研究課題別中間評価結果

 
1.研究課題名
大分子糖蛋白質の極微細構造制御
2.研究代表者
中原 義昭(東海大学工学部 教授)
3.研究概要
 蛋白質は大部分が糖鎖をもつ糖蛋白質として存在するが大分子であるために、その分子レベルでの糖およびペプチド部分の機能解明は困難である。本研究の目的は構造的に純粋な糖蛋白質およびプロテオグリカン標品を化学合成的な手段によって得る方法論を確立し、糖鎖工学の基盤を確立することにある。
4.中間評価結果
4−1.研究の進捗状況と今後の見込み
 このチームの研究は、従来の糖鎖合成やペプチド合成の方法論ではうまく合成しにくい糖蛋白質(それも大分子の)を全合成する方法論を編み出そうとするもので、世界的にもチャレンジしている研究者は少ない。これまで共同研究者らの応援も得て、種々の糖ペプチドブロックを合成できるところまで来たことは評価できる。今後は「糖鎖の役割」を示すだけの大分子糖ペプチドを、ターゲットを決めてグループの総力を挙げて合成するような体制で研究をしてもらいたい。
4−2.研究成果の現状と今後の見込み
 今までに(1)糖鎖ユニット合成の効率化、(2)プロテオグリカン分子の設計と合成、(3)計算化学的手法による合成デザイン、及び(4)非天然型糖鎖および改変糖ペプチドの合成、について研究を実施し、これまで5〜6糖レベルの糖鎖合成や、シアル酸残基の導入等が進展した。15kDaのヒトインターロイキン2等生物活性糖蛋白質の全合成にも挑戦中である。
 糖鎖合成研究は多くのノウハウが必要でキレ味の良い成果をすぐに出す状況にはないものの、合成時に必須の保護基を脱保護することのない鎖延長法や新規固相合成法に関する新規提案方法は国際的にみてもレベルは高い。ただし、これらの方法が目的物質を定めた時に有用かどうか現時点では見極められない。糖ペプチドの機能解明のためには、早めにターゲットを絞って全合成していくことが望まれる。
4−3.総合的評価
 この分野では、画期的ブレークスルーが短期間のうちに達成されるとは思えないので、長い目で見守る必要がある。ただし、CRESTの期間を考えると今まで得られた合成法の確立という意味で、今後の2年間は有用生理活性物質に焦点を絞って全合成し、その過程で生ずる問題の解決に注力する方法を推める。

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