研究課題別中間評価結果

1.研究課題名
文化遺産の高度メディアコンテンツ化のための自動化手法
2.研究代表者
池内 克史 東京大学大学院 情報学環 教授 
3.研究概要
 文化遺産の画像情報、形状情報を自動的に処理し、高度メディアコンテンツへと変換する手法の研究を進めている。具体的には、鎌倉の大仏や人間国宝の匠の技といった文化遺産をテレビカメラや距離センサーを用いて観測。この画像データをもとに最新のコンピュータビジョンの研究成果を用いて、幾何情報、光学情報、環境情報、時系列情報といった4つの側面からのモデル化を行う。
4.中間評価結果
4−1.研究の進捗状況と今後の見込み
 当初の研究計画に挙げられていた全ての項目について進行が図られ、順調に推移している。部分的には当初予想以上の進展をみせている。特に多数の画像データからの立体幾何情報の自動取得法、透明物体の計測技術、テクスチャマッピングの手法など今までになかった幾つもの技法を創出し、特徴のある成果が得られている。また、「見え」の表現や光源環境のモデル化など光学情報に関する研究は学術的にも高いレベルにある。
 複数のテーマが並行する研究であるが全体がバランスよく進められており、今後の進展に期待したい。
4−2.研究成果の現状と今後の見込み
 基本的な処理過程、それぞれの過程における方法論、アルゴリズム、装置、プログラム等が出来上がっている。これらを用いて鎌倉大仏、奈良大仏、石舞台古墳、龍門石窟(中国)その他多くの国内外の文化遺産についてデジタルアーカイブ化を実施し、多様な文化遺産への適用性が実証された。文化遺産は多種多様であり、多くの対象に適用することによってこの研究の対象が一層広がることが期待される。

 文化遺産のみに限らず3次元物体の情報取得・保存・再現技術として広範囲に適用できる可能性があり、新しい文化の形成への貢献が期待できる。

4−3.今後の研究に向けて
 動き情報の取得に関する研究については、どのような情報を取得し、どのような形式で蓄積しておけば後世に伝承できるのか、どのような形で再現できるのか、今後の研究の進展を期待したい。
4−4.戦略目標に向けての展望
 貴重な文化遺産の情報取得、解析、保存及び提示を可能とする技術は、情報技術を文化に結びつける重要な成果として社会にインパクトを与えつつある。
 更には文化遺産や無形文化財の新しい保存方法を提供するのみならず、広く3次元物体を対象とする学問や技術分野に新しい研究方法論を提供することが期待される。
4−5.総合的評価
 文化遺産のデジタルアーカイブに関する研究としては世界最先端を行く研究と考えられる。大規模な遺跡に新しい技術を適用してコンテンツ化を実践するなど、研究は順調に進展し、多大な成果を挙げていると高く評価できる。得られたメディアコンテンツ化のための自動化手法やシステムを広く公開し、世界各国で文化遺産のデジタルアーカイブに貢献できればこの研究の意義は非常に大きい。今後の研究の進展及び成果は十分期待できるものである 。

<<高度メディアトップ


This page updated on September 12, 2003
Copyright(C)2003 Japan Science and Technology Corporation