研究課題別中間評価結果

1.研究課題名
生体分子解析用金属錯体プロ−ブの開発
2.研究代表者名
松本 和子 (早稲田大学理工学部 教授)
3.研究概要
 希土類金属錯体を蛍光プロ−ブとし、時間分解蛍光測光と組合わせると、プロ−ブを結合させた分子は、従来のいかなる検出方法より2〜4桁下の濃度まで検出できる。この時間分解蛍光検出法を各種の分析方法、特にバイオテクノロジ−に適用できるシステムを開発することが、本研究の目的である。具体的には、1)新しいラベル剤の合成、2)イムノアッセイへの応用、3)蛍光共鳴エネルギ−移動法によるDNAハイブリダイゼ−ションアッセイ、4)高速液体クロマトグラフィ−(HPLC)への応用、5)キャピラリ−電気泳動への応用、6)キャピラリ−電気泳動による一本鎖DNAの検出、7)時間分解蛍光分析装置の開発、を共同研究者も交えて実施中である。
4.中間評価結果
4−1.研究の進捗状況と今後の見込み
 希土類蛍光錯体ラベル剤は10年ほど前から知られていたが、蛍光強度が弱くて実用上には問題があった。研究代表者らは新しいラベル化剤を開発することで高感度化に成功し、共同研究者らとともに、研究目標2)のイムノアッセイへの応用、4)のHPLCへの応用による環境ホルモン検出等、応用研究は進展した。ただし、重要な戦略目標の6)のDNAシ−クエンサ−への応用は、多色化に必要なラベル化剤の開発が遅れ気味である。今後研究体制を目的志向的に見直す必要がある。
4−2.研究成果の現状と今後の見込み
 以前より開発されていたラベル化剤を用いて、IgE、メタンフェタミン、サイトカイン等蛋白質、ホルモン、覚醒剤の分析に応用し、いずれも従来法の2〜4桁の感度向上が認められた。また、HIV感染者の血清中のSDF-1濃度測定が可能となり、発症メカニズム解明につながるものと期待される。今後はキャピラリ−電気泳動を用いるDNAシ−クエンサ−の開発に焦点があたるが、前提となるラベル化剤の効率的検索、合成法にも力を入れる必要がある。
4−3.総合的評価
 今までに開発されてきた、ラベル化剤を用いるバイオ分析には非常に高感度であることが実証されたが、本研究を日本発の独創的バイオテクノロジ−として位置づかせるためには、バイオの持つ多面性、多様性に適用していくだけの化合物群(ラベル化剤群)を準備しなくてはならないと考えられる。研究体制の見直しも含めて検討していただきたい。

戻る