研究課題別中間評価結果

1.研究課題名
超臨界流体溶媒を用いた反応の制御と新反応の開拓
2.研究代表者名
梶本 興亜 (京都大学大学院理学研究科 教授)
3.研究概要
 超臨界媒体中での物質の特異な挙動や、それに基づく化学反応が工学的に数多く提唱されている。しかし、その特異性が何故に起きるかの理学的研究は少ない。
 本研究は、超臨界流体溶媒中の溶媒和構造を解明し、溶媒和の制御を通して化学反応をコントロ−ルすることを目標としている。具体的には、1)超臨界溶媒中に溶けた分子への特異な溶媒和構造を分光学的に解明し、さらに、2)その溶媒和構造の経時変化とエネルギ−移動・化学反応との相関の観測を試みる。これらの情報を基にして、3)超臨界流体中での基礎的化学反応の機構を解明し、4)超臨界流体溶媒中での新しい化学反応の開発を目指している。これらの研究のために、5)超臨界水などの過酷な条件下での反応研究に耐える新しい装置の開発も並行して検討している。超臨界溶媒としては、炭酸ガス、CF3Hからスタ−トして、現在は超臨界水が研究の中心となっている。
4.中間評価結果
4−1.研究の進捗状況と今後の見込み
 超臨界流体中に生じる特異な溶媒和構造の解明には、静的にはともかく、動的挙動を見る(特に超臨界水のように高温・高圧下で観測する)ための装置開発が必須である。今まではそれらに適合する装置・方法・条件を整備してきた段階といえるが、その間各共同研究者とともに手分けしてクラスタリングモデルをつめてきた。昨年暮の汎太平洋国際シンポジウムでの発表からみても、国際的に高水準の研究である。今開発中の高温・高圧・流通式NMR装置が完成・稼動すれば一気に世界を抜くことが可能と考えられる。
4−2.研究成果の現状と今後の見込み
 超臨界媒体中での反応の特異性を分光的手法、NMR手法、理論計算、分子の反応性研究等の手法を用いて解明した。その結果、媒体密度の変化により反応挙動が大きく変わることが定量化されてきた。今後上記した動的NMRの稼動によって、反応成分の逐次的な追求が可能となり、今までの仮説の検証、ひいては工学的な現象の解明が出来ると思われ、インパクトのある成果が期待できる。
4−3.総合的評価
 とかく、現象論先行の超臨界反応を分子レベルで理解していく上で、時間はかかるものの、着実に進められていることを評価する。今後は、最も難しいとされる超臨界水の動的挙動を追求することにより、工業的な局面への貢献が期待できる。工学的研究者とも接触を密にするとともに、ここで開発、展開してきた方法論を別な局面に応用することも考えられたい。

戻る