、この事は常にメンバー内で確認しておく必要がある。磁性半導体結晶の開発も完全を狙ったら際限がなく、不十分でもデバイス実証を試みることが重要で、そうする事により新たな問題点が見えてくる。

4−5.総合的評価
 個別デバイスの研究としては、各々大変優れているが、研究対象である光デバイスに対するシステム構成要素としてのアセスメントが十分ではなく、システムとしてどのようにして組み合わせるかという点では先が見えにくい状況となっている。システム系のグループはもっと積極的にデバイス系グループのプロトタイプデバイスについて評価すべきである。

 しかし本提案の様に材料・プロセス・デバイス・システムに亘る研究グループは少ないのでシステム構成上の観点からの評価も加え、各分野間の有機的な技術の受け渡しがうまく行くようにテーマを重点化すれば成果が期待される。

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