研究課題別中間評価結果

1.研究課題名
生体のエネルギー変換・信号伝達機能の全構築
2.研究代表者
研究代表者 小夫家 芳明 奈良先端科学技術大学院大学 物質創成科研究科 教授
3.研究概要
 調製が容易で、特性調節の可能なユニット分子が自動的に集まってシステムを構築する仕組みにより、光合成、呼吸などの外部エネルギーの変換、脳・神経の信号伝達・レセプターなど生体の根幹機能を超分子科学的に発現させ、更には生体を上回る人工機能体を目指した基礎・展開研究を行っている。これまでは研究を、エネルギー変換機能、ナノサイズ分子配線への展開、信号伝達系の人工的構築のテーマに絞って取り組んでいる。この関連から分子配線、分子はんだを得て、分子エレクトロニクス構築への端緒を開いた。
4.中間評価結果
4−1.研究の進捗状況と今後の見込み
 イミダゾリルポルフィリン亜鉛二量体錯体の生成を基礎にして巧みな系を構築している。大環状12量体の合成に成功し、光合成中心錯体の類似体の合成へ、また、アンテナ機能を持つ錯体合成へと研究は着実に進展しているといえる。実際、研究は当初計画を上回る形で進行している。
 アンテナ錯体の大環状モデルについて励起エネルギー移動速度や効率の検討が必要である。今後、光物理の専門家との協力もより必要になろう。また、完全な膜固定人工光合成細胞系の構築も期待できる。目指している電子−プロトン共役輸送についても最近設計通りのイミダゾール置換ポルフィリンの合成に成功している。
 研究の発展として、励起エネルギー、電子伝導能のあるポルフィリン連鎖体を用いて直線及び薄膜面状に数百nmの分子配線が可能となった。
4−2.研究成果の現状と今後の見込み
 グループとしてオリジナル論文数38件、口頭発表170件(国内140,国外30)、特許出願6件(国内5,国外1)から見ても成果は順調に出ており、今後さらに発展する可能性は高い。本研究者は明快な目標を持っており、今後の高い機能を持つ分子複合系の構築に向けてほぼ準備が整ったといえよう。
 得られた系のデバイスとしての発展を計画しているが、物理デバイス系研究者との共同作業が必要であろう。合成面からは高度共役ポルフィリン連鎖体を用いて、高伝導度化、励起エネルギー移動の効率化を図ることも重要である。これにより、より優れた非線形光学材料が得られると期待される。
4−3.総合的評価
 当初目標通り手堅く順調に研究が進行している。安心感のある研究であり、期間内に多大な成果を得ることが期待できる。今後は、突出した成果を目指して進むべきであり、バイオミメティックケミストリーにブレークスルーをもたらしてほしい。
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