研究課題別中間評価結果

1.研究課題名
磁気力を利用した仮想的可変重力場におけるタンパク質の結晶成長
2.研究代表者名
安宅 光雄 (産業技術総合研究所人間系特別研究体 研究グループ長)
3.研究概要
 構造生物学にはタンパク質単結晶の作製が不可欠である。磁気力を利用し見掛け上重力が減少した環境を作り出し、その中で良質のタンパク質単結晶育成を試みることにした。そのため均一磁気力発生超伝導マグネットを世界に先駆けて設計・試作し、均一磁気力中での結晶育成の実験を行なうと共に、磁気力による見掛け上の重力の減少がタンパク質単結晶の成長に及ぼす影響、並びに磁場が及ぼす影響について明らかにし、構造生物学の発展に資する。
4.中間評価結果
4−1.研究の進捗状況と今後の見込み
 プロトタイプの均一磁気力発生超伝導マグネットの設計・試作が順調に進んで稼働に成功し、タンパク質結晶育成の実験を行なう体勢が整ってきた。プロトタイプに続くマグネットの開発・作製を進め、結晶育成の実験を本格的に行なって行く。その一方では、重力場や均一磁気力場中でタンパク質溶液から結晶が成長する過程についてのシミュレーション計算法の開発を行なっている。この方も順調に進んでおり、結晶成長の機構解明を目指す。
4−2.研究成果の現状と今後の見込み
 プロトタイプの均一磁気力発生超伝導マグネットにより、重力が見かけ上3割少ない0.7 Gの重力場を発生させた。そのマグネットの中で、人体内の血糖値調整に関与する酵素タンパク(フルクトース・ビスリン酸化酵素)の溶液から結晶成長をさせ、良質単結晶を得た。磁気力1370 T2/mでほぼ無重力になるが、現在製作中のマグネットでは17.1 Tの下に880 T2/m、すなわち0.37 Gとすることができる。これらのマグネットを用い、種々の重要酵素等の良質結晶育成の実験を行なう。タンパク質結晶成長過程のシミュレーション計算手法の開発がかなり進んだ。重力場及び均一磁気力場中における結晶成長の実験結果と計算結果を比較しながら成長機構の解明に努め、タンパク質の結晶育成技術の確立に資する。
4−3.総合的評価
 磁場中及び均一磁気力場中でのタンパク結晶育成方法の開発に関しては、本河研究チームとともに世界に先駆けた研究を行なっている。生体分子構造化学の発展に貢献する研究として、今後の成果を期待する。

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