内分泌かく乱物質の健康リスク評価を行う場合、食品中に多量に含まれる植物エストロゲンの存在を無視する事は出来ない。大豆食品摂取量の多い日本人にとっては、特に重要な問題である。両者間の作用機構の差異、両者間の相互作用による内分泌かく乱作用の質的・量的変化の有無を確認する事が必須である。
本研究では、植物エストロゲンと人工化学物質間の作用機構の差異、及び両者間の相互作用の解明を目標とする。 |
植物エストロゲン及び人工化合物の作用を、様々な視点から分子レベル、細胞レベルで調べると共に、疫学研究を実施中である。これまでに生体試料中の植物エストロゲン分析法を確立する等、多少の結果は得られているが、全体的な研究はこれからである。国内外で同様な研究が少なく、その点では貴重な研究である。疫学調査での一層の工夫と作用機構解明等の基礎研究の充実を図り、今後の速やかな成果達成に期待したい。
植物エストロゲンのヒトへの健康影響は、人類生態学的な比較検討を必要とし、世界的にみてもあまり研究は進んでおらず、貴重な研究として成果を期待したい。 |
植物エストロゲンの種類によって結合する受容体のサブタイプと作用が異なる事、Ramp2遺伝子発現を介してアドレノメジュリン情報伝達系と関連する事、妊娠時の貧血の成因にエストロゲンが関与している事等の幾つかの基礎的新知見を得ており、今後の展開に期待したい。
植物エストロゲンに関する疫学調査研究(コホート研究)は、大豆製品について骨粗鬆症との関連で既に報告があるが、本研究チームで開発された新規分析法によりその代謝体を含めたイソフラボン化学形態別濃度測定も可能になっているので、従来のコホート研究に比較しさらに科学的な成果が期待出来る。植物エストロゲンの健康影響への知見が得られれば、日本人の食生活の妥当性等を判断する資料が得られる事になり、その点でのインパクトは大きい。 |
植物エストロゲンは食物を介して日常的に摂取しているだけに、これらの作用の解明は極めて重要である。しかし、我々が日常的に摂取している物質群に対する研究であるだけに、疫学調査、解析に必要な基礎研究は、人工化合物に対するそれと比較して、格段の困難を伴うのも事実である。現在、一応の成果を上げつつあるので、今後の成果に期待したい。
植物エストロゲンと他の人工化学物質との生理作用の相違を明らかにする事は実用的にも重要であり、今後の基礎研究の充実に期待したい。 |