研究課題別中間評価結果

1.研究課題名
異物排除システムの分子基盤
2.研究代表者名
杉山 雄一 (東京大学大学院薬学系研究科 教授)
3.研究概要
 医薬品を含む広範な低分子性異物に対して、生体が免疫機構とは異なる防御機構として獲得した排除機構に関わる蛋白質には、多様性、遺伝的多型の存在、大きな種差、広範な基質認識性という共通の特性が存在する。本研究では、これら排除機構を、1)分子輸送(トランスポーター)による排除機構、2)分子変換(代謝酵素)による排除機構との連鎖、3)異物排除系の臓器相関と体内動態の解明とその制御という観点から明らかにし、将来的には、新しい医薬品の開発への展開を目的としている。現在まで、生体の恒常性を保つのに必須な種々新規排出輸送担体のクローニングと機能解析、蛋白構造と機能の協関、発現調節機構などについて重要な知見を得ている。
4.中間評価結果
4−1.研究の進捗状況と今後の見込み
 新規疾患遺伝子の同定、新規輸送担体遺伝子の同定と機能解析、多剤耐性菌の排出ポンプ発現誘導機構の解析、テトラサイクリン排出輸送担体のシステイン走査変異体の作成など、当初の計画に添って精力的に研究が展開されている。共同研究者の進捗状況も良く、研究全体として国際的に評価できる。特に目立った新たな展開は見られないが、このペースで現在の方向を進展させれば、先導的で、国際的にもレベルの高い成果が期待できる。
4−2.研究成果の現状と今後の見込み
 輸送担体が関与する種々の疾患遺伝子の同定、多剤耐性癌細胞における排出輸送担体発現の亢進、排出輸送担体のシステイン走査変異体の作成等の成果がNature Genetics、American Journal of Human Genetics、Human Molecular Genetics、Journal of Biological Chemistry等に掲載されている他、薬理学、代謝生理学の分野では世界のトップレベルのジャーナルであるJournal of Pharmacology and Experimental TherapeuticsやAmerican Journal of Physiologyに多数の論文が掲載されていて、世界的にレベルが高い成果を挙げている。今後も順調に研究が進行すれば、インパクトの高い成果が期待できる。また、病態解析、新しい治療法、新薬の開発等の応用面でも、手掛かりが得られることが期待できる。しかし、特許に関しては国内出願が1件あるのみである。
4−3.総合的評価
 研究代表者、共同研究者共にレベルの高い研究を行い、成果を確実に出しているので、今後大きなブレークスルーが得られる可能性を期待させる。トランスポーターの研究は国際的に競争の激しい分野で、独自の発展を実現し、成果を挙げていることは高く評価できる。

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