研究課題別中間評価結果

1.研究課題名
温暖化ガスにかかわる永久凍土攪乱の抑制技術開発
2.研究代表者
研究代表者 福田 正己 北海道大学低温科学研究所 教授
3.研究概要
 地球温暖化に大きな影響を及ぼすCO2とCH4がシベリアを中心とする永久凍土地域から放出されている。森林火災や伐採によるシベリアタイガの消失とそれに起因する永久凍土の大規模融解によって、これらの温暖化効果ガスが大気中に放出される過程とその発生メカニズムを現地調査により明らかにした。同時に永久凍土の融解と凍結の繰り返しを受けて、永久凍土地帯に埋設された天然ガスパイプラインが地上に露出し、亀裂が生じて大量のCH4が漏出している。これらの事象の将来に及ぼす影響予測のモデル化を行うとともに、森林火災の発生を未然に防ぐ新たな手法を確立するため、衛星画像解析による火災発生検知とCO2拡散予測モデルを開発した。他方、天然ガスパイプラインからのメタンの漏洩を防止する新たなパイプライン敷設工法を開発するため、永久凍土地帯における実規模野外実験を実施し、必要なデータを取得した。
4.中間評価結果
4−1.研究の進捗状況と今後の見込み
 森林擾乱によるCO2の発生というテーマと天然ガスパイプラインからのCH4漏洩というテーマは、互いに独立した事象であるが、永久凍土の特性という点で、又、地球温暖化ガスの放出という面で共通性がある。福田チームは、この2つの事象について2つのグループで研究を進めている。
 森林擾乱によるCO2の発生というテーマでは、シベリア・ヤクーツク郊外における火災などの森林撹乱に基づくCO2収支の変動について、3カ年の観測を実施した。撹乱を受けた跡地と撹乱を受けていない森林に、それぞれ観測タワーを設置し、5月から10月までの連続計測を実施、CO2とCH4のフラックス、エネルギー、水及びバイオマスの収支を計測している。
 一方、パイプラインからのCH4の漏洩については、永久凍土と季節凍土の隣接するアラスカ・フェアバンクス郊外にサイトを設定し、凍上時のパイプラインの挙動について観測している。今後は融解時の挙動についても観測する。
4−2.研究成果の現状と今後の見込み
 森林擾乱によるCO2の発生というテーマでは世界で初めて、シベリアにおけるCO2、メタンフラックス等の定量化に成功した。攪乱前後で森林にストックされる炭素量が変動すること、又、多数のボーリング調査から明らかになったことだが、永久凍土上層部に極めて高濃度に貯留されたCH4が凍土の融解によって放出されることなどが確認され、衛星画像解析と併せて温暖化ガス発生量の広域的な推算アルゴリズムがほぼ確立された。森林火災発生の抑制と火災跡地の修復技術についても2002年度の達成課題としている。
 天然ガスパイプラインからのCH4漏洩というテーマでは凍土側で固定されたパイプが季節凍土の凍上変位で大きな歪みを受けること、及び季節凍土側の凍上量の残留によって、永久凍土側のパイプが夏期に予想以上の大きさで上方に跳ね上がり地表に露出することなどの新たな知見を得ている。今後更にデータを加え、適切な対応策の提案を行う。
4−3.総合的評価
 シベリアの森林地帯における苦労の多い実験計測によって、従来にない多くの知見が得られていることに高い評価を与えたい。計画期間内にその成果を温暖化ガスの発生モデル、及びパイプラインからのCH4漏洩の予測とうまく結びつけることを期待している。テーマが多岐にわたっており、それぞれの着地点をよく考えておく必要がある。
 得られた成果を詳細に、かつ速やかに公表し、この研究の成果が他の永久凍土地域(カナダ、北欧など)にも適用できるか否かを明らかにしてゆくことが今後の課題であろう。同時に特に政府間の情報交流に役立ててほしい。
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