研究課題別中間評価結果

1.研究課題名
金属クラスタ−反応場の構築とクラスタ−触媒反応の開発
2.研究代表者名
鈴木 寛治 (東京工業大学大学院理工学研究科 教授)
3.研究概要
 本研究は、基質の多点配位及び基質との間での多電子移動といった単核金属錯体を凌ぐ機能を有しながら、これまで合成反応にほとんど用いられることのなかった金属クラスタ−を、高効率的な分子変換のツ−ルとすることを目的としている。具体的には、金属クラスタ−に特有な機能を最大限に発揮しうる多核遷移金属錯体分子を設計し、合成するとともに、その反応挙動の解析を通じて得られた情報に基づいて、従来の有機合成反応では達成することのできなかった新しいタイプの合成法、触媒プロセスの開発をめざすものである。その目標達成のため、1)金属クラスタ−合成法の開発、2)金属クラスタ−の反応性制御法の確立、3)金属クラスタ−を反応の場とする新規反応の開発を3本の柱とし、主に1)と2)を研究代表者が実施し、3)については共同研究者がそれぞれ「二次元パラジウムクラスタ−の合成と反応性」、「共役π電子系配位子を持つクラスタ−触媒」及び「超臨界流体を反応場とする高効率触媒反応」のテ−マを担っている。
4.中間評価結果
4−1.研究の進捗状況と今後の見込み
 遷移金属クラスタ−として知られている錯体は、配位子がカルボニルかイソニトリルのものがほとんどで、世界的に見てもヒドリド錯体は研究代表者の独壇場である。このヒドリド錯体に関し、研究目標通り、多核、異核等の多元クラスタ−の合成に成功し、それらの上で起きる多点認識も明らかとなってきた。また共同研究者らもそれぞれの道で、新しい触媒反応の構築をすすめている。今後、多点認識クラスタ−を用いての反応をチ−ム全体の衆知を集め、新規でかつ有用な「触媒」として世に出せるよう進めて欲しい。
4−2.研究成果の現状と今後の見込み
 多核や異種金属の入ったクラスタ−合成、反応挙動(特に炭化水素のC-C開裂)の解明等は、従来の単核錯体ではなし得なかったジャンルを開拓したこととなり、インパクトのある成果である。今後の発展の成否は、反応生成物を金属と切り離す(触媒になる)ことが出来るかどうかにあるが、その可能性はすでに基礎レベルで検証されている。共同研究者らの研究をふまえ、今まで困難とされていた反応を効率よく進めるブレ−クスル−が期待される。
4−3.総合的評価
 クラスタ−による多点認識能は従来より期待されていたことではあるが、本研究で初めて実証された。今後は今まで培ったクラスタ−のデザイン力を基礎に、触媒反応の開発に全力を挙げてもらいたい。

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