研究課題別中間評価結果

1.研究課題名
心が通う身体的コミュニケーションシステム E-COSMIC
2.研究代表者
渡辺 富夫 岡山県立大学 情報工学部 教授
3.研究概要
 うなずきや身振りなどの身体的リズムの引き込みをメディアに導入することで、対話者相互の身体性が共有でき、一体感が実感できる身体的コミュニケーションシステムを開発する。本システムは、身体的コミュニケーションを合成的に解析する身体的バーチャルコミュニケーションシステムと音声に基づく身体的インタラクションシステムから構成される。システム開発を通して身体的コミュニケーションを解明し、身体的コミュニケーション技術の確立を図る。
4.中間評価結果
4−1.研究の進捗状況と今後の見込み
 頷きなどの身体的コミュニケーションの合成的解析・理解のためのシステムの開発が行われた。成果は興味深いデモンストレーションシステムにまとめられており、当初の計画通りの進捗状況といえる。コミュニケーションの円滑化を図る研究は種々行われているものの、頷くなどの身体的コミュニケーションの研究は高い独創性があり、世界でもユニークな研究であろう。

 仮説に対する検証、評価がやや弱く、客観的、科学的な評価手法によって説得力を増す工夫が必要と思われる。今後は工学だけではなく心理学などのエキスパートの研究協力者を得て、人間の心に基づくこのシステムの評価や原理の解明を進める必要があろう。

4−2.研究成果の現状と今後の見込み
 実際にロボットを作って多くの場で公開、テストを繰り返しており、単なるプロトタイプではなく玩具への応用として製品レベルの成果が出ている。現状はかなり興味深い成果が出ているが、当初の計画を超えて今後の展開につながる方向性を見いだして欲しい。

 学問的な成果もさることながら、このシステムを生かせる用途を探し出し、実用化へ集中するという方向も検討する必要がある。この研究が有効に働く分野はあるはずなので、それを出来るだけ多く探し出し、そこで使ってみて人々が喜ぶことを確かめるといった方向をとるのも社会的インパクトは大きいだろう。

4−3.今後の研究に向けて
 うなずいたり身振り手振りをしたりする側がコミュニケーションの内容を一切理解していないのであるから、この方式には自ずと限界があるはずである。どこまでできるか、限界はどこかを見極めることが大変重要である。
4−4.戦略目標に向けての展望
 コミュニケーション研究に新しい切り口とツールを提供することになり、科学的・技術的インパクトは大きいだろう。応用面で有効性が認められれば大きな成果となることが期待できる。携帯電話への応用や福祉・介護への応用あるいはロボットのヒューマンインタフェースなどはこれから新しい展開になると思われる。
4−5.総合的評価
 この研究の基本的な部分は、「人間が話しているときに、その話の切れ目で相手(ロボット)がうなずいたり身振り手振りをしたりすると、コミュニケーションが進む」という発想にもとづいている。これまでの研究はこの発想の意義を徹底的に追求してきており、コミュニケーションの一面の真実をあきらかにしつつあると評価できるが、原理とか基本メカニズムが見えにくい分野であり、今後大きく発展するには理論的な基盤をもって汎用化技術にする必要がある。

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This page updated on September 12, 2003
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