研究課題別中間評価結果

1.研究課題名
エネルギー変換機能を有する無機超分子系の構築
2.研究代表者
研究代表者 堂免 一成 東京工業大学 資源化学研究所 教授
3.研究概要
 エネルギー変換機能を有する触媒系、特に無機物質を基盤とした光エネルギーによる水の全分解触媒系の開発を目的としている。そのために新規材料の探索・機能評価を実験的に行なうとともに、新規物質の電子状態を理論的に検討し、側面からサポートする体制をとっている。これまでの結果、全く新しい物質群、新規な構造体の開発等を行うことができ、エネルギー変換機能を有する無機超分子系の構築という目的に対し、多くの進展が得られた。
4.中間評価結果
4−1.研究の進捗状況と今後の見込み
 本研究の主たる目的は、可視光照射下で作動する水分解光触媒系の構築である。そのための新規な物質の探索、新規な構造体の開発を行っている。研究開始当初は、それまでに検討を行っていた層状複合酸化物の可視光応答化およびメカノキャタリシスの検討を行っていたが、その後、オキシナイトライド系およびナイトライド系というこれまで光触媒としては全く用いられていなかった物質群が、可視光照射下での水分解に非常に有望であることを発見し、研究の主力をこの研究にシフトさせている。従来の金属酸化物光触媒は酸素最外殻軌道の特性のためにバンドギャップエネルギーが高く、可視光では水を分解することができないが、本研究では計算化学の手法によって窒素が結合した遷移金属化合物が水の可視光分解に有望な材料であることを見出し、窒素とTa5+、Ti4+、Nb5+等の遷移金属からなるナイトライド、オキシナイトライドの合成、光触媒反応によってこれを実証した。また、メソポーラス構造を有する遷移金属酸化物が、光触媒として従来のバルク型材料よりも高活性を示すことを見出し、このような新規構造体の構築法についても詳細な検討を行っている。
4−2.研究成果の現状と今後の見込み
 グループとしてオリジナル論文数22件、口頭発表116件(国内93,国外23)、特許出願16件(国内11,国外5)から見ても成果は順調に出ており、今後さらに発展する可能性は高い。光触媒の可視光応答化は、エネルギー変換、環境浄化型両光触媒において緊急の課題であり、多くの研究がなされているが、ほとんどは従来の触媒に遷移金属イオン等をドープする方法であり、特筆される成果は得られていない。本研究グループの最終的な目標は、太陽光(可視光)で水を効率よく分解できる光触媒系の構築である。これまでは、各研究グループが独立に研究を進め、世界的にみてもオリジナリティーの高い反応系の開発をいくつも行うことができたと考えてよい。このグループの研究成果はいつ最終目標に直結しても不思議ではないところまで来ているが、可視光による水の完全分解は残念ながらまだ実現していない。
 今後、オキシナイトライド型光触媒とメソポーラス材料を組み合わせた、オキシナイトライド型のメソポーラス材料の開発、光触媒のキャラクタリゼーション、理論計算による電子状態に関する情報収集などを通じて、「可視光による水の分解」という大目的達成に期待したい。
4−3.総合的評価
 「可視光による水の分解」という大目的は達成されていないが、外堀は着々と埋められつつあるという所か。非常に困難な目的であるので、文字通りの成果を得るのはかなり困難であるが、全分解でなくてもよいとすると期待は決して小さくない。研究途上でいくつかの貴重な知見が得られており、総合的に現段階でも高く評価できる。特に、ナイトライド、オキシナイトライド系の光触媒の発見は可視光応答による実用性のある水分解に向けて更なる発展が期待できる。
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