研究課題別中間評価結果

1.研究課題名
デジタルシティのユニバーサルデザイン
2.研究代表者
石田 亨 京都大学大学院 情報学研究科 教授
3.研究概要
 「デジタルシティを、健常者だけでなく、高齢者や障害者も利用・参加できるものにすること」を目的とする研究を行う。具体的な技術課題としては、「知覚情報基盤」と「社会的エージェント」について研究し、それらがユニバーサルデザインに寄与することを「実証実験」を通じて検証する。知覚情報基盤の研究では、全方位センサネットワークによる環境構造のモデリング機能と、それを通じて得られる大量の実空間データを効率的に検索できる映像都市空間システムを実現する。社会的エージェントの研究では、危機管理などに用いることのできる仮想都市空間システムの開発と並行して、エージェントの社会的役割を解明するための社会心理学実験を実施する。実証実験では、環境学習システムや危機管理システムの開発を行い、それを通じて様々な要素技術を統合するユニバーサルインタフェースを構築する。
4.中間評価結果
4−1.研究の進捗状況と今後の見込み
 当初計画以上に様々な研究が活発に行なわれ、成果が着実に出ている。複数のテーマで既に基本的なシステムが出来上がっていて、実証実験が実社会の中で行われ始めていることを見ても、この研究の推進理念が「使える技術」を指向していることを標榜しているだけに留まらず、技術レベルも研究室レベルから実社会レベルへ向かいつつあることを意味する。すなわち、実社会を志向した逞しい技術としての成果が出始めていることのエビデンスの一つと考えられる。

 基盤技術にも着実な進展が見られ、世界中でさまざまのデジタルシティ研究開発が進行している中で、本研究で開発された基盤技術が今後国内外の類似研究で活用され、実社会に適用されていくことが期待される。

4−2.研究成果の現状と今後の見込み
 京都市をモデルとしたデジタルシティの枠組みができあがっており、地域情報検索システムの韓国語版への取り組みなど、新しい展開も生じている。都市での危機管理として京都市地下鉄での避難誘導実験が実世界での実験的実装が行われており、一方では郊外での環境学習等を題材とした実証実験が進んでいるなど、研究の現場が研究室から「現場」へ展開されつつある。このような実証実験を通じてデジタルシティのコンセプトが明確になりつつある。

 技術開発に留まらず、スタンフォード大学との社会心理学実験など社会学的見地から実証しているのはユニークである。さらに他分野(危機管理、学習など)にそれぞれの分野での新しい方法論を提供する技術開発に向かっており、技術的インパクトは高く実用面での意義も大きく、今後の成果の具体的な応用について十分に期待できる。

4−3.今後の研究に向けて
 デジタルシティの展開は順調に進んでいると思われるが、今後は研究課題の重要なキーワードである「ユニバーサルデザイン」についての具体的な進展も期待したい。
4−4.戦略目標に向けての展望
 戦略目標を受けて設定された研究領域の課題:「高度メディア社会」の「生活情報技術」に対して最も一致したテーマであり、広い意味での地域情報の提供及び利用方法に関する高い成果は社会の種々の場所で応用の可能性がある。この成果が本格的に京都のような都市に受け入れられれば、社会生活も変わってゆく可能性もある。
4−5.総合的評価
 将来の社会生活、教育等を支える健全で明るい基盤技術を与えるもので、知識社会の実現のための不可欠な研究である。複数のテーマが並行して進み、それぞれが社会に受け入れられ、使われてゆく可能性のある技術を開発して成果を挙げている点は高く評価できる。また、研究アクティビティの世界にむけた情報発信にも積極的で効果が上がっている。大規模な実証実験と基礎研究を同時並行的に進める手法も成功しつつあるように見え、今後の研究に一層の期待をしたい。

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This page updated on September 12, 2003
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