研究課題別中間評価結果

1.研究課題名
高度メディア社会のための協調的学習支援システム
2.研究代表者
三宅 なほみ 中京大学 情報科学部 教授
3.研究概要
 認知科学の学びの理論に基づき情報メディア技術を駆使して、旧来の教授システムに代わる学びの革新的な支援方法の創成を目指す。学ぶべきコンテンツと、インターネットやマルチメディアを利用して形成された学習支援環境と、それらを活かすためのカリキュラムを組み合わせて、新しい協調的な学びの場の提供を目標とする。

 これまでに「マルチメディア素材を扱えるノート共有吟味環境」、「知的創造活動に必要なすべての素材が互いにリンク可能、且つコメント可能であるノートスペース」を開発してきた。現在それらを使って学部学生を対象に認知科学を協調的に教える実践研究を進めている。

4.中間評価結果
4−1.研究の進捗状況と今後の見込み
 当初の計画に沿って着実に前進していると思われる。特に実践開発グループの協調的学習支援方法の研究と情報利用技術の開発では、教育現場での実践的実証に基づいた研究展開が行われており、教育学、認知科学、情報技術の境界領域での新しい知見が得られつつある。大規模な数の学生を相手に実践的な研究に取り組むのは非常にユニークである。

 教育に関する研究は本質的に難しいことであるということから、ゴールとそこへの道筋がそれほど明らかでなかったが、このあたりで研究のターゲットをはっきりさせて、そこへ向けて努力を絞ってゆく必要があろう。

4−2.研究成果の現状と今後の見込み
 協調学習の考え方にもとづく認知科学のカリキュラムとそれにそった講義を目に見える形で実現しつつあり、認知科学の関係者も協調学習の関係者も成果を享受できるものである。これまでになかった教育のスキームであり、学生にとって種々の点から刺激となり勉強になるものである。

 今後は新しい研究成果もさることながら、現在のシステムの改良と確立が期待される。洗練されたシステムを完成し、熱意のある教師が教材をうまく作って用いれば、非常に教育効果のあがる未来型教育方法である。この協調的学習の重要性が広く認識され、学校教育の方法が徐々に変わってゆくことを期待したい。

4−3.今後の研究に向けて
 認知科学のカリキュラム全体を詳細に完成させたい。また、これを実現するシステム環境、特にソフトウェアを工学的にしっかりまとめ、最後にはこのカリキュラムをどこの大学でも再現できるようにすること(教師の能力に関する部分はさておいて)をこの研究の最終目標として、そこまで完成度を高めていただきたい。
4−4.戦略目標に向けての展望
 今までになかった教育法の試みであり、認知科学をベースとした教育の方法、システムの構築を高等学校及び大学における実践の場で検証しながら進めている。このような教育システムを用いることによってすばらしい教育効果の上がる教育方法が社会に明確に提示されるところに大きな価値がある。
4−5.総合的評価
 教育の分野は自然科学や工学とちがって目標を明確に立てにくい上に、どこまで進んだかを明示し、また判断することは難しい分野である。考え方、手法としてこれまでにないものを提案してかなりの成果を挙げており、情報化社会の未来の教育法として非常に価値の高い研究である。今後の学校教育の方法論としてさらなる展開を期待する。

<<高度メディアトップ


This page updated on September 12, 2003
Copyright(C)2003 Japan Science and Technology Corporation