研究課題別中間評価結果

1.研究課題名
都市交通の環境負荷制御システムの開発
2.研究代表者名
岩田 規久男 (学習院大学経済学部 教授)
3.研究概要
 都市交通による環境負荷を最適水準まで低減するための税(自動車関連税、炭素税等の環境税)、ロードプライシング、土地利用等の諸施策について具体的提言を行なう。都市交通を考慮した一般均衡モデル、車種選択行動モデル、首都高サービス需要関数、首都圏土地利用と自動車交通一体化モデル等を構築、検証すると同時に、高性能・高機能の電気自動車を開発する。
4.中間評価結果
4−1.研究の進捗状況と今後の見込み
 産業、運輸、家計、政府で構成される応用一般均衡モデルを構築し、自動車関連税の増徴や低公害車補助金が排気ガスなどの環境問題に影響する効果を数値的に評価している。また、自動車関連税制の変更や環境税の導入が新車購入時の車種選択に及ぼす影響や、炭素税の導入が産業構造の変化を通して貨物輸送や旅客輸送に及ぼす影響を通じて、排気ガス削減に及ぼす効果を分析している。首都圏において、ミクロ的な視点で自動車混雑が及ぼす社会的費用、ロードプライシング等の交通需要マネジメントによる交通量平準化、容積率緩和や土地利用規制の変更等による土地利用変化と交通への影響等を分析、評価している。電気自動車にして初めて可能な運転性能と居住性を備えた新しい概念の電気自動車を実現し、高い性能が得られることを実証した。今後は、応用一般均衡モデルを始めとするモデルのデータを充実させると同時に、モデルの適合性を高め、環境負荷を目標水準に低減する為の具体的な諸施策の内容を検討して、具体的な提言に結びつける。電気自動車はテストを重ねて原理の検証を確実にすると同時に、一般道路走行の条件整備等を行なう。
4−2.研究成果の現状と今後の見込み
 応用一般均衡モデルを始めとして、環境負荷低減の諸施策評価・分析の土台と数値例が得られている。首都圏に限られるが、環境関連の交通諸施策の影響をミクロな視点で検討するためのシミュレーションのベースになる端緒としてのツールは出来つつある。しかし、交通と土地利用の関連、低公害車の評価等については、明確な見通しは得られていない。電気自動車はプロトタイプが出来ており、ジュネーブ・モーターショウに出品して世界的に注目されたばかりでなく、国内各誌、TV等のメディアでも大きく取り上げられた。実用に到るまでには当然多くの課題を解決する必要があるが、目標とした電気自動車の原理的実現に向けて、着実なテストデータの積み重ねにより実際の性能の検証が期待される。
4−3.総合的評価
 現在のところは、環境負荷低減の諸施策評価のためのデータやツール類が出来つつある途上にあり、具体的な提言をアナウンス出来るところまでには到っていない。また、日本全体を見るマクロ・首都圏を見るミクロのアプローチのシステム的統合には、さらに理論面、実際面を含む検討を要する。単純化や焦点の絞込みが場合により必要になるが、研究目標に向けて方針、方法及び体制を全般的に見直すことが求められる。

戻る