研究課題別中間評価結果

1.研究課題名
遷移金属を活用した自己組織性精密分子システム
2.研究代表者名
藤田 誠 (名古屋大学大学院工学研究科 教授)
3.研究概要
 本研究は、合理設計された分子を自発的に集合させることにより、分子や物質を組み立てる全く新しい原理を確立していこうとするものであり、とりわけ配位結合を駆動力とする点が特徴である。具体的には、1)インタ−ロック化合物等複雑な化合物の自己集合による構築、2)内部空孔を有する巨大な三次元化合物の自己集合による構築、3)巨大三次元化合物の内部空孔における新反応及び新現象の探索、4)動的分子集合体、5)多孔性金属錯体の自己集合による構築、6)新しい質量分析手法の開発、を研究している。
 全く新しい自己組織性錯体の合成とその機能発現に関しては研究代表者が、結晶構造解析や質量分析による構造決定、そして得られた錯体の電気化学計測は共同研究者が担当している。
4.中間評価結果
4−1.研究の進捗状況と今後の見込み
 配位結合に基づく自己集合による分子構造体の構築は、すでに10年以上前から世界的に研究が進められてきたが、このチ−ムで金属イオンの選択と適切な配位子の設計により、予想以上に多様な分子構造体を編み出したことは特筆できる。今後はこれら内部空孔を持つ構造体の機能を開発することになるが、物性面にも力を入れれば、新しい化学が拓けると考えられる。
4−2.研究成果の現状と今後の見込み
 Pdの平面四角錯体とポリピリジル系配位子の巧みな選択が、数々の興味ある新規カゴ状巨大分子を創り出した。さらに、これら巨大分子のポケットの中で、新しい重縮合系反応や、効率的化学反応等を見出している。今後はこれら巨大分子の持つ機能を、単に化学反応にとどまらず電子素子や酵素機能へと展開することになろうが、ブレ−クスル−の見込みは大きい。また、共同研究者の開発したコ−ルドイオンスプレ−法MSは、錯体の構造だけでなくバイオ系材料の解析にも役立つことがわかり、近日開発移行の予定である。
4−3.総合的評価
 非常に独創性の高い研究で、孤立空間の内部と外部、それら空間の自在設計が可能となっており、ポケット活用の新しい化学反応が待たれる。世界的にも群を抜く、インパクトのある成果が期待できる。

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