研究課題別中間評価結果

1.研究課題名
低環境負荷エネルギー用複合機能構造材料の開発
2.研究代表者名
香山 晃 (京都大学エネルギー理工学研究所 教授)
3.研究概要
 エネルギー変換効率の向上とコスト低減・高信頼化を狙い、SiC/SiC複合材料の苛酷環境特性や信頼性の向上に代表される高性能化、及び成形・接合・気密被覆等の技術開発により、高効率エネルギー変換システム実現の技術基盤形成を行なう。
4.中間評価結果
4−1.研究の進捗状況と今後の見込み
 高品位SiC/SiC複合材料の製造プロセスとして、気相浸透反応法(CVI法)において組成及び組織制御により繊維/バルク界面構造の最適化を行い、従来材料の約1.5倍の曲げ強度を得ている。反応焼結法(RS法)では、プロセス高度化により熱応力係数を高め、熱衝撃特性にも優れるSiC材料の開発に成功した。PIP法では、熱分解生成SiCの高収率化、化学量論組成化に向けたポリマーの合成と熱分解プロセスの最適化により、高い結晶性を有する複合材料を得ることが出来た。高真空下での電子ビームPVD法を用いて、SiCへのW被覆による表面改質と耐環境特性の向上に成功した。高収率でSiC化を得るため、ポリビニールシラン(PVS)の重合促進として低分子量成分の揮散やシラン系ガスの発生を抑制する還流熱処理を開発し、90%超のセラミック収率を実現した。これまでに得られた基礎的知見に基づき、材料プロセスの高度化をさらに推進する一方で、材料技術を基盤とする高機能化(気密性、超耐環境性等)、構造化(成形、接合等)及び要素部品の試作と基本性能評価を実施する。
4−2.研究成果の現状と今後の見込み
 SiCの特性として、強度、耐環境性等かなり良いものが出来ており、材料開発として予期以上の成果を上げている。製造プロセスでも、CVI法やRS法の改良を通して材料特性の高度化に成功した。表面改質や接合技術の開発ではSiCへのW被覆製造に成功したが、プロセス条件を明らかにして最適条件探索を可能にし、性能の向上を得ている。また、材料特性試験や特性評価の方法論を、体系的、標準的なシステムとして整備した。今後はさらに、材料製造プロセスの高度化や材料の高機能化を推進する一方で、要素技術を統合したエネルギー変換機器要素システムを目標とする要素部品の試作によって、システムとしての基本性能評価と性能実証を行なうことにより、実用への基礎データ形成が期待される。
4−3.総合的評価
 基礎的研究が着実に進められており、耐環境性機能のSiC/SiC複合材料の試作に成功していることは評価できる。工業的使用に耐える複合材料や、環境問題への適用という意味においては、未だ距離があるとしなければならないが、その方向に向けて今後の研究計画が検討されており、成果を期待したい。材料研究として包括的で、世界の類似研究と対比しても第一線に位置している。

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