研究課題別中間評価結果

1.研究課題名
局所高電界場における極限物理現象の可視化観測と制御
2.研究代表者名
藤田 博之 (東京大学生産技術研究所 教授)
3.研究概要
 本研究の目的は、真空トンネル電流の流れるギャップに代表される、原子オーダーで局在した高電界場やナノ構造中での原子移動や電子伝導を可視化観測することである。具体的には、高性能マイクロマシンSTMを開発し、それを用いて狭い間隙の電界を原子サイズで制御する。その間隙での原子・分子の振る舞い、あるいはナノサイズの構造中での高電界場下における原子・分子の振る舞いを、位相解析電子顕微鏡法で可視化して観測する。その観測結果を第一原理に基づく理論解析と対比し、極限物理現象を原子レベルで実験的、理論的に解明する。それにより、新ナノ材料、新ナノデバイス等の開発に資する。
4.中間評価結果
4−1.研究の進捗状況と今後の見込み
 局在高電界場下における原子移動、電子伝導の可視化観測を可能とし、局所的極限物理現象を実験的ならびに理論的に解明するため、本研究では、1)マイクロマシンナノプローブの開発、2)位相差検出による超高分解能電子顕微鏡観察法の開発、3)第一原理に基づく理論計算法の開発、の3つを柱として研究を進めて行く。これまでに、マイクロSTMツインナノプローブの製作、高精度位相シフト干渉計測法の開発と超高分解能電子顕微鏡への適用、電流の流れる局所高電界場の理論解析法の確立等の成果を挙げ、最終目標に向かって着実に進行中である。
4−2.研究成果の現状と今後の見込み
 当研究チームのマイクロマシン技術によって、マイクロSTMやツインナノプローブなど種々のナノ・デバイスを作製し、また位相解析型電子顕微鏡の完成を見た。その傍ら、レーザ干渉計測装置を発明した。理論計算グループでは、物体間に定電流が流れている場合の電子状態の自己無撞着な計算法、及び複数物体間に電流が無い場合の密度汎関数的な計算法を開発し、実験結果を良く説明する理論、更には実験結果を予測する理論の確立に向かっている。マイクロマシン関係の出願が既に9件を数える。開発したレーザ干渉計測装置は光通信工学、更には生物学に有用な道具として利用されることが期待される。これまでに作製した種々のナノデバイスの他に、電界放出型装置用のマイクロ冷電子エミッターなど、ナノ技術上の新規な試作・開発が続き、有用な特許の出願が行われよう。
4−3.総合的評価
 21世紀の主幹技術としてナノテクノロジーを大々的に推進することが国策に定められている中に有って、マイクロマシン技術に秀でた当研究チームは極めて重要な存在である。本研究を通じて、その学問的、技術的レベルの一層の向上を目指して来ており、これを支援して行くことが大切である。

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