研究課題別中間評価結果

1.研究課題名
Gタンパク質共役受容体の高次構造
2.研究代表者名
芳賀 達也 (東京大学大学院医学系研究科 教授)
3.研究概要
 Gタンパク質共役受容体の高次構造決定と新しいリガンド検索系の構築を目標とする。昆虫細胞発現系を用いてムスカリン受容体を大量に発現・精製する系を確立した。結晶様構造物が再現的に生成する条件を見い出したが、回折点の観察には至っていない。筋小胞体カルシウムATPaseの構造を2.6Å分解能で決定した。ムスカリン受容体に結合したメタコリンの構造をゴーシュ型と決定した。単一嗅細胞に発現する特定の匂い受容体を同定した。ヒトゲノム情報から新規Gタンパク質共役受容体を検索した。受容体・Gα融合タンパク質をリガンド検索系として使用し、内在性リガンドの検索を始めた。高親和性コリントランスポーターをクローニングした。
4.中間評価結果
4−1.研究の進捗状況と今後の見込み
 高親和性コリントランスポーターのクローニングは極めて大きい成果である。コリントランスポーターの構造が解明されたことにより、それの活性化物質を検索できるようになった。受容体・Gα融合タンパク質をリガンド検索系とする、内在性リガンド検索系は成果が期待される。ムスカリン受容体の結晶化は極めて困難な研究であるが、着実に進んでいる。三次元結晶ができかけ、二次元結晶の回折点がみられるなど、あと一歩のようにも見える。
 ムスカリン受容体結合時の(s)-メタコリンがゴーシュ型であることが明らかにされた。アセチルコリンについても答がでることを期待する。
 バキュロウイルスを用いたGタンパク質共役型受容体(GPCR)の多量発現系を用い、受容体の結晶化を目指すなど、技術的にも高いレベルにある。研究グループの技術的な水準が高いので、多くの副産物的な成果があげられている。結晶解析グループとの共同研究も成果が挙がっている。
 新規GPCRの検索や高親和性コリントランスポーターのクローニングなど、将来性のある成果を得ている。優れた研究グループによって、ゆっくりではあるが質の高い研究が着実に進んでいる。
4−2.研究成果の現状と今後の見込み
 高親和性コリントランスポーターのクローニング、筋小胞体カルシウムATPaseの構造決定、ムスカリン受容体に結合したリガンドをゴーシュ型と決定したことなどが成果として挙げられる。ノシセプチン受容体のGα融合タンパクで脳内ノシセプチンを検出できたので、新規オーファン受容体を使ってリガンドを見つける研究が始まった。
 高親和性コリントランスポーターのクローニングは国際的に高く評価されるbreakthroughである。嗅細胞でのGPCRの発見、ヒトGPCR遺伝子の検索など重要な成果が見られる。ムスカリン受容体の立体構造は多くの研究者が期待している重要な問題である。一方、ヒトゲノム配列を利用するオーファン受容体によるリガンドの検索も新しい方法であり、成果が期待される。
 コリントランスポーターの研究はアルツハイマーと関係があるかも知れない。リガンド検索系は製薬産業に社会的インパクトを与えるだろう。4件の特許出願を行っており、創薬と結びついている。新しい薬の開発に結びつけば実用化への期待がふくらむ。
4−3.総合的評価
 高親和性コリントランスポーターのクローニングの研究は高く評価される。研究の焦点をG蛋白質共役受容体に絞り、手堅く成果を挙げている。確実に質の高い実験結果が出されているので、長い目で研究の進展を期待したい。

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